無題
「やっと会えたわね」
カチュアは目の前に居るピンク色の丸い物体・・・カービィに向かって叫んだ。
「正直、アンタは邪魔だから消えて貰いたかったのよ」
カチュアはそう言い放つが、カービィはカチュアの存在を無視するかの如く、そこら辺を見回しているだけだった。
「・・・私を舐めてるって訳ね。いいわ、後悔させてあげる。さぁ、行きなさい!!」
カチュアはゾンビ達に命令を下す。ゾンビ達はゆら〜り、ゆらりとカービィに向かって行く。
だが、ゾンビ達の歩みは限りなく遅い。数は多くとも、こうスピードが遅ければ攻撃する事も容易であり、また、逃げる事も簡単であろう。
が、カービィはそのどちらもする事はなかった。
カービィは大きく口を開いた。次の瞬間、ゾンビ達が次々にカービィの口の中に吸い込まれていく。
(掛かったわね・・・)
カチュアは口元に笑みを浮かべた。
ゾンビ達はその大半が吸い込まれ、残り十数体にまで減ってしまっている。
それでも、カチュアは余裕を崩す事はなかった。
「これでも食らいなさい、化け物!!」
カチュアは、既に死亡している参加者から奪い取った爆弾に点火し、カービィに向かって投げつけた。
しかし、カービィはすぐさま、それを吸い込んだ。
「早過ぎた!?ならもう一発」
カチュアはバックの中から爆弾を取り出そうとしたが、その前に怒りに満ちたカービィがカチュアに襲い掛かった。
「しまっ・・・」
カービィがカチュアをも吸い込もうとしたその時である。
「フレイムヒットッ!!」
その掛け声と共に、カービィの身体は凄まじい炎に包まれた。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
その叫び声は島中に響き渡ったかもしれない。
カービィはもがき苦しみながらも、その場から一目散に逃げ出していった。
「大丈夫だったか?」
カチュアを助けたその男は、カチュアに手を差し伸べる。
「ア、アンタは?」
「俺はビュウ。とある女を殺す為にさ迷い歩いている所だ」
「そ、そう・・・私はカチュア。一応、礼は言っておくわ」
カチュアはバツが悪そうに言った。
「しかし、今のは星のカービィだろ?あの無敵とも言われた奴が何故あんな簡単に・・・」
「さ、さぁ・・・何でかしらね?」
ビュウの問いに、カチュアは適当にあしらった。
「まぁいいさ。ところでアンタ、俺と一緒に行かないか・・・と言いたい所だが、どうやらそれは無理っぽいな」
ビュウは、カチュアの後ろで蠢いているゾンビ達を見てそう言った。
「かと言って、今更アンタを殺すのも気が引けるからな。今回は見逃し解いてやるよ・・・」
「わ、私を馬鹿にするつもり!?」
ビュウの言葉に、カチュアは激怒した。
「俺は戦ってもいいんだぜ?もっとも、今のアンタが俺に勝てるとは思えないけどな」
ビュウは余裕の表情で言った。彼の言葉通り、ゾンビの大半を失ったカチュアが彼と戦うのは無謀というものだ。
「くっ・・・」
「俺が殺したいのはヨヨという女、ただ一人だ。それ以外の奴は正直どうでもいい。だが・・・もし邪魔するというのであれば、誰であろうと容赦はしない」
ビュウはそのまま去って行った。
残されたカチュアはただ地団駄を踏むばかりである。
「くそっ、私を馬鹿にしてぇ〜!!!」
カービィのコピー能力を利用して、ゾンビの火に弱いという特製をコピーさせ、そのまま倒そうとしたカチュアではあったが、予想以上のカービィの猛攻に会い、さらに他人に助けられるという失態を演じてしまったのでは下もクソもない。
「・・・まぁ、いいわ。理想を叶える為には失敗は付き物だもの」
今回の戦いで失ったゾンビはまたネクロマンシーで補充すればいい。
カチュアは残ったゾンビ達を引き連れて、再び森の中へと消えていった。
だが、カチュアは気付いていなかった。
カービィが火に弱いという弱点だけでなく、もう一つ、厄介な能力を身につけていたという事に。
【「タクティクスオウガ」 カチュア 生存】
【『バハムートラグーン』 ビュウ 生存】
【星のカービィ カービィ 生存(能力:身体を完全に破壊されない限り不死 弱点:炎 が追加)】
前話
目次
次話