無題






デニムはさ迷い歩いていた。
次々に崖から飛び降りていくレミングス達の姿が瞼に焼き付いて離れない・・・
「僕にはどうする事も出来なかったんだ・・・」
そう言い聞かせても、デニムは自分を納得させる事は出来なかった。
その時、前方から何者かが突然襲いかかかってきた。
「なっ!?」
突然の攻撃にだったが、デニムは『ヴォルテール』で何とか斬り払う事に成功した。
「ちっ・・・運が良かったな、小僧」
その男は槍を血塗れだった。手にした槍で、次々に人を殺めたのだろう。
「お前も女を捜しているのか?」
「女?・・・姉さんの事か!?」
「・・・手前も俺を差し置いて幸せな人生を送っていたようだな」
いうなり男は人とは思えない程の跳躍をした。
そしてすぐさまデニム目掛けて落下してきた。
「早いッ!?」
デニムは間一髪で攻撃を避け、すぐさま『ヴォルテール』で男の槍を斬り付けた。
ピシッ。
「ちっ・・・トライデントにヒビを入れやがったな」
男は怒り狂ったかの如く、デニムに対して槍を突いた。
その猛攻に、遂にデニムはバランスを崩し、その場に倒れ込んでしまった。
男はデニムに今にも槍を振り下ろそうとしている。
「これで終わりだな」
男の表情は狂気に満ちている。
「何故だ・・・?何故貴方はそこまで戦えるんだ・・・?」
「フンッ、俺は手前みたいに、女とイチャイチャと幸せにしてる奴がムカツくんだよ!!」
「そんな・・・そんな理由だけで・・・」
「さあ・・・死になッ!」
男は槍をデニムに突き立てようとした。
その時だった。男の顔を一本の矢がかすめたのは。
「なっ・・・誰だ!?」
男は矢が飛んできた方向を振り向く。
そこには弓を構えた一人の女性が立っていた。
「弟に手を出す奴は許さないわよ・・・」
「ね、姉さん!!」
その女性はデニムの姉・・・カチュアだった。
そして彼女の後ろには、大量のアンデット達が蠢きあっていた。
「チッ・・・邪魔が入ったか。小僧、運が良かったな」
男はやる気を無くしたかの如く、その場から去って行った。
「俺の名はカイン。今度会った時は必ず殺してやる」
男はそう言い残したが、デニムは目の前に居る自分の姉の事で頭が一杯だった。
「大丈夫だった?デニム」
「ね、姉さん・・・どうしたんだよ、その後ろの・・・」
デニムはカチュアの後ろに居る、大勢のアンデット達を見つめた。
「ああ、こいつ等はね、私達の楽園を作ってくれる下僕みたいなものよ」
「ら、楽園?」
「そう・・・私とデニム、2人きりの世界」
「ね、姉さん・・・?」
「私の理想を実現させるには、ヴァレリアは広過ぎたわ。でも、ここなら2人きりで暮らすのにもちょうどいい大きさだし、何よりここに居る人間を全てアンデット化すれば私達の邪魔をする奴は誰一人居なくなる・・・素敵だと思わない?」
「な・・・何を言ってるんだ姉さん!?」
「デニム・・・貴方、言ってくれたわよね?私を愛してるって。私も貴方を愛しているわ。だから、二人で力を合わせて他の奴等を皆殺しにしましょう」
「なっ・・・なっ・・・」
姉の言葉が狂気に満ちている事に、デニムは恐怖を感じていた。
以前から、我侭な言動はあった。自分に対して、弟以上の感情を抱いているかもしれないとも感じていた。
しかし、今目の前に居る姉さん・・・いや、女は自分が知っているカチュア・パウエルではない。
「ごめんね、我侭ばかり言って。でも、約束して。私から離れないって。ね?」
「う・・・うわあああああああああああああああああああああああっ!!」
デニムはカチュアとは逆の方向に走り出した。
今は少しでもカチュアから逃げ出したかった。
「・・・デニム、手に入らないのならいっそ・・・・・・」
カチュアは冷たい笑みを浮かべた。

【「タクティクスオウガ」 デニム 逃亡】
【「ファイナルファンタジー4」カイン 逃亡】
【「タクティクスオウガ」 カチュア 生存】



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