無題






21世紀…

ソヴィエトロシアは崩壊し、東西冷戦は終結した。
しかし世界に国際紛争の火種は無くなる事無く、
むしろ冷戦という解りやすい対立構造が解消したことでその火種は拡散し、
紛争は世界各地に広がった。

氾濫するグローバリズム、
怒涛の如き情報化と、電子世界の拡大、
文明の衝突、過激化するテロリズム…

世界は、あらゆる価値観が相克するカオスの坩堝となっていた。
それは、嵐のようなすさまじい渇きの時代であった。

しかし…


だが、しかし…









ヤ ク ザ は な く な ら な か っ た !



◆◆◆

地図上で「D-3」と呼称される人気の無い市街地を、一人の少女が駆け抜ける。
栗色の長髪に、特徴的な癖毛を持った可愛らしい少女だ。
年齢は恐らく小学生の高学年ぐらいか、学校の制服らしき格好をしている。

やや彼女の体格から考えると、大きいと思われるデイパックをひしと背負って、
顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら、夜道を決死の形相で疾駆していた。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁっ・・・・!」
(助けて・・・助けて・・・助けて・・・)

縺れそうになる足を必死に動かして走りながら、彼女は背後を顧みる。
そこには・・・

「キココ・・・・キコ・・・キコ・・・・キキキ・・・・」
尋常ならざる凶相を浮かべ、少女を追いかける一人の男の姿が見えた。
少しウェーブのかかった長い髪をした馬面の男で、
一応スーツ姿だが、纏う雰囲気は明らかに「筋者」のそれだ。
しかもその手には、

「はぁ・・・はぁ・・・はぁっ・・・・!!」
(ハルカ姉さま・・・カナ・・・・助けて!)

一丁の散弾銃が握られている。

「キキキ・・・・」
奇声を上げ、両眼を血走らせながら自分を追跡してくる男の姿を視界に捉え、
少女は涙目で正面に向き直り一層足を速める。


既に走り始めて結構な時間が経つ。
少女、南千秋の息は上がりきり、もう限界に近かった。
しかし足を止めるわけにはいかない。

気が付けばあの奇妙な場所に連れ去られ、
訳もわからぬまま敬愛する姉を殺されかけ、
さらに気が付けば見知らぬ街に放りだされた千秋は、
ディパックをその胸に抱くようにして震えていた。

彼女は賢く、同年代の少女より遥かに大人びた精神を持つが、
基本的には『普通』の小学生に過ぎない。

その彼女に、このような理不尽な状況に放りこまれて怯えるな、と言う方が酷であろう。

しかし運命の女神は、彼女に気の動転を治める時間すら与えてくれなかった。
この悪趣味なゲームの会場に放り込まれて十分と経たずして、
彼女は、いま彼女を追跡する男に襲撃されたのだ。

最初の襲撃から逃げだせたのだけでも僥倖だろう。
だがそれだけ彼女が走って逃げようとも、
後ろの男は遠ざかるどころかどんどん近付いている。

厳然たる大人と子供の体力の違いばかりは如何とも仕様が無い。

このまま追いかけっこを続ければ、男が千秋に追い付くのも時間の問題だが…
男の方はその手間が惜しいらしい。

十分に近づいた。
そう判断したのか、男は足を止めると散弾銃を構え、

ズ ガ ン ッ !

ああ、何たる鬼畜!
いたいけな少女に向けて散弾銃をぶっぱなしたのだ!

フランキ・スパス12の12ゲージ散弾が、
標的を完全に捉えきるには些か遠い距離だったが、

「あっ!」

発射され、拡散した散弾の一発が千秋の右足の脹脛を掠めた。
かすり傷だが、ただ小学生の少女には銃器で撃たれたという事実は
余りにも刺激的で衝撃的だ。
故に…

「きゃ・・・っ!」
千秋は足を縺れさせ倒れた。
その小さな体に迫るのは、

「キキキ…」

鬼畜、村岡隆!



◆◆◆

男、村岡隆は人生最悪の瞬間にあった。
確かに謀略に嵌め、破滅させたと確信した伊藤カイジの取るに足りないイカサマで、
彼自身が積み上げてきた全財産を失う羽目に陥ったのである。

4億8千万!
確実に勝てる筈だった伊藤カイジとの「17歩」勝負の敗北の代償は余りに大きく、
自宅と土地を含むほとんど全財産を、カイジに毟り取られ、それを泣く泣く見送る他、
今の村岡には手だては無かった。

彼が、この殺し合いの場所に呼び出されたのは、
正に彼が伊藤カイジと、立ち合い人の兵藤和也を茫然と見送った正にその直後であった!

(『切られた』・・・・)
村岡が真っ先に考えた事は、ソレ。
帝愛グループ、彼が所属するあの鬼畜外道の大組織が度々行う悪趣味なギャンブル…
彼はこの殺し合いをその一つだと解釈し、それに自分が参加させられた意味をそう考えた。

『切られた』のだ、帝愛に…
自分は…切り捨てられたのだ!

帝愛グループ総帥の御曹司たる和也に働いた暴言の数々、
伊藤カイジへの無様な敗北…理由は十分。

あの徹底した能力主義者で、無能、敗北者に一切の慈悲を持たない兵藤和尊が、
自分をこの悪趣味なゲームに放り込んだのだ…村岡はそう考えたのだ。



最初のホールで司会をしていた男、利根川行幸雄。
村岡の記憶が正しいなら奴は確か失脚していた筈だが、
如何に返り咲いたのであろうか…
しかし奴が司会をしていた事、あの会長が好きそうな悪趣味極まりないゲームの趣旨、
このゲームの主催者は帝愛に間違いない!
村岡はそう言う判断に達した。

さきほどのホールでの出来事…オンジなる男の存在や、
『死者の蘇生』なる意味不明な戯言も気にはなるが…

(恐らく、あのオンジとか言う男は、
帝愛がいざという時の為に用意したスケープゴートか何かざんす!
訳のわからない口ぶりから察するに、恐らくはカルト教団!)

オウム真理教の事件がまだ記憶に強く残る日本ならば、
この様な常軌を逸した遊戯が万が一当局の目に触れても、
カルト教団ならスケープゴートに十分であろう。
そう考えれば、全て納得できる。

村岡は、『彼の世界の常識』の範囲内で、そうこれまでの出来事を解釈していた。
彼の一見筋が通ったように見える推理は、実はてんで的外れなのだが、
いくらアングラな世界に生きていたとは言え、
あくまで現代科学の作った世界観から出ない世界での知識経験しか持たない彼には、
上記の様な考察が限界であったのだ。



閑話休題

夜の人気の無い市街地の片隅で考えをまとめ終えた村岡は、
取り敢えずデイパックの中身の確認に移った。
そして、その中身を見て、彼は狂喜することになった。

彼が、主催者が帝愛だという結論に至るや否や、
すぐに殺し合いに乗る意志を固めたが、
デイパックから出てきたモノは、
彼が殺し合いを生き抜く上で強力な武器になるもの…

散弾銃。
厳密にはイタリア、フランキ社が開発した12ゲージショットガン、
SPAS12。

(ワシは・・・・ツいてるざんす!)
利根川は言った。

『この殺し合いの優勝者に与えるもの……それは全て、だ。莫大な大金でも、将来を約束された地位でも、名誉でも……
 それ以外のどんな願いであろうと、我々が責任を持って聞き届けようっ……!
 ……もちろん、先にこちらのオンジが言った死者の蘇生だったとしても、不可能では無い……!!』



リスクは大きい。
だが、この殺し合いで優勝すれば、
上記の賞品を得るばかりでなく、
この人間としての能力のあらゆる側面を試されるデスゲームで生き残る事は、
自分の優秀性を帝愛に示せると言う事!
生還後は、帝愛幹部も夢では無い!

(これは・・・最後のチャンスざんす!勝つ!勝ち残って昇り詰めるざんす!)
「キココ・・・・キキキ・・・・」

村岡の口から奇声が漏れる。
村岡は眼を血走らせ、嫌な汗をぐっしょりかいていた。

「名簿を見れば、あの糞ったれのカイジの野郎もいるみたいざんす…
丁度いいお礼参りも済ませてやらねば…」

スパスを構え、獲物を求めて徘徊を始めた村岡が、
千秋を発見したのはこの数分後であった。



◆◆◆


千秋が倒れる。
足の傷自体は、大した物では無い。
所詮小さな散弾が掠めたに過ぎない。

しかし…

「あ・・・あ・・・・あ・・・・」
千秋には眼を見開いて喘ぐ事しか出来ない。
千秋は立ち上がれない。
男は確実に近づいて来ているのに、立ち上がる事は出来ない。
足を挫いた事もあるが、それ以上に腰が抜けてしまった事が大きかった。
平和な日本で暮らす小学生には、撃たれた、という事実はあまりにも劇薬だ。
銃弾は、物理的には千秋の足を掠めただけだったが、
心理的には彼女の心を完全に砕いていたのだ。

「キキキ…」
奇妙な声をあげながら、男が千秋に迫る。

ヤバイ

男の血走った眼を見て、
千秋の本能が彼女にそう囁くが、
彼女の体はぴくりとも動かない。

男がすぐ傍まで来た。



「足ばっか速くて・・・梃子摺らせてくれたざんすね…」
男が千秋の頭部に銃口を向ける。
千秋は声無き叫びを上げる。
声は出ない。本当の恐怖を感じた時、人間の声は抹殺されてしまう。

「死ぬざんす!」
(カナ・・・ハルカ姉さま!)
咄嗟に眼を瞑った。彼女の脳裏に浮かぶのは、二人の大切な姉の姿。

ズ ガ ン ッ !

銃声が響いた。


◆◆◆

自分は死んだ。
千秋はそう考えた。
バカでかい銃声が確かに千秋の耳には聞こえたのだ。
もうすぐ自分は頭を吹っ飛ばされて、死体になってしまうのだろう。

最後に、ハルカ姉さまにもう一度会いたかった。
ついでにカナにも会いたかった。
カスタードレモンチーズシフォンパイが食べたかった。
駅前の角の店のプリンが食べたかった。
ふじおかに抱っこしたかった…



そこまで考えて、
来るべき衝撃が来ない事に気が付いた千秋は、
恐る恐る再び眼を開けた。

男は居た。
ただ、その表情は一変している。
眼は血走っているが、それは顔全面にも表れている驚愕が故だ。

男は見ている。
男自身の右腕を。正確にはその付け根を。
そこには…

「・・・・・・あ?」
男の腕は無かった。
男の腕は、その手に依然スパスを握ったまま、男の後方に吹き飛ばされていた。

「ああああああああああああああああああああああっ!?!?」
男の絶叫と共に忘れたように男の右腕の付け根より血液が滝の様に流れ落ちた。

男は思わず膝をつき、残った左手で傷口を押さえるが、血の濁流は止まらない。

「あああ?ああああ!ああああああああああ!?!?」
男は何が起こったか解らない、と言った表情だった。
それはそうだろう。
撃ったと思ったら、撃たれていたのは自分だっただから。



「 お の れ 〜」

千秋の背後より、その声が聞こえて来たのは突然だった。
ジャリっと、地面を踏みしめる音がする。

「だれにことわって、ワシのシマウチの堅気モンに手ぇ出しとんじゃ〜」

千秋は、振り向こうとした。
が、まだ恐怖が抜けきっていない為か、
動かぬ体を無理やり動かして背後を見たとき、
最初に見えたのは野太い銃身だった。

S&W M29 "44マグナム"。
映画「ダーティーハリー」で一躍有名になった、『世界最強の拳銃』の一つ。
村岡隆の右腕を吹き飛ばしたのは、今尚紫煙を上げるこの怪物拳銃に他ならない。

続いて、腕が、足が、そして全貌が明らかになった。

『男』の姿を見た瞬間、千秋は思わずその言葉を漏らしていた。

「・・・・ヤ・・・クザ?」



『男』は正しく『ヤクザ』そのものであった。
否、唯のヤクザでは無い。
カーキ色のソフト帽子を被り、それにねじり鉢巻きを締め、
さらにサングラスを引っ掛けている。
やはりカーキ色の半袖シャツに、腹巻き、
膝小僧より少し長い短パン、その上草履ばき。

まるで「広島抗争」の時代、
そうでなければ「仁義なき戦い」の世界から抜け出てきたかのような
アナクロな『ヤクザ』がそこにいた。

否、格好ばかりでは無い。
その目、その表情。

現代社会の成熟、複雑化に合わせて、ヤクザもその体制を大きく組織化し、
犯罪組織としての効率完成度はより一層上がった。
その反面、ヤクザ達もサラリーマン化し、牙を失って行った。

しかしこの男に眼、そして表情からあふれ出る、
狂気、凶気を、そして侠気!
それはかつて、ヤクザが本当に『極道』だった時代、
ヤクザが本当に野獣だった時代に持っていた物、
そして現代では失われてしまった物であった。



しかもこの男は、
そんな古き良きヤクザ社会においてすら持て余された
史上最強の義理と人情と凶暴性を持つ『極道兵器』であった!

「落とし前を付けさせてもらうぜ〜!」

男の名は、岩鬼将造…

◆◆◆

内閣秘密情報局・要注意人物ファイル  第××号

名前:岩鬼 将造 イワキ ショウゾウ
生年月日:19××年 ×月×日
出身地:日本国 ××県 ××市
身長:×××cm
体重:××kg
分類:特別A級ヤクザ、通称『極道兵器』

@主な経歴

関西でかつて強大な勢力を誇った岩鬼組組長の一人息子。
成人前よりその凶暴性は凄まじく、少年刑務所への入獄経験も二度あり。
その際も、幾度も教官との乱闘や、脱走未遂など幾つも問題を起こし、
時には教官の耳を噛み千切るなど常軌を逸した行動も見せた。
また、この頃よりリーダーとしての素質も少なからずあり、
暴力で反抗者を鎮圧し、牢名主の様な位置にあった事もある。



出獄後も、「狂犬の将造」の異名を取る凶暴振りを見せるが、
岩鬼組に敵対する関東系の某組を突如襲撃、構成員を虐殺するという暴挙に出る。
これが切っ掛けで岩鬼組組長に勘当され、将造は海外に出奔、
傭兵として数年間、世界各地の紛争地域の最前線で傭兵として活躍する。

傭兵活動期に、将造の凶暴性、残虐性はより一層その度を強め、
捕虜の拷問、虐殺を嬉々として行うなど、異常性はより極まった。

己の生命の危険を顧みない無謀な突撃を度々行うも、
その度に生還し、絶大な戦果を上げるため、
傭兵界隈では「マッドドッグ」の名で恐れられた。


岩鬼組組長暗殺、その後の岩鬼組壊滅を契機に、
南米ロスタリカにおけるジョセフ大佐率いる反政府ゲリラ討伐作戦を最後に
傭兵稼業を廃業、日本に帰還する。



日本に帰還後は、岩鬼組残党と合流し、
アメリカの「デス・ドロップ・マフィア」の後援を受け、
岩鬼組壊滅を始めとする日本制圧行動に乗り出した倉脇組組長、
倉脇重介が本拠とする要塞高層ビルを襲撃、
完全武装の要塞ビルを僅かな兵力で制圧、倒壊させ、倉脇組を事実上の壊滅に追い込む。

この際、左手右足を含む全身に重傷を負うも、
同局局員、赤尾虎彦に救出され、改造手術を受け、「極道兵器」として生まれ変わる。

左手の着脱可能義手の内部に鉤爪付き重機関銃、
右足に六連発ロケットランチャーを内蔵し、
後に右目を失うも、ロックオン機能付き光学センサー義眼に再改造された。

左手の重機関銃は工具などを使わずに着脱可能で、
戦況に応じて大型ガトリング砲、火炎放射器、
グレネードランチャーなどを付け替える事が出来る。

改造手術後、赤尾虎彦の後援を受け、
核武装テロリスト海座隆とその組織をほぼ単身で壊滅制圧したのを手始めに、
将造はこの内臓装備を十二分に駆使し、
デス・ドロップ・マフィアの日本侵略に対抗する戦いの最前線で活躍する。



現在、壊滅した岩鬼組を山鬼なよ子率いる山鬼組との合併を経て再興、
彼自身が盟主を務める全く新しい暴力団同盟組織、極道連合を組織し、
デス・ドロップ・マフィアやその後援を受けた組織、
それ以外の関東系を中心とする敵対する組、
中国系など中心とする外国人組織などを相手に抗争を開始、
敵対組織を根こそぎ壊滅させる荒っぽい手口で勢力を順調に拡大し、現在に至る。

@特記事項

体内に武器を内蔵した「極道兵器」であり、常軌を逸した凶暴性を持つ超危険人物である。

しかし、殺人嗜好を持つにも関わらず、無作為、無意味な殺人行動は取らず、
その残虐性の矛先はあくまで彼に敵対する人間、勢力にのみ向けられる。

それは、著しく常人は隔絶した価値観では有るものの、
彼独自の義侠心に徹底的に基づいて行動しているからであり、
快楽殺人者や、破滅型テロリストとは一線を画する。
(二度の入獄も、叔父である山林を庇った為と思われる)

しかし、一度でも敵対した相手には一切容赦は無く、
また、常人の常識、倫理観では躊躇するような行動を平然と行う。

また、頭に血が昇りやすく、いったん暴走状態になれば余人には手が付けられない。

現在は、我々日本政府と協力関係にあるが、彼の扱いには細心の注意が要求される。



◆◆◆

「あひ〜!あああああ、あひ〜!」
村岡は傷口を押さえながら絶叫、混乱していた。
そうでむべなるかな。絶対的強者の位置から、
突如反転、重傷者になってしまったのだから。

今の村岡には、近づく岩鬼の姿すら見えていない。

岩鬼は無言で、村岡の醜態を睨みつけながら接近する。
ほんの一歩前まで接近した時、ようやく村岡は岩鬼を仰ぎ見ようとしたが、
それは叶わない。
顔面に岩鬼の蹴りが突き刺さったからだ。

「このっ・・・ ボ ケ が 〜 !」
前歯と、血と、唾が宙を舞う。
村岡はもんどりうって地に転がる。

「極道が腕の一本や二本で…何 が た が た 騒 い ど る ん じ ゃ 〜 !」
厳密に言うと村岡隆は極道では無い。
それっぽい格好をしているがヤクザで無い。
が、村岡にそれを訂正する事は出来ない。
男が続けて蹴りをぶち込んできたからだ。



村岡の体がゴロゴロと地を転がる。
「 ふ ざ け る な ぁ 〜 」
ドゴッォ!
「 そ ん な 肝 で 人 が 殺 せ る か ぁ 〜」
ボスッゥ! 
「 ど の 面 下 げ て 極 道 気 取 っ と る ん じ ゃ 〜 」
ズワオォッ!
(違う・・・極道違う・・・・)
蹴り転がされながら村岡は必死にそう弁明しようとするが、それすら出来ない。
と、言うかこの男は基本他人の話を聞かない。

「もう一回あの世から・・・」
岩鬼が44マグナムを村岡の頭部に向けた。
「ひっ・・・やめ・・・・」
「 出 直 し て こ い や 〜!」
命乞いなんて絶対聞かない。
村岡の頭はあえなくミンチになった。
結局、弾倉が空になるまで将造は撃ったので、
全身がミンチになる事になったのであった。



◆◆◆

「ボケが…」
ミンチ肉になった村岡隆の死体を最後に一瞥すると、
岩鬼将造は天に眼を向けた。

「ボケどもが…」
思い出すのはあのいけ好かない司会の二人。
名簿には沢山の日本人の名前が載っていた。

「ワシのシマウチの堅気モンに手ぇ出しやがって…許さねぇ…」
『極道兵器』岩鬼将造は日本を預かる首領(ドン)である。
日本国(シマウチ)の一般国民(堅気モン)を守るのは、
任侠の、極道の、首領(ドン)の務めだ。

「待っとれや…」
「ワシは史上最強の…」
「 極 道 兵 器 じ ゃ ぁ 〜 ! 」

拾い上げたスパスを天に向けて乱射する。
それは宣戦布告の号砲だった。

「ほうじゃ…小娘ぇ…元気かぁ!?」
ようやく助けた堅気の少女の事を思い出した将造は背後を振り返ったが…

「・・・・・あ?」
そこには千秋の姿は影も形も無かった。

そりゃ逃げるよね…


【村岡隆@カイジシリーズ 死亡】

【一日目深夜/D-3 】

【岩鬼将造@極道兵器】
[装備] S&W M29 "44マグナム"、フランキ・スパス12
   内臓機関銃(残弾100%)、脚部ロケット砲(6/6)
[支給品]支給品一式
[状態]健康
[思考・行動]:日本の首領として主催をぶっ殺す
1:主催者はぶっ殺す
2:殺し合いに乗った奴は殺す
3:日本人の堅気は保護する
4:筋モノで協力出来そうな奴とは共闘してもいいかも
5:外国人?んなもん知るかぁ!

【南千秋@みなみけ】
[装備]なし
[支給品]支給品一式、未確認支給品(0〜3)
[状態]足に擦り傷
[思考・行動]
1:将造から逃げる
2:ハルカ姉さま、カナと合流したい
3:死にたくない



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