無題
3
「じゃあ、これからルールを説明するぞー」
タケシの事なんて初めから無かったように、事務的に無機質な説明を始めた。
レッドの位置からはタケシの脚がぎりぎり見えていた。
恐らくワタルの位置からは胴体、そして桐山和助(男 四番)からはそのナイフが刺さったタケシの表情が伺える筈だ。
ルール説明、と言っても国民なら大体は知っていた。それは全て教科書に書いてあったからだ。
武器とポケモンが支給され、それで殺し合いをする。
最後の一人になるまで。
――それだけである。
反則と言えばプログラム会場から出ようとすると、政府の船に射殺される程度だ。
国民――レッド達はそう認識していた。
「あー、そうだ。首輪の事を説明します」
首輪? ――そう、レッドは今気付いたのだが、首輪は確かに――
冷たいそれが、確かに、かつん、とレッドの指に触れた。
「あー、いじっちゃダメダメ! それに無理に外そうとすると爆発するぞ!」
――爆発だと?
いや、政府がやる以上だ、十分ありうる。
そこで、レッド達十八人は首輪に手をかけるのをやめた。
十八人は。
「いやっ! なにこれ、外してよ!」
藤崎真理(女 九番)辺りだろうか?
そこからそう言う叫びが聞こえてきた。
「外してよッ! 誰か!」
それはその通り、真理が自らの首輪を掻きむしっていた。
その顔は蒼白を通り越して灰色になっていたが。
「だからさ、外れないってば! 無駄無駄無駄!」
恐らく、これがある意味、真理の命運を分けたのだろう。
ここで止めていれば首輪が正常に作動する事は無かったのかもしれない。
「いやよッ! 外してよ! 外」
その時、まさにその時、真理の首から赤い噴出が飛んだ。
爆発、というより斬られた感じの噴出だったが。
それは間由佳(女 八番)とマチス・ゲーブルズ(男 九番)、それからポケモンのような姿だったが――
恐らく中島真樹(男 八番)であろうそれに降り懸かった。
それでもそれは真理の首筋の重要な血管などを確かに刔ぐったのだろう。
やっぱり、爆発は前からだったのでタケシと同じく後ろの緑川美津子(女 十番)の机にぶつかってから倒れた。
まだ、首からは血が噴水のように流れていた。
「このように、無理やり外そうとしたり、最後に人が死んでから二十四時間以内に人が死なないと爆発します」
真理の新鮮な血の臭いが漂い始めた。
少し吐き気がしたが、レッドは抑えようと努力する。
「えーと、じゃあ早速ゲームを始めたいと思いまーす」
大木戸は真理の死体に構わず、その明朗な声を教室に響かせた。
【残り 18人】
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