知っているつもり
昨日、ビルが爆破される事件が某市で立て続けに発生した。
これが巷を賑わせた、世に言うところの連続ビル爆破事件である。
事件のあらましはこうだ。
某月某日、夏もまっさりの熱帯夜。
草木も眠る午前3時に町はずれにある小ビルが突如爆発する事件が起きた。
駆け付けた警察や消防も初めはガス漏れが爆発の原因だろうという見解だったが。
調査していくうちに爆発の起点と見られる位置や規模などガス爆発にしては不審な点が多く見つかり、結局鑑識の尽力もむなしくその原因が判明することはなかった。
そして、その三日後、第二の事件が起きる。
犯行時刻は日付も変わろうという0時近く。
爆破されたビルは前回より都心に近い位置にある小ビルであった。
この時点で、前回の爆破事件との関連性は見いだせず。
精々ゴシップ紙が騒ぎ立てる程度しかなかったため、警察当局内ではこの事件は連続事件としては扱われてはいなかった。
決定的なのは三件目。
時間はまだ街も眠りきらぬ午後9時に突如ビジネス街の一角にあるビルが爆発した。
被害にあったビルの規模も過去二件に比べると大きく。
これまでは犯行時間が深い時間帯であったため、被害はビルのみに止まり奇跡的に死傷者は出ていなかったが、ついに三件目にして初の死傷者を出す参事となった。
被害者は残業のためビル内にいた会社員一名にビル警備員二名。
警備員のうち一名は奇跡的に一命を取り留めており、彼の証言からこの一見は事故ではなく事件として扱われるようになる。
そして四件目。
犯行時刻は街も賑わう午後6時。
被害にあったのは都心に程近い、ビジネスビル。
ビルの中にいた人間はおろか、降り注ぐガラスの破片が通行人にも降り注ぎ、被害の規模も被害者の数も過去最悪となった。
徐々にエスカレートしてゆく犯行。
だが、警察はこの時点出犯人の特徴はおろか、犯行方法すらもつかめていなかった。
それどころか、警察の調査の結果に判明したのはどう考えても犯人自体も巻き込まれたとしか思えない状況での爆破であるということ。
そして、およそ物理的に侵入不可能な場所からの爆発が起こっていたという事実である。
その大胆な犯行手口や被害の大きさから、連日ワイドショーや新聞の一面を独占することとなった謎が謎を呼ぶこの事件。
犯人につながる手掛かりは乏しく迷宮入りも囁かれ、巷では犯人は宇宙人であるだの超能力者であるだのという噂がまことしやかに流れる始末である。
そして、五件目。
ターゲットは都内にある喫茶店やファーストフードなどの店舗が立ち並ぶレジャービル。
犯人がこのビルを訪れたのは午後3時。
休日ということもあり、カップルや親子連れが溢れ、白昼堂々行われた犯行は過去最大の惨劇に発展するはずだった。
だが、その事件は、一部店舗や怪我人こそ出たものの、一人の死者を出すこともなく犯人の電撃的な現行犯逮捕という形で決着する事となった。
その一連の事件の犯人こそ、この男、木原豪である。
犯罪者、木原豪は知っている。
自分は特別な存在であるということを。
彼には超能力という異能の力がある。
魔道書や魔道士から学ぶ後天的技能である魔法や、強弱はあれど誰しもが必ず持っている霊能力とも違う。
目覚める時期に程度差はあれど、完全先天性能力である超能力は、まさしく選ばれし者の力なのだ。
彼の得意とする能力は二つ。
念力を物理エネルギーへと変換し物体を動かす【念動力(サイコキネシス)】
炎を自在に派生させる操ることができる【発火能力(パイロキネシス)】
ともに高位の能力者であり、組み合わせにより炎を念力で自在に操る超攻撃的サイコパイロキネシストである。
超能力者、木原豪は知っている。
力こそ正義であるということを。
悪の栄えた試しなしという言葉はまったくもってその通りである。
栄えたものこそが正義なのだという力の正義を如実に表している言葉なのだから。
力そのものが正義であり善悪などという貴賎はない。
そして、自分は選ばれし人間であり正義そのものである力がある。
己がなすことが正義であり、それを阻む者こそ悪である。
故に彼は己の正義のために力を振るうことに一切の躊躇いなど存在しない。
どうしようもなく歪みに歪んだ独善的な正義感。
それこそが木原豪という人間の本質である。
だからこと許せないことがある。
なんの生産性もなくただ立っているだけの目障りなビルを、最高に派手な花火にしてやろうとしてやっていたというのに。
たまたま居合わせた忌々しい糞ガキ二人によって、あろうことか殴り倒され全身を拘束され、次に気づいた時には犯罪者の烙印を押されることとなってしまった。
その後、送られた場所はどうやら”そういう奴ら”を閉じ込める牢獄だったらしく、超能力を封じる拘束具まで着せられる始末だ。
自分がこのような扱いを受けることなど許されないことだ。
自分をこんな目にあわせた、あの二人を許しておけるはずもない。
復讐者、木原豪は知っている。
復讐すべき相手がこの場にいるということを。
名前は確か互いに呼び合っていた名を思い出すに日高とゆかりだ。
その顔は忘れもしない。
額に傷のある金髪のガキに、生意気そうな面をした黒髪の女。
男の方はナイフで一本一本指を落としながら皮を丁寧にそぎ落とし傷口を燃やして最高の痛みを味あわせて殺してやる。
女の方は整った顔がグチャグチャになるまで殴って犯して殺してまた犯してやる。
復讐の機会が与えられた自分はやはり特別な人間なのだと思いながら。
その光景を想像してケッケッケと喉を鳴らして木原は嗤った。
どうせなら派手にやってやろう。
「このクソつまんねー舞台を、俺が最高に派手なパーティに演出してやるよ、ヒャハハハハハ!」
【一日目・深夜/4-D 森の北】
【木原豪@非日常的現代世界】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1〜3
【思考】
1:日高恭と澤村ゆかりを殺す
2:邪魔する奴は皆殺し
【名前】木原 豪
【性別】男
【年齢】23歳
【職業】犯罪者
【身体的特徴】金髪、痩せ型、派手なピアス、目がイってる
【性格】自信家で自己中心的、激昂すると手がつけられない
【趣味】ナイフ収集
【特技】ビル爆破
【経歴】犯罪者
【好きなもの・こと】自分、金、派手なこと
【苦手なもの・こと】正義
【特殊能力】超能力者、念動力(サイコキネシス)と発火能力(パイロキネシス)を得意としている。ESP系の能力は苦手
【出身世界】非日常的現代世界
【備考】
最近ちまたを賑わす犯罪者
強力な力を持つ超能力だが、その力を己の為にしかふるわず、強盗、爆破と辺りの被害を顧みず己が欲望のまま力をふるまう。
先日、ある事件を起こした際についに拘束され逮捕されることとなる。
その逮捕の原因となった日高恭と澤村ゆかりに強い恨みを持っている。
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