むてきのらいじん!だゾ!
「殺し尽くせだと…ふざけるな!」
ソーは憤慨していた。この殺人ゲームの主催者であるアクドス・ギルに怒りを抱いた。
彼自身は戦いを好むタイプだ。神々の国・アスガルドの王子として生まれ、「戦いとは名誉なもの」という風に教えられて育ってきた。だがだからと言って、無益な殺戮を好んで行うような歪んだ性格はしていない。
だからこそ、彼は怒った。罪も無い者達を集め、殺し合いをさせようとしているアクドス・ギルに対して。目の前で起きた二人の男の無残な死に様を止められなかった自分に対して。そして、彼は誓った。
「アクドス・ギル…俺は必ず貴様を倒す!我が父の名において、必ずこのゲームをぶち壊してくれる!」
ソーは寝ている太陽を起こしてしまいそうな程大きな声で、この場における自身の誓いを叫んだ。
今この手には、自身の半身とも言うべき愛用のハンマー『ムジョルニア』は無い。アクドス・ギルによって奪われ、代わりに一つの鞄を渡された。だが、だからどうしたと言うのだ。自分は全能の父・オーディンの息子、無敵の雷神ソーなのだ。例え片腕だけになろうとも、この身朽ち果てるまで戦い抜いてやる。
そう誓ったソーは、改めて自分に支給された鞄を開いた。憎むべき敵からの施しなど、川に捨てた方がマシとも思うが、今この手にムジョルニアが無い以上、支給されている武器に頼るしかない。いかに無敵の雷神といえど、武器が無くては戦えないのだ。
まず最初に出てきたのは一枚の地図と方位磁石だった。どうやらこれが会場の地図らしい。斜めに大小いくつもの島々が並ぶ列島…ちょうど北に位置する大きな島の端っこに×印がつけられていた。これがソーの現在地のようだ。
次に出てきたのは筆記用具と白紙のノート、それから小さな時計だった。これは戦いには使えないので、横に置いておく。
更に鞄を漁ると水の入った透明なボトルとビニール袋に入ったパンが出てきた。食料のようだ。
「…少ないな」
一応、成人男性3日分の量があったのだが、アスガルドの民の中でも大食漢の部類に入るソーからしたら、オヤツぐらいの量に思えたのだ。
次に出てきたのは名前がいくつも書かれた紙だった。参加者名簿のようだ。そこにはソーにとって忘れることができない名前が載っていた。
トニー・スターク、スティーブ・ロジャース、ブルース・バナー…ミッドガルド(地球)で知り合った敬愛すべき戦士達…そして…
「ロキ…」
ソーの人生にもっとも深く関わる者の名前が載っていた。
ロキ…ソーの義弟にして、「チタウリ」という異星人と組んでミッドガルドを侵略しようとした張本人。何故アスガルドの牢獄に幽閉されている筈のロキが、このような場所にいるのかは解らない。あのアクドス・ギルが解放したのだろうか?まさか、あのアクドス・ギルがチタウリの頭目なのか?
考えても答えが出る筈もなく、ソーは武器を取り出した。
出てきたのは、持ち手の部分に『北条悟史』と書かれた長い金属製の棒と古ぼけた日記、それから…鳩の形をした菓子の詰まった箱だった。日記と菓子は使いようがないが、金属製の棒の方は、普段からハンマーを振り回しているソーにとって、これ程使いやすい武器はなかった。そう思ったソーは、その金属製の棒をいつもはムジョルニアをぶら下げている右腰の部分にぶら下げた。
武器を手に入れたソーは残りの支給品を鞄の中に戻し、徐に立ち上がった。
「さて…行くとするか」
「行くってどこに?」
「そうだな、とりあえず…!?」
いきなり誰かに声をかけられ、ソーは驚いて声の聞こえてきた足下に目を向けた。見れば、ジャガイモみたいな頭をしたまだ幼い少年が、ソーが持っているのと同じ鞄を持って、ソーのことを見上げていた。
「…お前…いつから居たんだ?」
「『ころしつくせだと…』ってあたりから」
「最初からじゃないか!」 少年の返答に、ソーは思わずツッコミを入れた。少年はそのツッコミをスルーし、無邪気な目をして聞いてきた。
「あんただれ?」
「そういうお前が誰だ?」
「人にお名まえ聞く時は自分から言わないといけないんだぞ」
「ん…それもそうだな…」
少年に言われて、ソーは胸をはって名乗りをあげた。
「俺はソー。オーディンの息子だ。お前は?」
「オラ、野原しんのすけ五歳!父ちゃんのお名まえは、野原ひろし!」
少年―しんのすけもソーと同じく胸をはって名乗った。ソーはしんのすけの目線に合わせるように体を屈めた。
「しんのすけ、お前はこの近くに住んでいるのか?」
「うんうん、違うよ。オラ、おうちでアクション仮面見てたら、いつの間にか変なとこにいて、あの変なお化けに変なこと言われて…気づいたら、ここにいたの」
「そうか…」
ソーはしんのすけの話を聞いて、更にアクドス・ギルに対して怒りを募らせた。
自分はまだ良い。戦士として数え切れない程の戦いを経験してきた。だが、目の前にいるしんのすけは戦いなどとは無縁な子供だ。この殺人ゲームの中では、ゲームに乗った者に格好の獲物として狙われるだろう。そこでソーはしんのすけに持ちかけた。
「…どうだしんのすけ、俺と一緒に来ないか?」
「おっ?どうして?」
「こんな夜更けにお前みたいな子供を一人置いていけない。それにお前だって、一人でいるより大人と一緒にいる方が良いだろ?」
「…どうせならきれいなお姉さんが良かったのに〜」
「こら、子供の癖に色気付くな」
子供ながらに男らしい欲求を述べるしんのすけに、ソーは苦笑いを浮かべた。
「それにしても、変なおようふく着てるね」
「変とはなんだ。これはアスガルドの正装だぞ」
二人のそんな掛け合いは、見様によっては年の離れた兄弟のようだった。
【未明 北海道知床付近】
【ソー・オーディンソン@マーベル・シネマティック・ユニバース(アメリカ)】
[状態]:健康
[装備]:北条悟史のバット@ひぐらしのなく頃に
[道具]:支給品一式、ロールシャッハの日記@ウォッチメン、鳩サブレー1ダース@現実
[思考]基本:殺人ゲームをぶち壊す
1:しんのすけと行動する
2:ムジョルニアを取り戻す
3:ロキ…
[備考]
映画「アベンジャーズ」終了後からの参戦です。
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん(日本)】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダム支給品(0〜3)
[思考]基本:家に帰る
1:おじさん(ソー)とついてく
2:ここどこ?
[備考]
アクドス・ギルの説明をちゃんと聞いてません。
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