動く者・蓉子
「一体、何だったのだ・・・。」
蓉子はとりあえず落ち着いて行動を決めることにし、少し開けた森の中で呼吸を整えていた。
(そもそも、何故私は銃を・・・。)
正直、自分でもよく解っていなかった。
ただ、目の前にいた少女から何か言い知れぬ圧迫感を感じたのは事実だ。
「しかし、いきなり撃つことは・・・。」
手元のコルトガバメントを眺める。
「今までもこれほどまでに困惑したことはないのだが・・・。」
キンコンカンコ〜ン!!
学校の始業のような鐘の音がいきなり鳴り響く。
「何だ!?」
「HAHAHA!! グッモ〜ニング、エブリバディ!!
初めまして、ナイストュ、ミートゥー。
マイネイムイズ、ヴィルヘルム・ミカムラ。
実は、気づいている方もおられると思いマァスが、
みなさんをこの地に召還したのは…………この余なのだ。
ビコーズ、君達には、素晴らしい資質がある。
魔力と言う名のとても素晴らしい才能だ。
余の理想とする世界誰しもが魔法を使える、誰しもが努力しつづける世界の住民となって貰いたく、
余とそれぞれの理念を持つものたちの手によって、諸君達をこの地に召還したのだ。
ところがだ!! 大規模な召還の為か制御しきれず、我々の望んだ以外のモノたちまでが召還されてしまった。
しかも、中には此方側の召還した有望な者達を殺すモノまで現れる始末。
そこで余たちは、この危険性も考え、部外者を排除する事にしたのだ。
しかし、情報不足と一部の者の行き過ぎた行為により、諸君達の身近な人物まで排除してしまうと言う
実に嘆かわしい悲劇が起きてしまった。
だが、恐るべき事は、未だに召還したものを殺す望まれぬ召還されたモノ……イレギュラーとでも言おうか。
そのイレギュラーが複数島にはびこっていると言う事実がある。
そこで、我々は、諸君達に提案したい。
今回の召還は、召還された時に身近にいる者を巻きこんだ可能性が高いと言う事がわかった。
よって、我々の理想に従い、諸君達と共に中央に来てくれる者は、我々と共に理想を目指そうではないか。
幾ら資質がなくても――」
蓉子にはそこまでで十分だった。
「ヴィルヘイム・ミカムラ・・・。貴様が戯れに任務中の私をここに呼んだというのか・・・。」
握った蓉子の拳がふるふると震える。
「くだらんっ!己の欲望の為に他者を、関係のない者まで引き込むとは・・・っ!!」
それは蓉子が書記官として大使館に思っている事が言葉になって出たようにも見えた。
「……残念だが、中央を目指さない者は、以降敵として見させてもらう。
以上だ、諸君達のよい返事と行動を待っている」
最後の締め括りが更に蓉子を駆り立てた。
「・・・いいだろう。中央へ向かってやる。だが・・・!」
蓉子は残弾を確認したマガジンを再び銃本体に叩き込む。
「決して仲間にはならんぞ。こんな戯言に付き合うほど暇ではない。邪魔をするなら――殺す。」
【皇 蓉子@ヤミと帽子と本の旅人(ORBIT)分類:招 状態:○ 所持品:コルトガバメント(残弾数12発)、マガジン×4、暗器(クナイ:残数不明) 行動目的:中央へ移動・ヴィルヘルムの暗殺?】
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