動く者・藍






キンコンカンコ〜ン!!
島全体に響くような大音響だった。

「HAHAHA!! グッモ〜ニング、エブリバディ!!
初めまして、ナイストュ、ミートゥー。
マイネイムイズ、ヴィルヘルム・ミカムラ。
実は、気づいている方もおられると思いマァスが、
みなさんをこの地に召還したのは…………この余なのだ。」

「何でっしゃろ?このアホ丸出しの放送は。」
藍の肩に止まったケンちゃんは呟く。
「分かりませんわ・・・。」

「ビコーズ、君達には、素晴らしい資質がある。
魔力と言う名のとても素晴らしい才能だ。
余の理想とする世界誰しもが魔法を使える、誰しもが努力しつづける世界の住民となって貰いたく、
余とそれぞれの理念を持つものたちの手によって、諸君達をこの地に召還したのだ。
ところがだ!! 大規模な召還の為か制御しきれず、我々の望んだ以外のモノたちまでが召還されてしまった。
しかも、中には此方側の召還した有望――」

(誰しもが・・・魔法を使える・・・)
その台詞が藍の心に闇を広げる。
(魔法・・・)

恋に”兄が出来た”と聞き、初めて大輔に逢った時の衝撃。
・・・言えなかった。恋を想うからこそ。
ずっと見続けていた。
恋の兄としてではなく、一人の男性として。
もし、魔法が使えたなら――。
誰もが想う我侭な願い。
でも、それが今なら理想ではなく、現実としてここに存在するのではないか・・・?
「・・・そこで、我々は、諸君達に提案したい。
今回の召還は、召還された時に身近にいる者を巻きこんだ可能性が高いと言う事がわかった。
よって、我々の理想に従い、諸君達と共に中央に来てくれる者は、我々と共に理想を目指そうではないか。
幾ら資質がなくても努力すれば、どんなにダメでも多少は開花させる事は可能だ。
中央に入る際に、念のために多少頭の中を覗かせてもらうが、
寛大な理念を持ってして、余たちは受け入れたい。
素晴らしき世界を作り上げようではないか。
……残念だが、中央を目指さない者は、以降敵として見させてもらう。
以上だ、諸君達のよい返事と行動を待っている」

そこで放送は終わった。
「・・・。」
藍の中で、心は決まっていた。
だが・・・だからこその悩みがあった。
「橘さん達・・・どうしましょう・・・。」
「ん?何か言いはりましたか?」
ケンちゃんの声はあっさり無視された。
「うぅ・・・。」
(今の状態であの二人と会えば・・・間違いなく意見の食い違いになりますわね・・・。)
恋を殺した事は知られていないので言い訳は出来るとしても、中央へ行く事を了承させられるだろうか?
「敵に・・・なるしかないんですの・・・?」
出来ないかと言われれば、そうではない。
現に親友を殺している。
(そうですわね・・・了承を得なくとも、私は私、ですわ。)
そう決心すると、やけに清々しかった。
「ケンちゃん、私、中央へ行きますわ。」
「は?本気でっか?」
「ええ。もちろんですわ。」
その藍の笑顔にケンちゃんは凍りつく。
(嫁はんズ・・・わて、ここで終わりかもしれん・・・。)
【鷺ノ宮 藍@Canvas〜セピア色のモチーフ〜(カクテルソフト)分類:招 状態:○ 所持品:拳銃(種類不明) 行動目的:中央へ移動】
【ケンちゃん@ヤミと帽子と本の旅人(ORBIT)分類:? 状態:○ 所持品:嫁はんズ用携帯電話(13台)、クセ毛アンテナ 行動目的:藍についていく・コゲ探し】



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