亡霊たちの祈り
エレンと小次郎は地図を見ながら今後のプランを考えていた。
地図の情報通りならば、島の外周はほとんどが断崖絶壁で占められているようだった。
これでは脱出目的で海岸に辿り着く事は容易ではない。
一応島の南端部に漁港が、東にまとまった広さの砂浜があるが…自分たちの現在位置からはかなり遠い。
「この分だとたとえ船か何かで逃れる事が出来たとしても、海上も完全に封鎖されているはずだ」
「それ以前にここがどこなのかまるで分からないわ、そんな状況で海原に漕ぎ出すのは自殺行為よ」
「なるほどな」
小次郎はまた地図を片手に考え込んでいる、そんな中で。
(玲二・・・)
エレンは最愛の恋人のことをふと頭に浮かべていた。
自分が光に包まれたとき玲二も傍にいた、ということは彼もこの島にいるということだ。
日本を脱出して以来、玲二はことさら明るく振舞い、血塗られた過去を必死で忘れようとし、
そして自分には忘れさせようとしている。
それがエレンには不安でたまらない、ドライとの一件以来、他人の生命に敏感になりすぎている気がするのだ、
敵に容赦することはさすがにありえないとしても・・・情にほだされ要らぬ厄介を抱え込んでいる可能性はある。
が、それでもいいとエレンは思う、自分の命惜しさに救える命を見捨てる、そんな玲二は見たくなかった。
だがそれでも。
「どうして…」
エレンの口から溜息混じりの呟きが漏れる。
なぜこんな時に自分が傍についていることができないのだ。
自分は玲二からそれこそ多くのものを貰った、順番から行けば今度は自分が彼を救う番なのに。
それに…。
(玲二には私が必要なの・・・そして私にも玲二が必要…たとえ違ってもそう思わないと私には何も無くなってしまう)
もし、玲二が死んだときは…。
エレンは自分の頭の中に芽生えた恐ろしい考えをあわてて打ち消す、玲二がいない世界など
想像することすら禁忌だ。
(神様…私はどうなっても構いません、ですが玲二の命だけはお救いください)
「このまま島の外周を沿って行けば西の方にまとまった規模の街があるようだ、とりあえずそこに〜」
エレンは小次郎の言葉も上の空で、空に向かい祈りの十字を切るのであった。
そして奇しくも、エレンらのいる場所からほぼ正反対の地点において、
(もしこの腐れた世界にも神がいるのなら聞いてくれ、俺はどうなってもいい、
だがエレンは、エレンだけは救ってくれ…俺がエレンの罪を全て背負うから…)
吾妻玲二もまた恋人の無事を祈っていたのであった。
「もう誰も失いたくないんだ…キャルの時のように」
そしてその頃、武器庫ではドライが一人、オルゴールを弄んでいた。
歳江と和樹はすでに再出撃している、自分もそろそろここを出なければならない。
(玲二…)
オルゴールの甘い旋律と共に甦るのは、玲二と過ごしたLAでの日々。
ほんの僅かな時間だったが、あんな幸せな時間は無かった。
ドライは何気なく胸元の傷を指でなぞる、自分が死んだということは覚えている、
だがその前後の記憶がすっぽりと抜け落ちている、これだけはいくら考えても思い出せなかった。
(何か大事なことがあったような気がするんだよなァ)
「ま、いいか…こうしてまた生き返れたんだしよ」
あの頃に戻る事はもう叶わない夢だと思っていた…だが…今自分はこうして生きている。
2度目の人生、今度こそ最後の機会だ…。
ドライはオルゴールを仕舞うと、ゆっくりと愛用の銃の手入れを始める。
(アイン!今度こそ決着をつけようじゃないか、誰が玲二の隣に一番ふさわしいかをよ!)
もはやその表情には感傷は無かった。
【エレン@ファントム オブ インフェルノ(ニトロプラス) 状 ○ 所持品 ベレッタM92Fx2 ナイフ 招】
【天城小次郎@EVE〜burst error(シーズウェア) 状態△ 所持品 食料 水 医薬品 地図 狩】
【吾妻玲二 @ファントム・オブ・インフェルノ( ニトロプラス) 状 ○ 所持品 S&W(残弾数不明) 狩 】
【原田沙乃 @行殺!新撰組 (ライアーソフト) 状 ○ 所持品 十文字槍 鬼(現在は狩) 】
【ドライ @ファントム・オブ・インフェルノ (ニトロプラス) 状 ○ 所持品 ハードボーラx2 鬼、】
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