引きつけあう魔力






 類は友を呼ぶという。
 趣味が同じ者たちは引きつけあい、境遇が同じ者たちも引きつけあう。
 それは、魔力を持つもの同士も同じことだ。
 人には、魔力を持つ者がいる。
 彼等の多くは気付きもしないだろう。
 しかし、彼等が知らなくとも、魔力は知っている。
 魔力は、その保持者達の意思とは無関係に、互いに引きつけあう。

 ヴィルヘルムはイデヨン発動に際し、その性質を大いに利用しようとした。
 召喚の対象者の周りにもまた、魔力を持つものがいるはず……。
 ならば対象者に近しい者達も、ついでに召喚してしまえば一石二鳥かそれ以上……。
 結果として、イデヨンを暴走させるという手により、魔力を持つものとともに、ほぼ無差別的に人間を召喚させたのである。


 
双子の姉妹とある若者と



 召喚される者は、自分の世界に必死に縋ろうとし、潜在的に魔力をもって留まろうとし、また、愛する者達を思い浮かべる。
 自分の世界に留まるのが不可能と判断すると、今度は無意識的に、愛する者達を一緒に連れて行こうとする。
 自分以外の者を異世界に転移させるのには、自分の魔力を使用するしかない。
 そのため、精神的にも肉体的にも消耗するのである。

 召喚の対象者の中には、小さな女の子もいた。
 彼女は双子の姉妹の姉だった。
 彼女は自分の世界が本当に好きだったのだろう。
 必死に、自分の世界に縋ろうとした。
 しかし、少しながら魔力を持つとはいえ、幼い人間の子供が慣れない魔力の使用に耐えられるはずもなかった。

 双子は、何か見えないもので、固く結ばれているという。
 それはこの姉妹に関しても同じだった。
 姉は、自分の世界に留まるため、妹の力も借りた。
 しかし二人になったところで、所詮は子供。
 二人の魔力は削られ、心身ともに疲弊していく。

 やがて二人は留まることをあきらめた。
 ……どうせどっかにいっちゃうのなら……
 二人は無意識のうちに、愛する者を連れ行こうとした。
 そして姉妹はできる限りの魔力を集め……

 双子の姉妹とある若者は、こうしてここに召喚された。



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