無題
「暇だなぁ〜」バイト中の相楽山彦はそうひとりごちた。
「平日の真昼間ですからね〜暇にもなるでしょう」同じくバイト中の牧島麦兵衛もそれにつづく。
夏休みの真っ只中に勤労にいそしむ二人。最近定着しつつあるCDショップの一風景だった。
店内に客がいない上、溜まっていた雑務を片付けていたこともあって、暇なことこの上なかったのである。
仕方なく二人は雑談に興じていた。
「山彦さんって今回のバイト代なんに使うんですか?」
「さあ・・・ひさしぶりに海にサーフィンに行くのもありかな・・・海彦もつれて」
「海彦って誰です?」
「俺の弟。あいつといるとナンパの成功率も上がる」
「あはは・・・結局はナンパなんですか」
いつものように会話に興じていると、店内に一人の少年が入ってきた。
「おっ海彦だ。お〜い、海彦〜」
「へえ、かわいいこですね」
海彦と呼ばれた少年はカウンターによってくると麦兵衛のほうを見て・・・ニヤリと笑った。
「ミツケタ・・・キテモラウゾ・・・」
「え?」
「・・・これが自分たちがここに来るに至った経緯です。ひかりさん」
「説明ありがと牧島君。これで二つ、はっきりしたわね」
「と、いいますと?」
「まず、この世界は夢じゃない。私は昼寝の最中に連れてこられたみたいだから最初てっきり夢かと思った
けど、でもそれじゃロクに会話を交わしたことも無い牧島君が出てくるのがおかしい」
「そうです」
「だからこれは現実。私たち三人は今このだだっぴろい草原にいるのよ。
自分たちの見た事も無い・・・ね」
「もうひとつは?」
「もうひとつ、それは私たち二人は少なくても何者かの意図で呼ばれたっ
てことになるわ。おまけで付いてきた相楽君はわかんないけど・・・ねぇ?」
「は、はいっ!」
「山彦さんどうしたんですか?またすごく緊張してますけど?」
「お前もあの先輩の怖さをすぐ知ることになるよ・・・」
「んで、文芸部を一日でやめた相楽山彦!」
「ははいっ!」
「なんだよその返事は・・・。まあいいそれよりお前らをこっちに呼んだのは
本当にお前の弟だったんだな?」
「それは間違いないです」
「そうか・・・厄介だな」
「いや、呼んだやつが同じだったらそいつ半殺しにしたらいいと思ってたからさ」
「ひかりさんは誰に呼ばれたんですか?」
「ばっばか!結城先輩だろうが」
「いいよ、ひかりで。私をここに呼んだのは誰かわからない。ロングヘアーの
奴としかわからなかった。でもこの世界でわたしが起きた原因はあんたたちの
知ってる奴だよ」
「そ、それは・・・」「まさか・・・」
「そ、桜井舞人。あいつの馬鹿な叫び声で起きた。近くにいるかもしんないか
探しにいくよ」
【相楽山彦・牧島麦兵衛・結城ひかり】
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