いんたぁみっしょん






 新撰組から逃げおおせた双厳、十兵衛、命の三人組は、
敵に見つかりにくい洞穴を見つけ、そこで一休憩を取っていた。

   ドンッ!!
 「あいつら何だってんだ!?」
 双厳が苛立ちながら洞穴の壁を叩く。
 「落ち着け……。 取りあえず、今俺たちが置かれている状況から整理していこうじゃないか」
 興奮する双厳を十兵衛なだめる。
 「ちっ!!」
 まだ納得のいかない様子で双厳はしぶしぶと腰をおろした。

 「結論から先に言うとだ。 ここは俺たちがいた島ではないのに間違いない」
 十兵衛が口切った。
 「確かに、俺たちがいたあの島とは全く形が、あの独特の雰囲気すら違うが……」
 「勿論それもあるが、俺と命の二人は、この状況の元凶らしいヤツラから少し話を聞いたのもある」
 「どう言うことだ?」
 双厳が十兵衛へと詰め寄る。


   無影と戦っていた十兵衛と穴の前に残された命は、
穴に生気が吸い寄せられ、その勢いが最大となった時に溢れた光に飲み込まれた。
 そうして彼ら二人もまた、気づいた時にはこの島へと辿り付いていたのだ。

 「十兵衛様……。 ここは? それに無影は?」
 あの異様な雰囲気の島とは違う木々の生い茂る中に放置された二人。
 「解らん……。 だが、落ち着ける場所ではなさそうだな」
 十兵衛が見つめる先には、セーラー服姿の少女が一人、此方へ向かって歩いてくる。
 彼らにとって、彼女の服装が異質なものなのは当然として、
彼女自身からも異様な気が溢れているのが、十兵衛には感じ取れた。

 「あら、こんな所にも美味しそうな獲物が……」
 「貴様、何者だ?」
 ゆっくりと近づきながら来る女に、十兵衛がきつい眼光と共に問い掛ける。
 「あなたにようはなくってよ? 私が欲しいのはそこのお嬢さんだけ……」
 「え、え、え」
 女の言葉に困惑する命。
 「うふふ、生娘ではないけど、好みのタイプだわ……」
 「……異形のモノだな?」
 十兵衛が鞘に手をかけながら、言い放った。
 「あら、感がよろしいのね。 でもあなたのような下郎には興味がなくってよ?」
 「その手の類の相手に慣れてるもんでね……」
 「十兵衛様……」
 「命、構えろ!!」
 十兵衛の声と共に少女が一気に彼の目の前に詰め寄る。
 「!?」
 カキーンとした刃物のぶつかる音が鳴り響く。
 「ふふ……。 腕のいい退魔師さんね」
 初音の腕から繰り出された爪を十兵衛の刀が受け止めた。
 「助太刀します!!」
 命の大筒から少女へと向かって銃弾が発射される。
 ダッ!!
 それと共に少女は後方へと飛びのき、十兵衛もまた後ろへ下がり、構えなおす。
 「面白いものを持っているのね……。 始めてみるタイプの銃だわ」
 「俺にようがなくて、連れの方にあるってのはどう言うことだ?」
 十兵衛は刀を構えながら、再び少女へと質問をかける。
 「そうね……。 簡単に言えば、この島へと召還をしたのだけれども予定外のモノまで召還されたのよ。
  それで私たちが、その予定外のモノを始末してるの。
  私の場合は、気にいったのを贄にしたいのもあるわ」
 「つまる所は、俺たちは、予定外のモノだったというわけか……」
 「感がいい人は好きよ。 でもごめんなさい。 あなたは私のタイプじゃないの……。
  さぁ、せめてもがいて私を楽しませて頂戴……」
 言い終わると再び初音が十兵衛へと襲い掛かる。


 「っと、後は、先ほどと同じように、命の煙幕弾でそのまま逃げてきたってわけだ」
 「それで、その後、あの四人と戦う俺と無影を見つけて……」
 「そう言うことだ。 お前の方はどうだったんだ?」
 「こっちは、何もなしだな。 ただいきなり襲ってきやがった」
 「ふむ……。 やはり、そいつら四人も予定外のものを排除する為の一員と見るべきか……」
 「無影が襲われてるのは、いい気味だったんだがな……」
 「もう少しで倒せると言う所で召還されたからな……。 俺だって口惜しい」

   「お生憎様だったな……」

 洞穴の入り口の方から、彼らにとって忌むべき声が聞こえてきた。

 「無影!!」

 三人の目の前に、無影の姿が映し出される。
 「貴様、よくもぬけぬけと!?」
 双厳が刀に手をかけ、続いて十兵衛と命も構えを取る
 「クックックック……。 おおっと、やりあいに来たわけじゃねえぜ?」
 慎重に距離を取りながら、無影が話を切り出す。
 「何のようだ?」
 十兵衛が怒声混じりに語りかける。
 「先ほどの話、悪いが聞かせてもらったぜ。
  どうやら、置かれた境遇は一緒みたいじゃねえか……」
 「それがどうした?」
 「十兵衛、先ほど煙幕で逃げ出してきたって言ったよな?」
 「そうだが……」
 「お前さんとその物騒なもん持ったお嬢ちゃんの二人がかりで逃げ出したんだろ?
  その女の強さはどんくらいだったんだ?」
 ニヤニヤとしながら無影が話す。
 「痛い所をついてきやがるな……。 数度切りあっただけだが……
 はっきり断言できる、勝てないとわかったからだよ」
 十兵衛の悔しさが声に現れる。
 「やっぱりな」
 「此方が全力なのに対して、向こうはまるで鼠をいたぶる猫のような余裕を見せてた……」
 「お前にそこまで言わせる程の相手だったのか……?」
 双厳が驚く。
 「鼠と猫ってのは、言い過ぎたかもしれないが、それでも相手はまだ全力を出してるようじゃなかった」
 「結構結構……」
 無影が十兵衛を挑発するかのように声を上げる。
 「それで、お前は、何をしにきたんだ? 決着をつけに来たわけでもなさそうだが……」
 双厳と違って、十兵衛はそう簡単に挑発にのろうとはしない。
 生気の溢れていたあの場所であったからこそ、無影を倒せるチャンスだったのだ。
 今、再び何もハンデのなくなった無影と戦えば、こっちが消耗するだけ。
 頼みの綱は、双厳の秘策だが、この様子では……。 と打算をしていた。
 「お互い、見知らぬ土地で、仲間もいない。
  どうだ? この島から脱出するまでの間、協力しあうと言うのは……」
 「貴様がそれを言えた口か!!」
 無影の自分勝手な意見に、双厳が怒り飛び掛ろうとする。
 「待てッ!!」
 それに十兵衛が静止をかける。
 「落ち着け、双厳。 やつの言う事にも一理ある。
  あの四人組と俺と命が出会った少女……。
  次にいっぺんに来られた場合は、俺たち三人でもどうなるかわからん……。
  そこを襲われた場合どうなる……」
 「御名答、幾ら俺でもそれなりの規模の組織を一人で相手にするのは無理なんでね。
  それにこっから脱出する為の情報を集めるのもな」
 「無駄口をぉぉぉぉぉ!!」
 怒りを抑えきれず双厳が無影へと飛び掛る。
 「おいおい、二重影が発動してないお前で俺に勝てるかよ!」
 ドゴッ。
 双厳の腹へと刀の柄が打ち込まれる。
 「がふっ!?」
 突き飛ばされる双厳。
 「冷静さを欠いちゃ、どっちにしろ勝てないぜ」
 ふん、と鼻にかけたように彼は嘲笑した。
 「こっちだって早くこんな所とはオサラバしてぇんだ。
  それともお互い帰るのが遅れた結果、あのまま変な方には働いて欲しくないだろ?
  俺からしてもあの開けっ放しは、都合が悪いんでね……。
  お前らからすれば、どっちにしろ絶望的だろうな……」
 「それがどうした……?」
 目を無影をにらめ付けさせながら立ち上がり、再び構えを取る双厳。
 「解ってねぇなぁ……。
  あの双子のお嬢ちゃんたちを放っておいていいのか?
  十兵衛、お前は、あのまま放っておけばほぼ幕府は転覆するぜ?」
 「イル、スイ!!」
 「くっ……」
 双厳と十兵衛がそれぞれ痛い所を突かれ、口を歪める。
 「いいんだぜ? 俺はこのままやりあっても帰るのが遅くなるだけだからな」
 「……だが、貴様が裏切らないと言う保証があるのか?」
 まだ怒りの収まらぬ双厳に代わって、幾分か落ち着きのある十兵衛が無影に向かって言う。
 「ふぅむ……代価を見せろってことか。 ま、いいだろう」
 不適な笑みを浮かべながら、無影は自分の手に刀を添えると、軽く切って見せた。
 「なっ!?」
 一同は、驚いた。
 血こそ出てないものの無影の体が確かに切れたのだ。
 直ぐに修復されたものの、無影は幽体で物理攻撃が無効なはずである。
 「どういうことだ?」
 「この島に来てから、どうやら半分具現化されてるってわけよ。
  こうなっちゃばらばらにされれば、さしもの俺でも死ぬかもな……」
 「それが誠意ってやつか……」
 そこで十兵衛は、考え始めた。
 攻撃が通用するのであれば、
彼の言う通りにバラバラにしてやれば、倒せるのかもしれない。
 だが、それは予想であって、絶対ではない。
 切り口が直ぐに戻ったように、直ぐに回復されるかもしれない。
 感情では、仇である無影を今すぐにでも倒したい。
 だが、理性が、幕府を守る者として歯止めをかけさせる。
 (イチかバチかのリスクのでかい賭けだな……)
 「解った……」
 「おい、十兵衛、本当にいいのかよ!?」
 「すまんが、俺の目的は、幕府転覆を防ぐ事だ。
  その為なら、最善と思う策を取らせて貰う」
 ベストがなければ、ベター。
 「双厳、お前だってあの双子を守ると約束したんだろう?
  それともここで無影と延々と争うか?」
 「……ちっ」
 完全に納得はできない為、そっぽを向いてしまう双厳。
 「それに俺としてもお前に死なれるのは困るんだよ。
  無事に一緒に元の世界に戻ってもらわねえとな」
 言いながら無影は、双厳を指差した。
 「ざまぁみろ、つい先日、二重影を殺しちまったばっかだからな……」
 「そう言うことだ……」
 「調子に乗るなよ、無影……」
 そう言う双厳に十兵衛が続ける
 「……解ってると思うが、無事に戻れた時は……」
 「ああ、解ってるよ」
 「「「真っ先に決着をつけてやる」」」


【双厳@二重影(ケロQ) 狩 状態○ 所持品 日本刀(九字兼定)】
【柳生十兵衛@二重影(ケロQ) 狩 状態○ 所持品 日本刀(三池典太光世)】
【命@二重影(ケロQ) 狩 状態○ 所持品 大筒 煙弾(2発) 通常弾(10発) 炸裂弾(3発)】
【無影@二重影(ケロQ) 狩 状態○ 所持品 日本刀(籠釣瓶妙法村正)備考:物理攻撃半減】



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