侍達






 森、というよりは、山沿いの崖のような場所に一人の男が立っていた。
 「ちっ、行き止まりか」
 崖を下れないと判断した彼は、そのまま元来た山の方へと引き返していく。


   「出口だ!! イル、スイもう大丈夫だ!!」
 「はい、双厳様!!」
 双子の少女の手を引き、双厳と呼ばれた男は、冥府の穴から地上へと駆けていた。
 迫り来る、霊を振り切って、地上まで後一歩。
 現世と繋ぐ穴を潜りぬけた時に光が彼らを包んだ。



   光が消え、気づいた時には、山の中にいた。
 辺りを見渡したが、確かに手にあったイルとスイは何処にもいない。
 何しろ、現世と冥府を繋ぐ穴だ。 多少、位置がずれて外に出てもありえない事じゃない。
 そう思い、直ぐにイルとスイを探して回ったが、辺りには誰もいなかった。
 探索するうちに段々と嫌な予感がして来たが、ここはあの島なのだろうか?
 短い日にちだったとはいえ、あの島はイヤと言うほど探索した。
 もうひとつの島といえど、形に何も変わりはなかったはずだ。
 それにあの嫌な独特の気配とは、また違った雰囲気がこの山を包んでる。
 
 来た道を戻ると、今度は山の奥の方に進んでいく。
 先ほど、崖側に来た時に大体、山の形が見えてきたが、
どうやら此方へ山越えしない事には、ふもとへと降りれなさそうだ。
 獣道を潜り抜け、木々を乗り越えていく。
 イルとスイは、無事だろうか?
 十兵衛と命もどうなったか気になる。
 「むっ!?」

 かすかだが、音が聞こえてくる。
 それもよく見知った刃物のぶつかる音だ。
 耳を凝らしながら、慎重に少しずつ音のする方へと近づいていく。
 耳に響く独特の音がより鮮明になる。
 十兵衛と無影が戦っているのだろうか?
 そうであるならば、手助けをしなければ。



   時は少し遡る。

 「ったく、なんだここは?」
 双厳が散策を始めた頃、忍者のような青い装束を身に付けた男が、
時を同じくして、山の中をうろついていた。
 (あの生気の集う余波、大きな光の後、気づいたらここにいやがった。
  此方としては、あれから解放されて助かってところだが……
  まさか、あの影響で飛ばされたのか?)
 「にしても、ここはあの島じゃねえみたいだが……っと、お客さんかい?」
 ふと、前を見ると四人組の女が男の進路へたちはばかっていた。
 「歓迎されてるってわけじゃなさそうだな……」
 此方を見つめる殺気だった八つの瞳を前に、彼は刀を構えた。
 「参る!!」
 言葉と共に一人が飛びだしてくる。
 「ちぃっ!?」
 キィーンとした音が鳴り響き、男は女の太刀を弾く。
 目の前にいる女の体の後ろから、もう一人が迫り来るのが彼の瞳に移った。
 男は、すぐさま後方へと下がり距離を取る。
 「クックックック……。 四人がかりとは卑怯じゃねえのか?」
 余裕を持ちながら、挑発するように男は連携をさせないように後退を続ける。
 (さてと……。 どうしたもんかね)
 再び、双厳へと戻る。

 やがて、音がはっきりと耳に響くようになった時、
 視界には、忌まわしき存在とそれを追従する四人の女剣士の姿が映った。
 間違いない、あれは無影だ!!

   「無ええええぇぇぇぇぇぇいいいい!!!!」

 戦ってる相手の方は解らないが、少なくとも無影の敵である事は間違いなさそうだ。
 ならば、この機にやつの息の根を止めるまで!!


 「双厳!? ちっ、こんな時に……」
 新撰組の四人の追撃を交わしていた無影の耳に双厳の怒声が鳴り響く。

   「仲間か!? 鈴音! 勇子! 其方を頼むぞ!!」
 歳江の言葉と共に、二人が向かい来る双厳の方へと鞘に手をあて、迫り来る。

   「あぁ!?」
 驚いたのは、無影と双厳である。
 双厳の方は、彼女らの手助けをしようとしたのに面を食らい。
 無影の方は、双厳と仲間と思われたことに大きな疑問を感じる。
 (幕府の犬ってわけじゃなかったのか?)
 「まっ、なんにせよ、2:1じゃぁ、俺は止められないぜ!?」
 「くっ!?」
 4対1を見過ごして、後退を続けていた無影だが、相手が二人になったと同時に反撃へと出向く。
 対して、鈴音と勇子の相手をしなければいけなくなった双厳。
 目の前に怨敵がいると言うのに、向かっていけないもどかしさが彼を苛立てる。
 「待て、俺の敵は無……」
 「問答無用、貴様も我らが敵!!」
 「くそっ、なんなんだ!?」


   2:1の二グループの攻防が続く。
 それを少し離れた場所で眺める二つの存在。

   「命!!」
 「はい、十兵衛様!!」

 いかつい男に命と呼ばれた少女は、大筒を取り出すと
 そこから、争ってる六人に向けて砲撃を繰り出す。

 彼らの真中に着弾し、大きな炸裂音がたたき出されるのと同時に辺り一帯に黒い煙が立ち込む。
 周りにいた六人は、驚愕する。

 「双厳、こっちだ!!」
 双厳の隣に十兵衛が駆け寄り彼の手を取る。
 「十兵衛!?」
 「話は、後だ!! 一先ず逃げるぞ!!」
 「だが、無影が!!」
 「俺とて奴を倒したい。 だがここは逃げるのが先だ!!」
 十兵衛に言われたことにより、まだ納得はいかないものの渋々と従う双厳。
 「っと、ついでに俺も逃げさせて貰うかね」
 無影もそのまま四人から離れるようにして去っていく。

 「おのれ、待てぇ!!」
 暗闇の中では、逃げるのより追う方がはるかに難しい。
 なすすべもなく、無影と双厳に逃げおおせられてしまった。

 「くそっ、まだ仲間がいたとは!!」
 煙が晴れた時に残っていたのは、悔しそうな四人だけであった。


  【双厳@二重影(ケロQ) 狩 状態○ 所持品 日本刀(九字兼定)】
【柳生十兵衛@二重影(ケロQ) 狩 状態○ 所持品 日本刀(三池典太光世)】
【命@二重影(ケロQ) 狩 状態○ 所持品 大筒 煙弾(2発) 通常弾(10発) 炸裂弾(3発)】
【無影@二重影(ケロQ) 狩 状態○ 所持品 日本刀(籠釣瓶妙法村正)備考:物理攻撃半減】



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