再結集






「重かった〜。こっちの彼は結構いい体してるわね。担ぐ方はたまったものじゃないけれど・・・」
ようやく見えた屋敷に芹沢が安堵の溜息を吐く。
「そりゃ鈴音ちゃんが紛いなりとはいえ褒めた程の剣士ですし」
芹沢は沖田の方を向いて見るが、その表情からは何か思案しているようで、
勇子の言葉に対して考え込んでいるというよりは・・・道中ずっとこの調子である。
最初から勇子達の会話を聞いていなかったようである。
「ん。鈴音ちゃん何か考え事?」
思わずそんな事を聞いてしまう程真剣な顔を鈴音はしている。
「・・・え。いえ、すいません。少しぼっーとしてました、病気が治ったからっていっていけませんね」
(少し気にしすぎかな?そういえば以前は鈴音ちゃんが悩んでたりするの見たことなかったわねぇ)
鈴音は、病気がちで体は弱くても意思ははっきりしていた。
行くべき道を真っ直ぐに見据えている。正に新撰組隊士の風格を兼ね備えていた。
(・・・私が言えた立場じゃないわよね、あはは)
内心自分の勤務態度を思い出し苦笑しながらも中央結界内、屋敷の中に3人は入っていく。


「歳江ちゃんはまだ帰ってないみたいですね」
勇子が館内用のスリッパに履き替えながら歳江の草履をついでに確認する。
ケルヴァンには屋敷内はそのままでもいいと言われたのだが、池田屋討ち入りでもあるまいし草履のままではとても落ち着かない。
妥協案として屋敷内では勇子達は履物を変えるということで落ち着いたのだ。


「なんだか随分と静かになったわねぇ」
勇子は芹沢の言葉で屋敷内に人気が殆どないことを気づいた。
「確かに人はいなくても屋敷は大丈夫でしょうけど。朝と比べるといくらなんでも・・・」
鈴音も人気がないのに気づいたようであたりの気配をうかがっている。
(何かあったのかな?沙乃が襲撃でもかけてきたのか、それとも別の・・・)
ゴトッ
その音は背後から聞こえた。
突然の物音に3人は一瞬戦闘体制に入りかけたが・・・
「この距離でようやく気づくとは。いくら屋敷の中だからとはいえ油断が過ぎるぞ」
物音を立てたのが歳江だとわかると3人は戦闘体制と解いた。
心なしか・・・歳江の服が汚れているような気がする。
(歳江ちゃん・・・途中で敵に会ったのかな?)
勇子が懸念の眼差しで歳江を見ていると、歳江は勇子の視線に気づいたらしく。
「武器庫が襲撃を受けてな。応戦したのだが、襲撃者には逃げられた。
屋敷の兵はどうやらもう片方の武器庫の守りに回したようだな」
辺りの気配をうかがいながら吐き出すように歳江は答えた。
(やっぱり敵を取り逃がしたのが悔しいんだね・・・)
歳江とは長い付き合いである勇子は口に出さない歳江の心中を察した。
「歳江ちゃん、刀の替えは大丈夫だったの?」
空気を読まない芹沢が心配そうに歳江に話しかける。
「それは問題ない。只あちらの武器庫の銃器類は殆ど使い物にならなくなった。残った少ない武器はこちらの屋敷に運ぶそうだ」
(もっとも芹沢さんの心配は私が戦えないと自分が楽をできないからだろうが・・・)
ふと視線を勇子に移し
「・・・所で勇子。いつまでその重そうな荷物を背負っているつもりだ?」
「あっ・・そういえば。道中ずっと背負って歩いてたからすっかり自然になっちゃったよ」
そういうと勇子は背中の青年・・・桜井舞人に目を向ける。
息はしているし、体温も正常だ。
しかしあまりにも生気が舞人の顔にはなかった。
「芹沢さん・・・本当に当て身だったんですよね?なんかやたらと弱っているような気がするんですけど」
「う〜ん、私の魅力に骨抜きにされた・・・やぁねぇ。本当に只の当身よ?ほら少年と触れ合う機会は大事にしなくちゃ」
言葉の途中で歳江が睨みつけて来たので少し怯み、真面目に答えた。(つもりだ)

リビングの方から人の声が聞こえる。
出払っていた兵士が戻って来たのかもしれない。
リニアは様子を見に行く事にする。
リビングに入ると歳江と目があった。
(この人朝、庭で誰かと口論してた・・・)
服装が見たことないもので覚えていたリニアは警戒する。
(ケルヴァン様の部下の人達・・・美由希さんの事ばれないようにしないと)
ソファーに横たわっている男性2人は彼女達が連れてきたのだろう。
ゆっくりだが息をしている。
まだ男達が生きてるのを見てとると内心、安堵の息をついた。
(でもこの人達傷だらけだし、美由希さんの事も黙っておいた方がいいですね)
彼女達──歳江達が力ずくでこの屋敷にこの男達を連れてきた、そのように見てとった。
リニアの方は歳江を知っていたが、歳江にとってリニアは只の小間使いとしか認識できなかったようだ。
「そこの女中。ケルヴァン殿に取り次いでもらいたいのだが。新撰組と言えばわかるはずだ」
(え、えっとどうしようか?ああ、そういえばさっき・・・)
「・・・ケルヴァン様は今お忙しいようで、伝言は私が聞くように言われてます」
リニアの言葉の前半は本当の事だ。
部屋に誰が来ても取り次がないようにと、誰も入れるなと言われている。
後半部分については・・・リニアなりに情報を集めようとした口からでたでまかせであった。
「ふむ・・・我らが司令官殿は武器庫の後始末で忙しいのか。魔力資質者と思われる人間を連れてきたのだが・・・」
歳江の持っていた魔力保持者のリストは武器庫でのごたごたの際に紛失してしまったらしい。
今や魔力保持者を確認する方法はケルヴァンによる直接確認しかなかった。
「その件でしたら私が対応するように言われてますので・・・」
リニアはまた咄嗟にでまかせを言った。
(魔力資質者を連れてきた・・・つまり魔力資質者じゃなかったら)
リニアの推論は外れてはいなかったようだ。
「そうか・・・ならば後の事は任せてもよいのだな?局長、出陣するぞ。このままでは舐められたままというわけにもいかん」
鴉丸羅喉の件といい、倉庫の襲撃者といいやられっぱなしでは気が済まない。
足早に歳江は玄関に向かっていった。
「ありゃ・・・重い荷物運んできたから少し休みたかったのに〜」
「しょうがないですよ、歳江ちゃんの性分ですからね」
不平をいう芹沢とそれをなだめる勇子が去るのを見ながらリニアは緊張を解いた。
(上手くいきました・・・)
「ああ、忘れてましたけど・・・」
「ひゃっ!!」
一度去った鈴音が物音を立てずにすぐ傍まで来ている。
(ば・・・ばれました?)
「これその人達の武器です。手の届かない場所に置いといて下さい。結構腕が立つ見たいですから」
戻ってきた鈴音がリニアに渡したのは・・・恭也の持っていた武器一式である。
再び物音を立てることなく鈴音は去っていった。
(怖かった・・・)

「時代が変わったのか、それとも欧米ではああいったものなのだろうか・・・」
「歳江ちゃん、何の事?」
「まあ大した事はないのだが、女中に頭にもう2本手があったのでな。文化の違いというのは興味深い物だな・・・」
(そういえばそうだったかな・・・歳江ちゃん焦っているように見えてもちゃんと余裕はあるみたい。これなら大丈夫かな)
勇子の懸念は杞憂だったようだ。
これなら武器庫を襲撃した者達との戦いにも影響はないだろう。
(私達はもう負けられないんだから・・・ね)

【近藤勇子@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼 状態○ 所持品 銃剣付きライフル】
【土方歳江@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼 状態○ 所持品 日本刀】
【カモミール芹沢@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼 状態○ 所持品 鉄扇】
【沖田鈴音@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼 状態○ 所持品 日本刀 目的、原田沙乃と話し合う】
【高町恭也@とらいあんぐるハート3(JANIS) 狩 状態× 所持品なし】
【桜井舞人@それは舞い散る桜のように(Basil) 招 状態× 所持品なし】
【リニア@モエかん(ケロQ) ? 状態○ 所持品 小太刀2本 飛針 小刀(小太刀とは別)チタン製鋼糸 
目的 美由希をケルヴァンから隠し通す】

【新撰組 目的 倉庫襲撃者の追撃】



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