巨星動く
「おのれぇ!!」
和樹からの通信を聞いたケルヴァンは怒りに燃え上がった。
「今すぐに配下の魔物たちを率いてくれる!!」
すぐさまに出陣の準備を取っていく彼の腕前は流石というべきである。
速攻で準備を整え、後は外に待ち構えている兵を引き連れていくだけという時、
中央ホールを通り過ぎようとした時に、彼は引き止められた。
「何処へ行く!?」
ホールに威厳のある声が響きわたった。
それと共に姿を現したのは、長い事瞑想をしていたヴィルヘルム。
「こ、これは……。 総帥……」
突然現れたヴィルヘルムの姿に驚きながらも、ケルヴァンは一礼をする。
「何があったと聞いている……」
「は、はっ、北東の武器庫が襲撃されました……。 敵の数は三匹。
いずれも招かれざる者ですが、戦闘能力の高いものばかりです!!」
――――失態がばれた!?――――
ケルヴァンは震えながらもヴィルヘルムへと報告を続けた。
「よい。 丁度余も出ようとしていた所だ。 ついでに片付けてくれるわ」
「い、いえ、総帥の手を煩わせるわけには行きません。
ここは、この私自らが……」
(もし和樹の存在、必要以上にヴィルヘルムにとっての不要者を引き込んだ事がばれれば、
ただでは、済まされない。
最悪、自らの命に関わる可能性がある)
「……ふん、貴様がこそこそと裏で工作していること等、とうに知っておったわ」
「あ、う……」
圧倒的な威圧感を受け、ケルヴァンは言葉を出す事が出来なかった。
「まぁよい、余の計画に支障をきたす範囲ではない
それに、むしろ計画の為に扱いやすい駒を使った心意気はわかる」
思ってもいなかった許し。
「……だが、これ以上は許さぬ。 今後は、不要な物の起用は控えよ」
「寛大なお心、感謝いたします!!」
ケルヴァンは深く頭を下げた。
「さて、地図を見せて貰おうか……。 ふむ、余なら一時間足らずでつけるな。
ケルヴァン、貴様には中央の護衛を任せたぞ。
しばらく、余が戻ってくるまでは、動く事はままならん。
如何に四つの装置が南北東西に要塞を囲い結界を作り出してるとはいえ
その爆弾とやらで、各個撃破される可能性もあるのだからな」
「ははー」
言葉と共にさっそうとヴィルヘルムは、消えていった。
彼が消えてからもしばらくケルヴァンは頭を下げ続ける。
やがて、気分が落ち着いてくるとケルヴァンはやっと頭を上げた。
「……己、今に見ておれよ」
【ヴィルヘルム・ミカムラ@メタモルファンタジー(エスクード) 持ち物なし 状態 ○ 鬼】
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