役目と言うもの






 中央要塞ケルヴァンの部屋。
 「ふぅ……」
 部下からの報告を書類へまとめるとケルヴァンは、ため息をついて椅子に深く腰掛けた。
 書かれた内容は、問題点についてである。


   1:把握しきれてない召還あり
 ・イデヨンの暴走を制御しきれなかったのか原因は定かではないが招かれざる者の召還があり。
  このタイプは二つに分かれる。
  1、招かれし者の側にいたものが巻き込まれたケース。
   この場合、招かれし者と一緒のパターンが多く、また殆どがこのケースである。
  2、完全に此方の意図とは外れた招かれざる者。
   数は少ないが、魔力保有者なのか否であるのか完全に関係なく
   イデヨンの召還に巻き込まれた者。

 2:魔力保有者を食らう存在あり
 ・使い魔からの報告で、魔力を食らわれた死体の存在が明らかになった。
  おそらく項目1で述べた2のタイプであると思われる。

 3:計画の障害になる可能性の大きいもの
 ・此方側に牙を向く存在。
  1、魔力保有者が牙を向いたケース有り、また今後出る可能性もあり
  2、保有者ではないが無視できない戦闘力を有する人物有り。
 (1に関しては、情報がない限りはどうしようもない。 使い魔からの報告待ちだな。
  早急な対策を必要とするのは、項目2だろうな。
 偵察用使い魔をフル稼働させて、ギーラッハ、和樹、新撰組、初音のいずれかに打たせねばなるまい。
  だが、初音は、そうそう言う事を聞くとは思えん……。
  後は、相手の戦闘タイプによっての使い分けだな。
  使い魔からの報告によると切り口から魔力を吸われた痕が発見できたそうだ。
 刃物の使い手、近接系に間違いない……。 とするとギーラッハか新撰組のどちらかだが……。
  新撰組をあてよう。 位置的に彼女達が近いのもある。 また魔力保有者ではない、そしてゾンビという利点もある。
 吸われるという危険性がないからな。 それにこれで敗北から立ち直ってくれると良いのだが……)

 一呼吸置くと、彼はカップに注がれた紅茶を一口飲んだ。

 (さて、次は3だが……。
  調略不可能な3-1は、初音の贄に回して置くのが良いだろう。
 そうしておけば、私が本当に欲しいものの時に多少は融通が聞く可能性がある。
  次に新撰組を打ち破ったと言う鴉丸羅喉か……。
  ヴィルヘルムを除けば、初音か夜のギーラッハでないと返り討ちの可能性のほうが高いな。
 しかし、彼らのプロフィールを見る限り、二人揃ってなら交渉で此方に引き込める可能性は多いにある。
  魔力保有者ではないとはいえ殺害しては、欲しいものまで手に入らなくなる。
  このくらいならヴィルヘルムも納得してくれるだろう。
  機会を伺って、再び私自ら出向いてみるのもいいかもしれん……)
 (書類についての対策は、大体こんなものだろう……。
 対策とまとめて総帥へ状況報告として送っておくことにしよう)

 しかし、まだ彼の思考は、止まらない。
 今度は、彼自身の野望に関してと悩みである。

 (和樹に関しては、見張りをつける必要性があるな……。
 おそらく、元は、感情を搭載した機械の可能性が非常に高い。
  候補者については、美希という逸材を手に入れれたので計画は順調だな。
  念のためにもう2〜3人は、最低でも欲しい所だが……)

   考えを終了させるとやれやれと額に手をあてがいながらケルヴァンは、深いため息をつくのだった。

【特に何も変更なし】



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