Sudden Inpact






「たすけてぇ!!」
伊藤乃絵美は助けを求めながら森の中を必死で逃げる。
彼女の後を追うのは巨大な翼を持つ怪物、ハーピーだ。

ハーピーはまるでいたぶるように一定の距離を置いて、しかし執拗に乃絵美を追い詰めていく
が、それにも飽きたようだ。
石に躓き、立ちあがることが出来ない乃絵美を空中から睨みつけると、ばさばさと威嚇するかのように
翼をはばたかせ、両足のツメを揃え、攻撃の姿勢を取る。
乃絵美はもはやそれを眺めることしかできない。
「お兄ちゃん…」
弱々しく呟いたその時だった。

乃絵美めがけ突撃するハーピーの横合いから、凄まじい勢いで飛び出してきた影がある。
不意を食らったハーピーは体勢を立て直すことも出来ずに地面に叩きつけられる。
助かった…。
ほっと一息ついた乃絵美だったが、次の瞬間起こった惨劇に思わず息を呑んでしまう。
じたばたと地面でもがくハーピー、その身体の上にはまだ幼い少女が馬乗りになっている。
まさか、あの子が私を?乃絵美がそう思った矢先だった、少女はその小さな身体とは不釣合いなまでに。
巨大なハンマーを手にしており、それを大きく振りかぶると迷うことなくハーピーの身体へと叩きつけたのだった。
くちゃりと水音がしたかと思えば、骨混じりの鮮血が周囲に飛び散る。
乃絵美の口から喘ぎのような悲鳴が漏れる、少女の顔面に返り血がべちゃりと飛び散る。
だが、少女はそれにもひるむことなく、さらにハーピーをハンマーで殴打する。
ハーピーはしゃぎゃあと凄まじい悲鳴を上げていたが、やがて原型を止めぬほどにまで打ち砕かれ
その生命活動を停止した。

ハーピーが死んだのを確認すると、ようやく少女は乃絵美の方へと向き直り、大丈夫かといわんばかりに
手を差し伸べる。
だが、返り血を全身に浴びた、少女の白い顔を見ると同時に、
「きゃ!いやああああああっ!!」
乃絵美はその手を振り払いそのまま悲鳴を上げて逃げるのであった。
乃絵美にとってはハーピーよりも、少女の方が余程恐ろしく思えたのだった。
あんな恐ろしい怪物が…あんな恐ろしい人がいるなんて…。

頬に流れる涙をぬぐう事もわすれ、また森の中を逃げ惑う乃絵美だった。

【伊藤乃絵美@With You〜見つめていたい(カクテルソフト)……持ち物なし 狩】
【モーラ@吸血殲鬼ヴェドゴニア(ニトロプラス)……持ち物 巨大ハンマー 招】



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