もう一つの運命






 「はぁぁぁぁぁぁぁ」
 男の掌抵が刀で切りかかってきた沖田鈴音の腹を打ち、そのまま後ろへと吹き飛ばす。
 「鈴音!!」
 土方歳江は、とっさに吹き飛ばされた彼女を身体で受け止めた。

   すかさず、入れ替わりにカモミール芹沢が前へ出て、鉄扇で襲い掛かる。
 「貰った!!」
 男が次の動作に移る前に、この無防備な瞬間を狙って繰り出された一撃だったが……。
 「未熟!!」
 突き出した掌抵をそのまま上に繰り上げ、彼女の顎へと叩きつける。
 「がはっ!?」
 芹沢は、そのまま鈴音に比べると上に高く後方へと吹き飛ばされた。
 地面に落ちた芹沢へ歳江が声をかける。
 「大丈夫か!? くっ……強い。 それにこの男、我等では相性が悪すぎる……」

 ケルヴァンが双子の保護へ向かっていた頃、
新撰組の四人は、一組の男女に遭遇していた。
 かたっぽは、招かれし者。 もう片方は、殺害ターゲットという典型的な二人に。
 彼女達はどちらが標的か調べ終わると、すぐさま魔力資質0であった男の方に襲い掛かった。
 だが、彼女達の攻撃が届く事はなかった。
 初撃、四人同時に切りかかった時、目にも見えぬ速さで避けられ、
ならばと隙をついていってもカウンターの一撃を加えられてしまう。
 男は武闘家だった。 それも類稀なる使い手の。
 それでも彼から動作を起こしての攻撃ならば、四人組である彼女達が勝つだろう。
 しかし、武闘家の男は動こうとせず、構えて彼女たちが襲い掛かってくるのを待っている。
 彼もまた自ら動いては不利なのが解っているのだ。

 「このまま争っても君達に不利なだけだが、どうする?」

 この膠着状態から先に口をあけたのは、男の方だった。
 事実、彼は、襲い掛かる彼女達を迎え撃てばいいだけである。
 口で言うのは簡単だが、実際は遥かに難しい。 だが男の実力はそれを可能にしていた。
 それに彼女達が受けを取れば、彼は、そのまま少女と共に逃げるだろう。

 「我らに退却は許されない……。 それが士道!!」
 歳江が答える。

 「では、何のために私たちを襲った? それとここは何処だ?」

 「貴様に答える義務はない」

 「……。 これ以上言い争っても無駄のようだな。 私たちは去らせて貰う」

 その言葉を残したまま、男は後ろを向くと少女を連れて歩き始めた。
 ダッ!!
 彼が後ろを歩いた瞬間、勇子が飛び出した。
 が
 「止めろ……」
 襲い掛かろうとした勇子は、歳江の手と言葉に制された。

 「怒りで我を忘れるな……。 あの男は、まだ気を解いていない……。 また吹き飛ばされるだけだ」

 彼女は、ギリギリと歯を鳴らし続けた。

 「この屈辱……。 絶対にはらす」


 「大丈夫でしたか? お兄様」
もう新撰組から見えなくなった頃、少女は、兄である男へと語りかけた。
 「心配するな、怪我一つない。 大丈夫だ」
 「私の為にいつもありがとう……」
 「ふっ、気にするな雪。 それにここに飛ばされたせいでお前を失わずにすんだ」
 「でも、また私のために……」
 「いや、さっきの四人組の狙いは、おそらく私だろう……。
 彼女達の殺気は、最初から私にだけ向けられていた……
 それにやろうと思えば、お前へも攻撃していたはずだ」
 「そう……。 でも、私にはお兄様が狙われている事の方が心配です……。
  無理しないで下さいね」
 「ああ、わかってる……。 お前のためにも私はまだ死ぬわけにはいかん」
 男の名は、鴉丸羅喉と言った。
 閃真流神応派の後継者で、世界で二番目に強い男。
 妹の名は、鴉丸雪といった。
 類稀なる超能力の持ち主で、それを狙って、
某国に狙われ、常に様々な刺客に身を狙われる日々だった。
 羅喉が雪を守り、彼ら二人は、何時も場所を転々としてきた。

 ある日、羅喉がほんの少し目を離した瞬間、
雪が刺客に連れ去られ絶体絶命の時、
彼女は光に包まれ、また雪の元へと駆ける羅喉もそれに反応するかのように光にまみれ
二人共にこの世界へとやってきたのだった。

 「ま、不幸中の幸いというやつだな……」
 妹を安心させようと彼は、はははと笑って見せた。
 「はい、こうしてお兄様にまた会えただけでも感謝しなければ……」
 雪もまた羅喉に応じて、笑顔で答える。

 「さて、まずは、ここが何処であるのか把握しないとな……。
 他に人がいればいいのだが……」


  【鴉丸羅喉@Only You リ・クルス(アリスソフト)……持ち物なし 狩】
【鴉丸雪@Only You リ・クルス(アリスソフト)……持ち物なし 招】



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