誠
「違う違う、斎藤はすだれ頭じゃないわよ、それにゆーこさんの口に拳が入るだなんて」
あれから玲二と沙乃は気まずい雰囲気から何とか逃れようと、他愛ない話をしながら山道を歩いていた。
「本物…なんだよな、やっぱり」
玲二は口の中で呟くとしみじみと沙乃の姿をみる、話の通り自分より年上だとはとても思えない。
まして彼女が幕末の世から甦った新撰組十番隊組長、原田沙乃であることも。
そこで玲二は沙乃の表情の変化にようやく気がつく、歩きながらではあるが、その肩は小刻みに振え、
そしてその瞳には涙が浮かんでいた。
「お…おい、何か悪いことでも言っちまったのか?」
見た目は幼女にしか思えない沙乃の涙に、たじろぐ玲二。
「違うわよ、バカ」
沙乃の涙の理由。
そう、彼女はうれしかったのだ…敗れ去った自分たちが、後世、
時代に殉じた英雄として奉られ愛されているということがわかって。
しかし…涙をぬぐって沙乃は思う、だからこそ、自分たちは滅ばなければならないのだと。
これ以上新撰組の名前を汚すわけにはいかないのだ。
「なぁ…今の話をもう1度あいつらに聞かせてやろうか?そしたら…」
だが、玲二の希望的な言葉を沙乃はあっさりと否定する。
「でも…もうゆーこさんたちには通じないと思う、それに 気持ちはありがたいんだけど」
その時、沙乃の拳が玲二のみぞ落ちに突き刺さる。
「これは新撰組隊士である沙乃が始末をつけなきゃならないの」
「沙乃たちは甦ってはならない亡霊…でないと折角アラタたち生き残りが語り継いでくれた、
新撰組の栄光を汚す事になるの…ありがと、少しの間だったけど励みになったから」
そう言い残し立ち去ろうとする沙乃だったが、
「!!」
当身を食らわせたはずの玲二が平然と沙乃の手を握ったまま離そうとしない。
「待てよ、ここまで話しといて、そのまま消えるのはないんじゃないのか?」
「聞き分けがないわね!これは沙乃たちの問題であって」
「違うな、あんたの仲間が実際に人斬って巡っているのならこれは俺たち全体の問題だ」
駄々っ子のように叫ぶ沙乃をやんわりとたしなめる玲二、ただしその眼光は鋭い。
その目をみた沙乃は悟った、この少年も自分と同じ、いや自分以上に人を殺した経験があると。
「それにかつて俺も亡霊と呼ばれたことがあってな、亡霊退治にはふさわしいと思わないか?」
「ちょっと!アンタにも探している人がいるって」
「いいんだ、そいつらを倒す事はエレンを守る事にも繋がる」
2人は口論しながらいつしか水辺にまで移動していた、と、その時二人の目に急流に流されたのだろう
河原でぐったりとする少女の姿が映った。
「玲二! あれ!!」
【吾妻玲二@ファントムオブインフェルノ(ニトロプラス):狩 状態○ 所持品 S&W(残弾数不明)】
【原田沙乃@行殺新選組(ライアーソフト):鬼(現在は狩) 状態○ 所持品 十文字槍】
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