truth?






ザシュッ!
黒光りするナイフの刃が男の胸を貫く、エレンは無表情のままで男の胸からナイフを引きぬく。

事の発端はこうだ、エレンは玲二を探し、島の中をさまよっていた。
と、目の前になにやら建物が見える、エレンが近づいていくと数人の男たちが建物の周囲にたむろしていた。
エレンがとりあえず声をかけようとした瞬間だった、エレンの姿を見た男たちが発砲。
かくして戦闘が始まったのであった。

男たちは数こそ多かったがエレンの敵ではなかった。
事実、地面には他にも数人の男たちがある者は喉を、ある者は胸を貫かれ息絶えていた。
「?」
とりあえず武器庫と思われる建物の中に入ろうとしたエレンだったが、
その時倒した男の1人にまだ息があることに気がつく。
男はひゅうひゅうと苦しげな息を漏らしつつも、自分の傍らの拳銃をもって尚も抵抗を試みようとする。
が、それを察知したエレンの手から放たれたナイフが男の手を貫いた。
「ぐううう」
エレンはそのまま苦しむ男の胸倉を掴み、耳元で囁くように尋問する。
「死ぬ前に教えて、ここは何処…そしてあなたたちは何者?」

「さぁ…な、知ってどうする…お前たちも全員死ぬんだからなぁ」
隊長格と思われる男は、思いのほか通る声でニヤリと笑いながら続ける。
「ケルヴァン様から聞いた話だがな…何でも究極の魔王を作り出すための実験場所らしいぜ…
お前らを殺し合わせて生贄にして世界を支配する魔王を…ぐげ」
そこまで言い終わり、男の口から血泡が溢れ出す。
「まだ話は…」
エレンは男の肩を揺するが、だがそれ以上男の口が開くことはなかった。

無論、真実はそれとは異なる、彼の言葉はケルヴァンの計画を小耳に挟んだ上での、
自分なりの解釈に過ぎないし、エレンを惑わすための置き土産的な意味もあった。
だがエレンにとっては容易ならざる事態だった、まるで現実味が無い。
だが紛れもなく現実だというのに…、一体どうすれば?

そのとき背後に気配、気がついた時には遅かった。エレンがナイフを構えたときにはもう気配の主は
すでに捕捉範囲の外にいた。
男の言葉を考えるのに夢中で、ほんの僅かな時間だが周囲への集中を欠いてしまっていたのだ。
だがすでに遅い、しかもどうやら他にも何人かが盗み聞きをしていたらしい、
その証拠に彼女が戦っている間だろうか、どうやら武器庫から武器がいくつか持ち出されている事も明らかになった。

エレンが考えるに、男の言葉にどれだけ信憑性があるのかは分からない、どちらかといえば眉唾だ。
だがこういう形で男の言葉が無責任な噂としてでも島中に広まれば、
いずれ島は男が言うとおりの殺戮の舞台と化してしまうだろう、最小限に止めなければ…。
「玲二、ここに来てるなら待ってて」
エレンは武器庫の中から幾つか適当に武器を見繕うと、それをカバンの中に入れ、
さっそく追跡を開始した。

一方、草原を走る黒い影、その正体はFM77ことななかだ。
そう、エレンの背後に潜み、まんまと出し抜いたのは彼女だったのだ。

ななかはここに来る前のことを思い出す、いつものように応接間でくつろいでいると、
いきなり誰かが自分を呼んでいると沙由香が言い出した、と同時に彼女の身体が白い光に包まれ、
気がつくとここにいた…どうやら巻き添えをくってしまったらしい。

先程の男の言葉で大体の事情は飲み込めた(悲しいかな、単純な性格なので疑うことを知らないのだ)
自分が戦うことで沙由香を、お姉さまを守れるのならば戦う、自分にはそのための力もある。
とりあえず怪しいと思った相手は、手当たり次第に倒そう。
そして沙由香を救った後は、ケルヴァンとかいう奴をぶちのめして家に帰ればいい。
「お姉さまの相手はみんな私がやっつけちゃうんだからぁ!」

エレンの心配は確実に現実の物となろうとしていた。

【エレン@ファントム オブ インフェルノ(ニトロプラス):所持品:ナイフおよび武器複数】
【FM77/ななか@超昂天使エスカレイヤー(アリスソフト):所持品なし】



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