Warteleute






羅喉に背負われる彼女の姿を見た雪の第二声。
「しかし、お兄様って気絶してる方を助けるのに縁があるのですね……
まるで王子様みたい」
羅喉に連れて来られた郁美は、まだ意識が戻っていない。
少し前のリップと同じ状況だ。
嫉妬と心配が入り混じった妹の瞳が羅喉には少し痛かった。

彼女と同じように煎餅布団に寝かされた郁美。
ただ、彼女の場合は川に流され水の冷たさで急激に体力を失っている。
羅喉の出払っている間に服は脱がし、乾かすために囲炉裏の近くに干す。
更に暖めるようにとお湯が沸かされ、起きた時のために
羅喉が釣って来た魚の骨でダシが取られた質素なスープが作られていた。
海水を川の水で適度な塩分に抑え、骨で出汁を取る。
「様子はどうだ?」
戸を開ける音と共に羅喉が再び帰ってきた。
腰に魚篭、手に釣り竿。
もう一度魚を取りに行ってたのだ。
「ええ、大丈夫ですわ。後は意識が戻るだけです」
布団の横で答えるは、その間、介護を任されていた雪だ。
「此方の方も特に目立った動きはないわね」
戸の横に立っていたのはモーラ。
「そうか……」
「何にしても、彼女の目が覚めないことには何も始まらないわ」
布団に寝かされた郁美を見詰めながらモーラは答えた。

「……さて、今度はスープにしないといけないのだったな。
魚を捌いてこよう」
そう言うと羅喉は奥の台所へ向かう。
「随分と家庭的なのね」
その姿を見てモーラが感心したように声かけた。
それを聞いた羅喉は、苦笑いしながら奥へと向かっていった。

「悪司さんたち、大丈夫かな……」
モーラと二人きりになった雪が呟いた。
「無事だといいわね」
「えと、モーラさんはどう思いますか?」
「変な事をしなければ無事でしょうね」
「変なことって?」
モーラの意図がわかりかねない雪は素直に尋ねる。
「出すぎたことをしないって意味よ。
彼らがあくまで情報収集のみに徹して、直ぐに切り上げてくれればの話」
「それって……」
「好機だと言わんばかりに暴れれば生還率は下がるわ。
もう一つ、不安なのは彼…… 悪司が私情に走らないこと」
「……元子さんのことですね」
「そう、だから本当は彼には遠慮してもらいたかった。
けど、彼のやる気を止めることも不可能だった。
それにかける彼の熱意もわかっていたから」
悲しそうなのか、それとも無感情なのか。
ただ雪にはそれを語るモーラの表情は少し冷たく見えた。
ゴソッ。
物音が響くとびくっと雪が身体を振るわせた。
「あっ!」
そして物音の場所、布団の敷かれた所を見て理解した。
「起きたんですね!」

「さて、こんなものか」
捌いて骨と内蔵を取り、身を適度に切り分ける作業を終える。
料亭のようには上手くいかないが、雪にいつも作ってやっていた家庭料理の杵柄だ。
丁度、切りおえた時に雪の声が居間から響いてくる。
「起きたか。さてお腹も空かせてるだろう。
はやく持っていってやるとしよう」
骨はまた次のために残し、切り身を持って羅喉は居間へ向かった

【鴉丸羅喉@OnlyYou-リ・クルス-(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:なし 行動目的:雪を護りぬく・戦力集結】
【鴉丸雪@OnlyYou-リ・クルス-(アリスソフト) 招 状態○ 所持品:なし 行動目的:兄についていく】
【モーラ@ヴェドゴニア(招)状態:○ 装備:巨大ハンマー】
【小野郁美@Re-leaf(シーズウェア)状態△(疲労) 所持品:なし招】
【分かれ道より後】



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