表層の士






「ここが武器庫か…」
 双厳達との一悶着を終えた後、こちらの人間用の補給地点へ案内された。
 何でも逆方向にあった施設は二度も強襲されたので撤収したらしい。
「んー……いっぱいありすぎるな」
 強そうなのもいっぱいあるが、やはり使い慣れた獲物(コイツ)が一番だ。
 ならば、それを有効に使うためには…
「おい、そこの兵士さんよ」
「なんだ?」
 入り口にたたずんでる見張りの兵に声をかける。
 こういうのは詳しい奴に聞くのが一番手っ取りはやい。
「毒薬はないか?」
 暗殺で最も使われる手段。
 そして使い慣れたコイツに塗ることで威力を発揮できる。
 なにより俺にとっては無害と言うのがいい。
 今もそうだが、元より俺の身体に毒は通用しないからな。
 相手だけを確実に仕留めれる俺に適した格好の手段だ。

 ケルヴァンの野郎のお墨付きだけに渋々と兵が言うことに従ってくれる。
 兵が探してるのを後ろでのんびりと見させてもらう。
 いつの時代も他者を見下すってのはいいもんだねぇ。
「確かこれだったかな」
 そうこう考えてる内に頼みの物を探し当ててくれたようだ。
「この箱の中に入ってたはずだ」
 言いながら、俺に木箱を投げつけてくる。
「へっ、ありがとよ」
 不満な表情で兵士は表へ戻っていく。
「さて、こいつを愛刀に塗ってと…」
 木箱を空けると中には、更に木箱。
「………」
 その中にある物を見た俺の思考は一瞬止まった。
「指輪…」
 ふざけてるのか、まじなのかがわからん。
 それとも裏に毒が仕込まれてるという種類か?
 間違えたに決まってるが…こんな所にある以上ただの指輪ではないだろう。
 何らかの効果があるには違いない。
「填めてみるしかないのか」
 呪いの類の危険性も考えたが、毒にしろ俺の場合は指を切り落とせば外れてくれる。
「さて、凶と出るか吉と出るか…」

  「特に変わった事はないな」
 本当に何も変わりがない。
 こりゃ外れか?と思ったその矢先だ。
「入らせてもらうぞ」
「お待ち下さい!!」
 兵士の抑制も聞かずドカドカと音を立てて入ってくる気配がする。
 兵士は俺の存在を隠すために制止してくれたんだろうが、相手はお構いなしのようだ。
「やべえな、ケルヴァンには隠密に徹しろと言われてるんだ」
 物陰に隠れようと動いたその時だ。
「…ん、軽い?」
 一歩踏み出した時の感触がおかしい。
 正確にいや一歩が早い。
 俺の頭で行なわれている感覚よりも足が速く動いた。
「まさか…」
 指輪を抜いて一歩踏み出す、普通だ。
 指輪を填めて一歩踏み出す、速い。
「こいつは当りだな、っと」
 足音がとうとう武器庫の前に来た。
 扉が開けられると同時に物陰に気配を消して潜む。

「ふーむ、大分いっぱいあるな」
 中々出てくれないな。
 しかも片っ端から漁ってやがる。
 やばい、このままだと俺の方に来る。
 こっそりと部屋を出たいが、扉は閉じられてる。
 このままだと見つかるか…
 止むを得ないな、姿を出して話を持ちかけるしかない。

「よう」
 俺様の前に突然ふって沸いて出た忍者。
「誰だ貴様?」
 すかさず剣を相手の喉元につきつけて牽制してやる。
 男か、つまらん。
「物騒だな、止めてくれ。俺はお前の同志だ」
「その割には見たこともなければ聞いたこともないが?」
 うむ、あかさらまにあやしいやつだ。
「姿をみてわからないか?俺は隠密なんだ。
 ケルヴァンの下で秘密裏に動く忍者なんだよ」
(あながち間違いじゃないな)
「証拠はあるのか?」
「俺の付き添い役がいる。
 表の兵士でもいい、どちらかに聞けばわかるはずだ」
「ランス王、彼は怪しいですが言っていることは本当のようです。
 おそらく表の兵が私たちを止めた理由がそれでしょう」
 五十六の言うことも一理ある。
 目の前の青忍者の目をじっとみる。
「なんだよ…」
 うむ、悪人だ。
 だが、ここは我慢だ。殺したらまずい。
「ちっ、仕方ないな」
 突きつけた剣を引いてやる。
「ありがとうよ」
 男に感謝されてもつまらんぞ。
「なぜ、あなたはここへ?」
「ちょっと装備の補充にね…」
「俺様たちと一緒か」
 つまらん。
「俺の方は用事が済んだから失敬させてもらいたいんだが…」
 何かを訴えるような目でこちらを見てくる。
 男に見られても嫌気しかないぞ。
「俺の存在は秘密でね。この事を知ってるのはあんたらを含めて10人もいないんだ。
 他のヤツラには俺のことは厳守にしておいてもらいたい」
「…ほう?」
 面白いことを聞いた。
 思わず顔がニヤリと笑ってしまう。
「ケルヴァンの命だが…」
「わかったわかった。お前のことは秘密な」
 ふっふっふ、いい情報だ。何かしらに使える可能性があるな。
「ふぅ、それじゃ俺は先に失礼させてもらうぜ。
 こうして遇ったのも何かの縁だ。俺の名は無影、いい仕事ができるといいな」
「俺様はランス様だ。こいつは俺の配下の五十六」
「覚えとくぜ、それじゃな」
 俺様の肩をポンと叩くと青忍者は行ってしまった。
 それにしてもあいつの動きがやけに速かったような。
 せっかちってわけでもなさそうだな。
 敵に回したら厄介そうだな。
「五十六は、あいつの事をどうみる?」
「難しいですね。ただ言えることは…」
「なんだ?」
「彼もまた素直に従っているようじゃありませんね。
 表情の裏に隠した本音と一面がありそうでした」
「もしかしたら使えるかもしれない…か?」
「諸刃の剣ですね」
 ………今、そこまで考えても仕方がないか。
「武器探しを再開するか」
「はい」


 こいつは面白い逸品だ。
 俺の動き、敏捷力を上げてくれるとは!
 毒薬が手に入らなかったのは残念だが、こいつはそれを補ってあまる。
 まずは、この身体の感覚とどこまでの速さを出せるか使い慣れしないとな。
 くっくっくっく、楽しくなってきやがった。
「さて、ぼちぼち仕事も始めるとするか」


【無影@二重影 (狩) 状態:○(回復)  装備:日本刀(籠釣瓶妙法村正)メガラスの指輪(敏捷力上昇) 
行動方針:魔力なしの駆除】

【ランス@ランスシリーズ(アリスソフト) 鬼(但し下克上の野望あり) 状態○ 装備品 リーザス聖剣】
【山本五十六@鬼畜王ランス(アリスソフト) 招 状態○ 装備品 弓矢(弓残量15本)】
【行動方針:武器の入手、モンスは優先的に狩る】
【Strengthened後】



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