残された思い






「やぁ、遊輝」
「誰が遊輝じゃ。 というかお主が何故此処におる?」
 見渡す限りの暗い空間の中、アルと対面するは……。
「そもそも此処は? ナイア、お主の仕業か?」
「強いて言うなら君の中。
 解りやすく言えば、意識を失った君が見る夢。
 そして、僕は只の傍観者。
 面白い現象(モノ)を見に来ただけの野次馬さ」
「…………お主もこの世界におるなら、何とかできんのか?」
「無理だね」
 万が一と思って聞いてみたが、やはり予想通りの返答であった。
「此処は僕の力の及ぶ所じゃない。
 この地に置いての主導権は、僕ではない僕だ。 僕は只のオマケ。
 故に僕が行使できる力は、君よりも劣る、微々たる物だ」
「主導権を握っているお主でも無理なのか?」
「無理だよ。 この地に置いて、僕らは力を大幅に制限されている。
 そして主導権を握っているやつが死ねば、僕もまた消える。
 全く、無貌の神はとんでもない所に迷い込んでくれたものだよ。
 だからこそ期待していたのにね……」
「どう言う意味じゃ……?」
 訝しげな顔をしたアルがナイアに詰め寄ろうとした時、
「さぁ、僕が見たかった奇跡というべき邂逅の時間だ」
 ナイアが大きく手を振りかざし、歓喜ともとれる声を上げる。
「何を言っておる? ……これは?」
 アルの前にゆっくりと光を放ち始める球体が浮かぶ。
「君であって君でない君の一部。
 本来なら起こりえないはずの現象、すなわち奇跡。
 彼の思いか、魂が生したのか、死の間際に起きた不思議な現象。
 僕はその奇跡を見に来た観客。
 主役は……アル、君だ」
 ゆっくりと光の球がアルへと近づいていく……。
 やがて、それはアルの差し出した両手に包まれ、そして彼女の胸の内に消えていった。
「ああ……」
 夢の中だというのに、彼女の両目から涙が溢れ出す。
 彼の込められた思いが、そこで何があったのか、伝えたかった事が彼女の中に次々と浮かび上がってくる。
「バカモノ……」
 全てが伝わり終わった時、彼女は絶えぬ涙と共にそれだけ呟いた。
「さて、僕はもうお邪魔だ。
 去らせてもらうよ」
 言い終えると共に、ナイアは闇の中へ消えていく。
 そして、一人闇の中に佇むアルだけとなった。

「泣いている?」
 アルを背負う葉月は、彼女の肩を濡らす存在に気づいた。
「身体の痛みから……? それとも……」
「……くろう」
「行くぞ、葉月。 目的地までもう少し」
 立ち止まった葉月に、先を行く蔵女が声をかける。
 蔵女の声により、アルの呟きが葉月に伝わる事は無かった。


【アル・アジフ@斬魔大聖デモンベイン(ニトロプラス) 招 状態×(気絶) 装備品 ネクロノミコン(自分自身)】
【伊藤乃絵美@With You〜見つめていたい(カクテルソフト) 狩 状態○ 装備品 ナイフ】
【蔵女@腐り姫(ライアーソフト) 招 状態△(力半減。左肩銃創、呪詛返しの影響で傷口拡大) 装備品(能力)赤い爪、通信機、ネクロノミコン(アル・アジフ)】
【葉月@ヤミと帽子と本の旅人(オービット) 招 状態○(力半減) 装備品 日本刀】



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