隠密行動開始
「こっちに来たらしいぞ!!」
「騒がしいな……」
独房の前を駆け巡る兵士達の声で、双厳たちは目を覚ます。
十兵衛の貧血も大分回復したようだ。
「サンダー!!」
「邪魔だ!! どけぇぇぇぇぇぇ!!」
「ぐああああああぁあああ!!!!!」
響き渡る兵士の声と男と女の声。
「おい、何があったんだ?」
壁越しに尋ねてみるが、返事がない。
「どうなってるんだ?」
「返事どころか、兵士の気配すら感じないが……。
いっそのこと外に出てみるか?」
鉄の扉を前に双厳が刀を構える。
「お前、斬鉄出来るのか?」
「そんなに分厚い扉じゃなさそうだしな……」
「大丈夫か? 俺がやった方が良くないか?」
「気が散る」
「すまん……」
双厳が息を吸い込んで目を瞑る。
カッ!!と目を開けると共に刀を引き抜く。
「ハッ!!」
十兵衛がやってみせた横一文字と同じく居合で挑戦したのだ。
「……」
「……で?」
やったはいいが扉が切れた様子が無い。
「……失敗か」
言いながら十兵衛が扉を触る。
「やれやれ……、と!?」
彼が手をかけた瞬間、扉が音を立てながら真っ二つに崩れ落ちる。
「成功じゃないか」
「酷いな……」
部屋から出た二人は、部屋の前にある惨状を目の当たりにした。
「こっちは、黒焦げ」
「こっちは、顔が歪んでるな」
どうしたものかと二人は、顔を合わせる。
「せっかくの機会だ。
非常時だって事で多少探索しても起こられないだろう」
「そうだな」
二人は、息絶えた兵士の懐から部屋の鍵を漁り盗ると、命と蓉子のいる独房の扉を開けた。
「双厳、十兵衛様!!」
「何があったのだ?」
「見ての通りだ」
二人も何があったのかと不思議な顔をしていたが、
目の前にある二つの死体を見て大体を予測する。
命と蓉子の方もゆっくりと休んだおかげか体調は戻っているらしい。
「声と足音はあっちへ向かっていった。
もしかしなくても侵入者だろうな」
「……追いかけるか?」
「上手くいけば協力できるかもしれないしな」
悪司達が通っていった後には、兵の死体が点々とあったため辿るのは容易だった。
その様子を見ながら、後を辿る四人の一行。
「死ぬか」
「は?」
突然の十兵衛の発言に双厳が何言ってるんだと問う。
「本当に死ぬわけじゃない、死んだ事にするのさ」
「どう言うことだ?」
「いい機会だ。 焼け死んでるのもいる、俺たちの服と交換する。
そうすりゃ、あちらさんは、身元不明で解るのは衣服の一部。
俺たちが巻き込まれて死んだととる」
「なるほどな……。
そして俺達は自由に動ける。
上手くいけば、ケルヴァンってのが無影に対して借りもできるしな」
「そう言うわけだ。
さっ、とっととやるぞ!!」
焼けていない方の兵士の服を剥ぎ取ると四人は大急ぎで着替を始める。
途中、命と蓉子が渋ったが、双厳と十兵衛はその間、後ろを向きながら周りを見張っていた。
着替えながら、各々が使えそうな物はないかと軽く物色する。
「これは使えそうだな……」
そういいながら蓉子が兵士の持っていた銃を奪う。
「命、お前も護身用に持っておけ」
同じく十兵衛が兵士の持っていたサバイバルナイフを命に手渡す。
悪司達が兵士達の目を惹き付けてくれていたのもあり、彼等のその行為が見つかる事はなく済む。
そして彼等の持っていた衣服を死体に被せると……。
「命、炸裂弾を一発くれ」
「どうするんですか?」
「こうするんだ」
玉を切り、中の火薬を死体に被せる。
「後は、頼んだぜ」
蓉子の肩をぽんと叩くと、十兵衛は後ろへ下がっていく。
「なるほどな……、下がってろ」
距離を取り銃を火薬の塊の場所へ打ち込む。
見事、誘発し、爆発と共に彼等の衣服を着た死体は、焦げ飛び散る。
「肉が食べれなくなりそう……」
爆発の瞬間、思わず目を瞑っていた命の第一声がそれだった。
先程よりも酷い光景である。
「長居は無用だ。 追いかけるぞ」
「大・悪・司!!!!!」
男の張り上げた大声が聞こえる。
「近いな……」
「だが、どうするんだ?」
「この場で話かけるのも不味いからな。
ここは隠密の腕の見せ所……、影から追跡して中央から離れた所で交渉を持ちかけよう」
「無事に逃げおおせてくれるといいんだがな」
【双厳@二重影(ケロQ)状態○ 装備品 日本刀(九字兼定) 狩】
【命@二重影(ケロQ)状態○ 装備品 大筒 煙弾(2発) 通常弾(9発) 炸裂弾(2発)サバイバルナイフ 狩】
【柳生十兵衛@二重影(ケロQ)状態△(左腕欠損) 装備品 日本刀(三池典太光世) 狩】
【皇蓉子@ヤミと帽子と本の旅人(オービット)状態○(但し左腕の骨は不完全な接合)
装備品 コルトガバメント(残弾16発)マガジン×2本 クナイ(本数不明)ベレッタM92(残弾15発) 招】
【行動方針:悪司達を追跡、中央から出た所で交渉を持ちかける】
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