ぬいるぐみ大行進






 やぁ、ぼくの名前は、ハタヤマ・ヨシノリ。
 私立エンゲル魔法学院の使い魔科に通うぬいぐるみ科チャック族ハムスター種。
 誰が見たって可愛いと思えるキュートさがぼくのウリ。

   「………………ここは、何処なんだよぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおぉおおお」

 ぼくは、大声を上げて泣き叫んだ。
 だって、さっきまでいた場所と全然違う場所なんだ。
 誰が見たってここは、森の中だ。

 カーッ カーッ カーッ。

 木がいっぱい生い茂って、鴉の鳴き声も聞こえる。

 「おかしい、ぼくは、ビビアンちゃんと錬金術の授業をしていて
 ビビアンちゃんが、薬品調合に失敗してどかーんと爆発して……
 気づいたら、ここにいたわけで…………」

   そうだ、ぼくは夢を見ているに違いない。
 きっと爆発の衝撃で意識を失ってる間の見てる夢に違いない。
 そうだ、ぼくは夢を見ているに違いない。
 きっと爆発の衝撃で意識を失ってる間の見てる夢に違いない。

   カーッ カーッ カーッ、ツンツンツンツン。

 この鴉の声だって……。

 ツンツンツンツンツン。

 「うわぁぁぁぁ、痛い痛い痛い、夢じゃないよ、うわぁぁぁぁああん。
 つつくな、つつくな、あっちいけ、あっちいけぇ」

 しばらくお待ち下さい……。

 「はぁはぁ……」

   やっとのこさで鴉との激闘を終えた。
 あの鴉めぇ、今度あったら必殺エレキバースをお見舞いしてやる。
 でも使うとぼくも電撃で痛いんだけどね……。

 「おかげで余計な体力を使っちゃったよ。 ちょっと横になって休もうっと」

 そうするとぼくは、近くにあった木にもたれ掛かった。

 プニ。

 「む、何かこうぷにっとした柔らかい感触が……」

 プニプニ。

 「うーん、この感触は……」

 プニプニプニプニプニ。

 調子に乗って頭を持たれかける。

 プニプニプニプニプニプニプニプニプニプニ。
 「うぅん……」

 突然、ぼくの頭の上から声が、可愛い声が聞こえてきた。
 恐る恐る上を見ると…………。 超キュートな魔法使いな女の子がいた。
 うーん、ぼくの頭は丁度、この子の胸にあたっていたんだね。

 この子もぼくと一緒に実験に巻き込まれたのかな。
 でも、学校の制服来てないし……。 
 取り合えず、起こした方がいいのかな。

 「おーい」

 余り大きい声で起こすのもアレだし、触ってみたら起きるかもしれない。

   さわさわさわさわさわさわさわ。

 ふとももをさすってみるけど、あんまり反応ないね。
 それじゃぁ、次は……。

 つんつんつんつんつんつん。

 胸を軽くつついてみる。

 「ん…………」

 おお、反応があった。 よしこの調子で。
 つんつんつんつんつんつん、もみ。

 「あっ、ん………。 きゃぁ」

 しまった、起きてしまった。

 「あ、ここは……。 そうだ私爆発に巻き込まれて……」
 「おはよう」
 「え、あ、あなたは……」

   よかった、どうやらぼくが悪戯してたのは気づいてないみたいだ。

 「はじめまして、ぼくの名前は、ハタヤマ・ヨシノリ。
 私立エンゲル魔法学院の使い魔科に通う学生なんだ」

 「は、はじめまして、私の名前は、アーヴィ・アルフォリアです」

 「アーヴィちゃんって言うんだ。
 君みたいな可愛い子にあえて、ぼくはなんてついてるんだろう
 ねぇ、君は何処からきたの?」
 「は、はぁ……。 ママトトっていう王国にいたんですけど、実験の爆発に巻き込まれて……
 気づいたらここにいたんです」

 「ママトト……。 聞いた事ないなぁ。
 でも奇遇だね、ぼくも学校の授業の実験の爆発に巻き込まれて、気づいたらここにいたんだ」

 「ハタヤマさんも私と同じなんですね。
 でも、ここは一体……」

 「森だね」

 「いえ、それは解るんですが…………」

 「うーん、悩んでても仕方ないし、一緒にこの辺りを散策してみようよ。
 さっきからずっと一匹だったんだけど、アーヴィちゃんがいてくれれば心強いよ」

 「クスッ、(悪いぬいぐるみ(?)ではないみたいね)
 そうですね、では、まずは森を抜けてみましょうか」

 「そうこなくっちゃ」

こうして、情けない使い魔としっかりした魔法使いのコンビが結成したのだった。


【ハタヤマ・ヨシノリ@メタモルファンタジー(エスクード):所持品なし、森から出る・アーヴィについてく】
【アーヴィ:魔力増幅の杖、まずは森から出る】



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