Pursuit






「きゃあ!!」
突然のスタングレネード=閃光弾の襲撃に三人の目は眩む。
「くっ!?」
目を眩むと同時にケルヴァンが手に魔力を込め詠唱を始めると
すると直ぐさま辺りが深い霧に包まれ始める。

「ぐおお!?」
運悪く同じタイミングで飛び出ていたゲンハと直人も同じだ。
冥夜をとっ捕まえようとケルヴァンたちの前に飛び出たのはいいものの目が眩み前が解らない。
「ど、どうなってんだよこいつは!!」
挙句の果てにケルヴァンが周囲を霧で包むものだから、二人の行動は完全に封鎖された。

そして最後に目を瞑って飛び出した玲二達だが、目を開けるとそこは深い霧に包まれていて
さらに霧の中の人影は五つと増えている。
(しまった!!あの人は一流の魔法使いでもあったんだ!!)
沙乃は自らの認識不足を後悔した。
純粋な魔力ではヴィルヘルムや初音に劣る。
だがケルヴァンはその分この島の結界の構築を始め術のエキスパートなのだ。
自分達新撰組やドライを死人として蘇らせたレベルの高さ。
そしてとっさの状況に強い機転の良さ。
彼らはケルヴァンを侮っていたのを認識させられた。
(い、一体どれが!?)
四人は悩んだ。
ケルヴァンの位置はしっかり把握したが、その近くに同じようなガタイの影が二つ浮いて出た。
二人の少女の影は解りやすかったが、閃光の衝撃でよろめいたりしたら三つとも十分にありえる範囲だ。
確率1/3のでかい博打である。
(ともかく、少女の方の確保は頼む!!)
玲二は小声で沙乃に話すとリックと共にケルヴァンらしき人物を捕獲することにした。

「二人とも私の手につかまれ」
この二人をここで失っては後々尊人に合わせる顔がなくなる。
篭絡することも難しくなるだろう。
二人の手を掴むと奥のバルジャーノンの置かれた場所へとケルヴァンは移動しようとする。

「頃合だな…」
スタングレネードの後、慌てることなく様子を伺っていた無貌の神が純夏の前に飛び出す。
「いかん!!」
二人の手を離し腰につけたロングソードを抜くとケルヴァンは剣に魔法を込め飛び出す。
「邪魔をするな!!」
無貌の神の手に握られた『空虚』がケルヴァンに振るわれる。
ケルヴァンはそれを魔法を込めた剣で迎え撃つ。
「どけ!!我が欲しいのはその後ろの少女よ!!」
目の前にあるのに手が届かないもどかしさに無貌の神に怒りが募る。
(後ろの少女!?魔力保持者ではないのになぜ!?)
目の前の襲いくる影の発した言葉に疑問を抱きながらも受け流す。

鈍い音とともに一人の影が倒れる。
玲二が鳩尾に鋭い一撃を加えたのだ。
「くそ!!こんだけ近づいても顔が見えないのかよ!!」
心なしか周囲の音も聞こえづらい。
リックが倒れた男を肩に担ぐ。
「だが、外れだとしてもこの施設内にいたんだ。利用する価値は十分にあるはずだ」
代わりにリックの戦斧を受けとると玲二は彼を扇動して脱出へと行動をうつす。

「ケルヴァンさん!!」
ケルヴァンの後方で純夏が叫んだ。
「静かにして」
ミュラが純夏の後ろにつくと彼女の口を塞ぐ。
「ごめんなさい、後で説明するから」
そして彼女の首筋に当身をくらわせて意識を失わせる。

「なにをする!?」
剣士の感で背後に迫る者へ向けて、冥夜は刀を振る。
(しまった!!失敗した!!)
かわしたものの彼女を確保しようとした沙乃はこれ以上は無理そうなのを悟る。
(玲二達は!?)

「おい、ゲンハ!!ゲンハ!!」
死にかけの相棒の名前を必死に呼ぶ直人。
「もしかしてやられてしまったんじゃないだろうな」
見ると影が倒れ、それを担いで逃げさろうとしてる二つの影があるではないか。
「まさか中央のやつが!?」
俺とゲンハは魔力保持者だといつぞやの甘ちゃんが言っていたのを思い出す。
ならばゲンハがその中央の人間に連れ去られてもおかしくない。
「これで貸し借りはなしだからな!!」

「純夏、無事か!?」
冥夜が声を張り上げる。
だが純夏の声がない。
「ケルヴァン殿、純夏が連れ去られた!!」
「なんだと!?貴様の狙いはこれか!?」
ケルヴァンが目の前の相手に問いかける。
「おのれ!!我が狙っていた器を!!」
だが無貌の神は彼の予想とはかけはなれた台詞を上げると同時に
彼との斬り結びを止めて、取り付かれたような速度でこの場から脱出してしまった。
「逃げるか!!」
ケルヴァンが手で印を結ぶと周囲の霧が晴れていく。

「くっ!!やつらの目的は一体何だというのだ」
霧が晴れた時、ケルヴァンと冥夜の目に映ったのは互いの姿しかなかった。
「純夏、無事でいてくれ…」
純夏の身を案じる冥夜。
「すまない、私の判断が足りなかったようだ…」
騒ぎに気づき、やってきた警備兵へとケルヴァンは後始末と中央から神風の召集を命じる。
私が霧の魔法を使ったせいで純夏が攫われた。
ケルヴァンは責任を感じていた。
「どこの誰だか知らないが、借りは返すぞ…」

それぞれ反対側から出た玲二・リックコンビと沙乃・ミュラコンビ。
「霧が晴れた!?安全な位置に行くまでは振り返るな、このまま走るぞ!!」
玲二を前にしてリックたちは施設から離れて行く。
遅れて施設から出てきた直人。
「これはゲンハに渡した銃じゃないか」
遠くに人を担ぎ走り去っていく二人組の姿がある。
「世話焼かせやがって!!これっきりだからな!!」
酔いの頭痛がまだ消えきらない身体に鞭打ちながら直人は追跡を開始した。

「ごめんなさい、こっちは失敗したわ」
一緒に出てきたミュラへと沙乃が話す。
「仕方ないわ。あちらは成功したみたいだし、今はここから離れるのが先決よ」
純夏を担いだミュラは休むことなくそのまま沙乃と共に走り去る。
やっとこさ施設から出てきた無貌の神はそれを見ると怒りに震え上がる。
「我の獲物をよくも横取りしおって!!逃がすか!!」
無貌の神もまたミュラと沙乃の追跡を開始した。

【御剣 冥夜 マブラヴ age 状態 ○ 持ち物 刀 狩】
【ケルヴァン:所持品:ロングソード 地図 状態△(魔力消耗気味) 鬼】

【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:鉄パイプ・包丁 シグ・ザウエル】
(目的:ゲンハの救出)

【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態○ 所持品:S&W(残弾数不明) 
 コルトガバメント(残弾数不明)手榴弾x2  暗視ゴーグル 食料・医薬品等 戦斧】
【リック@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:ゲンハ(まだゲンハとは気付いていない) 食料・医薬品等】
【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態×(裂傷多数、背中に深い刺し傷、かなり危険な状態、気絶)
 所持品:暗視ゴーグル 火炎瓶x3】
【原田沙乃@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼(現在は狩) 状態○ 所持品:十文字槍 食料・医薬品等】
【ミュラ@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:食料・医薬品等 長剣 地図 純夏】
【鑑 純夏 マブラヴ age 状 ×(気絶)持ち物 ハンドガン 装填数 20発 狩】
(目的:逃走後、合流)

【岬今日子(無貌の神)@永遠のアセリア(ザウス)招 状態○所持品 永遠神剣第六位『空虚』(雷撃2発分の魔力)】
(目的:鑑純夏の確保)

(『千載一遇x3』後)



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