トラフィックス 2nd






「けっ!このオンボロトラックが!!」
ゲンハは忌々しげに、しかし楽しそうに早くも動かなくなったトラックのフロントガラスを、
鉄パイプで叩き割って行く。
直人はといえば、アルコールが今になって回ってきたのか、木陰でゲーゲーと胃の内容物を吐き散らしている。
「おめぇもやんねぇのか?」
ゲンハはいい汗かいたとばかりに鉄パイプを直人に差し出す。

「いい、これから歩きだろ…」
直人はゲンハが座っていたトラックの助手席を見る、シートには僅かながらも血がついている…。
(全くよくやるよ…)
「無駄に暴れるのは好きじゃない、ましてこんな体じゃな…それに見ろよ」
直人は顎でゲンハに背後を見るように示す、そのまま振り向いたゲンハの目に映ったのは、
中程度の広さのガレージだった。
さらに目を凝らすと何人かの兵が見える、何かの拠点であることは間違いなかった。 「お互い、トラックより人間の方が壊しがいがあるんじゃないのか?」
「あたぼうだぜぇ!」
舌なめずりをしながらゲンハと直人はそっとガレージへと近寄っていく、二人の手には包丁と、
それから背中には鉄パイプがあった。
「女はいないみたいだぜ」
「いたらお前が犯せばいい…ただしあの女だけは別だぞ」
歩哨が大あくびをした瞬間だった、山猫のような身のこなしで飛び出した直人が、
背後から歩哨の首を包丁で切り裂く、そしてそこからが惨劇の始まりだった。


それからしばらく経過して、ようやく丘を超えたミュラたち一行、
丘を越えた彼らが見たもの、それは半壊状態の武器庫だった。
4人は慎重に、しかし素早く丘を下って武器庫へと接近する、その動きはたった今出会ったばかりとは
思えないほど連携が取れていた。

4人は散開し、同時に他方向から武器庫に侵入する。
人気は無かった…どうやらここを破壊した何者かは立ち去った後らしい…。
リックは自分の足元の死体を眺める…メッタ刺しにされた挙句、頭を割られている…。
(もしかして、と思ったが…こりゃ俺たちの敵だな)
少なくともこんな殺し方をする連中とは仲良くはなれそうになかった。

「リック!この人まだ息があるわ!」
そこにミュラが一人の兵士を担いで戻ってきた、しかし兵士の胸は血で染まっている、意識こそあるようだが
もはや長くはないだろう。
「おい、何があった!誰にやられた!」
リックは問いかけつつも、そっと手持ちのペットボトルの水を兵士の口に含ませてやる。
水を飲んだおかげで意識が安定したのだろう、兵士がゆっくりと息を吐く。
玲二と沙乃もそこに合流し、本格的な尋問が始まろうとしていた。

「あれは恐ろしい…人殺しとただ破壊を心から楽しんでいる、そんな人間の目だった」
まず開口一番、兵士はしみじみと感想めいた言葉を口にした。
「でしょうね…少なくとも沙乃たちの味方になることはなさそう」
死体はどれも不必要なまでに痛めつけられている、その戦闘スキルまでは伺えないものの、
ここを襲った連中がいわゆるサディストであることは明白だった。

彼の話によると、一人は囚人服を着た傷だらけの男、そしてもう一人はこれも傷だらけのアフロへアの男。
彼も一撃で致命傷を負ったものの、その際階段から植込みに転げ落ちたおかげで、
止めを刺されることはなかったのだという。
そしてガレージがもぬけの空だとわかると、彼らは腹いせにそこら中を壊して去っていったということだった。
たったのこれだけじゃ喰いたりねぇな、などとボヤキながら。
そこまでの一部始終を兵士は苦しい息の中でリックらに証言する。
「武器はどうなったんだ?ここは武器庫じゃないのか?」
玲二の言葉を聞いて、兵士は皮肉げに笑う。
「おまえらも…武器がほしかったのか?でも無駄足だったな、武器はもうすでに別の場所に移してある」
その言葉を聞いてミュラとリックが顔を見合わせる、自分たちの行動が原因だったことは間違いない。
「どこだ?」
「そこまでは知らない、本当だ…新しい武器庫の場所は…限られた幹部クラスにしか知らされていないんだ
 本当だ…」

そこまでいい終わったところで、がくがくと兵士の体が痙攣を始める。
「おい!まだ聞きたいことが」
しかし玲二の声もむなしく、それ以上兵士が口を開くことはなかった。

「悪く思うな、俺たちは生きなくちゃならないからな」
玲二は死んだ兵士の遺品を物色し始める、ここは現在では単なる連絡拠点に過ぎなかったようだ。
その証拠に確認できる他の死体は明らかに武器を持っておらず、身包み剥がされた形跡もない。
「こいつは何だ?わかるか?」
リックが何かのケースを持って玲二の元にやってくる、この兵士を見つけた植込みの中にあったのだという。
「えっと…暗視ゴーグルか、こいつは使えるな」
ケースの中を確認して玲二は頷く、夜間の移動や攻防を考えた場合、これほどの必需品はない。

引き続き兵士のポケットを探り出す玲二、結局見つけたのは拳銃が1つ手榴弾が2つに、スタングレネードが1つ
そして彼個人のものだろうシステム手帳。
几帳面な性格だったのだろう、予定などがびっしりと書きこまれている、それらの検証は後に回すとして…。

「何かしら?」
手帳備え付けの地図を見たミュラが、怪訝な顔をする。
地図自体はすでに彼らが入手していたものと相違は無かった、ただしこちらの方は赤ペンで色々と書きこまれている。
その書きこみの中の一つに、何も説明がされてないまま、2重丸で囲まれている個所があったのだ。
地図を見る限りそこは何もない森のど真ん中だった、しかしいかにもな感じで2重丸で囲まれているあたり、
何かがあるのだろう。
「こんなところに何があるっているんだ」
「もしかしてここが新しい武器庫かしら?」
「いや、それはないだろう…わざわざ移動させるにしては地理的に近すぎる」
4人は現在位置とその2重丸地点の距離を確かめる。
「歩いて30分ほどだ…行ってみるのも悪くはないかもな」

【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態△(裂傷多数、背中に深い刺し傷、やせ我慢しています)
 所持品:鉄パイプ・包丁・火炎瓶x3】
【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:シグ・ザウエル】
(何らかの武器、アイテムを手に入れている可能性があります)

【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態○ 所持品:S&W(残弾数不明) 
 コルトガバメント(残弾数不明)手榴弾x2 スタングレネードx1 暗視ゴーグル】
【原田沙乃@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼(現在は狩) 状態○ 所持品:十文字槍 食料・医薬品等】
【ミュラ@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:長剣 地図】
【リック@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:戦斧】

(『満月の夜』〜『機神立つ』の間です)



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