Skull guys






「酒は傷に触るぞ、やめとけ」
戦いを終えて船工場に戻ったゲンハと直人は傷の手当てをしたり、そこら中を物色したりと体勢を整えつつあった。
工場は広いわりには大した物はなかったが、それでも収穫がなかったわけではない。
その僅かな収穫を拾い集めつつ、彼らは古ぼけたガレージの中で、小型トラックを見つけたのだった。

ガレージの中、ゲンハは予備のガソリンを空き瓶に注ぎ、せっせと火炎瓶を作って行く。
そして直人は何もせず、ただ空き瓶の中にわずかに残ってた酒を1つの瓶に集めて水で割り、
それをちびちび煽るという何ともセコイ真似をしていた。

「大体それ飲めるのか?酒は酒でも工業用か消毒用アルコールなんじゃねぇのか?」
火炎瓶を作りながらゲンハは直人に忠告する。
アルコールは血管を拡張させ、出血を止まりにくくさせる。
事実、ふさがりかけていた直人の傷口から、また血が滲み出してきていた。

「どうせ死ぬんだ」
釘に貫かれた身体がしくしくと痛む、傷もそうだが、このままだとどうせ数日後には破傷風で御陀仏だろう。
だが、それでも構わないと思う。
「生きて帰っても、とどまっても死…か」
だったらしたい放題してから、くたばるべきだろう。
ほんの少しだけメロウな気分の直人、彼とて24時間女のケツのことばかり考えているわけではなかった。
サカリがついているわけではない、ただ欲望に忠実なだけだ。
(思春期のガキじゃあるまいし…)

そう思いながら酒をまたちびりちびりと煽る直人。
「いいかげんにしやがれ」
見かねたゲンハが直人から酒ビンを取り上げる、その瞬間直人の瞳が憤りに満ちる。
「俺に命令するな!!俺に命令していいのは紳一様だけだ!!」
「そのシンイチだがなんとか」
「様をつけろ」
直人のツッコミに、ゲンハは仕方ねぇなと言わんばかりに付け加える。
「へぇへぇ、その親愛なるシンイチサマはいったいどこのドイツでオランダなんでしょうねェ」
ゲンハの嘲りには乗らず、直人はぽつりと呟く。

「俺の助けなんぞ求めちゃいないさ、今ごろここにいれば誰かのアナルにでもブチこんでるんじゃないか」
直人、古手川、木戸…彼らと紳一との関係は忠誠こそ絶対だったが、それだけがすべてというわけでもなかった。
揺るぎ無き主従はあれど、どちらかといえば同志に近い存在だった。
無論、救えるなら救う、それが勤めだ、だが紳一はきっとこう言うだろう。
俺に構わず好きなだけ犯せ、と。
(だから有り難く好き放題させて貰いますよ)
何度も考えていることだが、どうせ遅かれ早かれ死ぬのだ。

直人はゲンハから酒瓶を取り替えすと、またちびりちびりと煽り出す。
今度はもうゲンハは止めなかった。
「ケッ!死にたきゃ好きにしろ、そのかわりくたばったら置いていくぞ」

「お前こそ…お前の方が重傷だろうが?」
応急措置こそ施してはいるが、ゲンハの背中の傷はその程度では如何ともしがたかった。
「うるせぇ!テメェの身体の心配だけしてろ!!…つつ、大声ださせるんじゃねぇ!傷が痛むだろ!!」
「だったら俺にも構うな…そのかわり」
ああそうだ、まだ死ねない…不思議なものだ、達観しているにも関わらず、
その一方で自分は生きることを望んでいる、もしあの女が先に死んでいたら自分はどうなるのだろうか?
そう、憎しみこそが、欲望こそが生への原動力…いくらとりつくろうとも、
それは全ての生命体にとって共通なのではないか?
「アイツだけは俺に譲れ…他の女は全部くれてやる、いいか必ずだぞ」

直人がまた再び憎悪をチャージしてる間にも、ゲンハは火炎瓶や鉄パイプ、包丁だの物騒なものを
次々と荷台に詰みこんでいく。
だが肝心のトラックはボロボロで今にも壊れそうだ、エンジンをかけると黒煙がもくもくと立ち上った。
無言で直人がハンドルを握る。
「コラ!飲酒運転は免停だぞ、俺も色々やってきたがな…免停は恥ずかしいぞぉ」
直人はそのままアクセルを踏む、トラックはガタピシと異様な音を立てながらのろのろと動き出す。
「俺の前に立ちはだかる奴が悪い」
その言葉を聞いてゲンハがケケケケッと笑う、ツボに入ったのだろう…違いねェ違いねェと何度も頷く。
「おだててもマイレージは貯まらないからな」
「トラックで貯まってたまるかよ、それに俺じゃない、俺たちだろうが、派手にやろうぜ派手に、よ…ククククッ」

【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態△(裂傷多数、背中に深い刺し傷、やせ我慢しています)
 所持品:鉄パイプ・包丁・火炎瓶x4】
【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:シグ・ザウエル】
(トラック搭乗、おんぼろの上に飲酒運転なので遠くまではいけません)



前話   目次   次話