悪魔、墜つ。






カレラは思っていた。

「………ッ!」

篭絡させる自信はあった。

「うあっ!」

幾ら強く、逞しい魂を持っていたとしてもそれは所詮定命の者の話だ。

「いっ、嫌ぁ……!」

それが男性であれ女性であれこの体と性技で夢中にさせ、その精力を全て奪い取る。
今までだってそうして来たし、今回もそうなる筈であった。

「ゆっ! 許して! 許してぇ! もうイキた……ヒィッ!?」

ならば何故、自分はその篭絡させるべき相手に哀願しているのか。

熱い掌が、胸を激しく揉みしだく。
冷たい指先が、秘所の突起を柔らかく弄る。
吐息が優しく耳朶に吹きかけられたかと思えば、
股間には肉棒が発情期の獣以上に貪欲に突き立てられ、掻き回される。
恋人が交わすような口付けの後には、
同じ口に奴隷を扱うかのように手荒に白濁液を注ぎ込まれる。
まるで、年齢も性癖も全く異なる複数の男から際限無く責められるような限りない苦しさと快感。
そんな中響く悪司の優しく、甘く、無慈悲な声。

「……まだギブアップには早えぜ、カレラ……これから本物の天国と地獄、
 一辺に見せてやるんだからな」
「だっ……駄目ェ! こ、これ以上されたら、アタッ
アタシ、本当に……!」
「全部、俺に任せりゃいい……ほらよっ!」
「アウウッ!」

一体、この相手は何故未だに余裕を見せているのか。
確かに悪司のモノは立派だ。大きさも、固さも、熱さも。
だが、この程度ならばカレラとて未経験では無かった。
むしろ比較すれば、ランスの方が立派かもしれない。
では、自分はテクニックだけで翻弄されていると言うのか?
歓喜と悲鳴が入り混じった叫びを上げつつ、カレラは自分の意識が混濁してゆくのを感じていた。


例えば、ランスにこういった質問をしてみる。
「貴方にとってセックスとは?」
そうすると、こういった返事が返ってくるだろう。

「そんなの決まってるだろうが。
 気持ちいいから、ヤる。ヤりたいから、ヤる。
 おまけに俺様に抱かれれば女の子もうはうはだから最高だぞ」

では、この質問を悪司にしてみるとどうなるか。

「(考え中)……改めて聞かれてもなぁ。そーだな……
 相手を騙す時とか、拷問の時とか、交渉の時とか、部下への褒美とか、
 仲間に引き込む時とか、女に言う事聞かせる時には大抵使ってるな……
 ま、後は色々だな。惚れた女を抱く時にはまた話が違うけどよ」

こう返ってくる。
つまり、悪司にとってセックスとは快楽以外での用途が主なのである。
それゆえに、必要とあればそれが例え老婆であろうと誰だろうとモノを立てる事ができるし、イカせる事ができる。
更に極端に言えば、悪司は多くのセックスにおいて自らの快感を考えていないのである。
カレラにとって不幸だったのは、彼女は主に召還してきた相手が多かれ少なかれ
自分の快楽の為にカレラを抱こうとした事である。
その際、カレラは召還者の命令は聞きつつも主導権自体は彼女にあった。
まあ、中にはそうでない者もいたし、かつてカレラが天使に捕らえられた時の
ように強制的に犯された事もあるにはある。
だが、それらの場合はカレラは際限無い性欲と体力で最終的な主導権は自分の
ものにしてきたのである。
では、主導権を握られ、かつ体力的にも劣らない相手の場合は?
その答えがこの現状であった。


「あー……! あー……!」
もはや、何度イカされたのかすら分からない。
多分二十回は軽く越えているだろう。
既にカレラの眼の焦点は酔ったように合っておらず、
その口からは言葉にならない『あー』という音が漏れるだけである。
「どうしたってんだ、カレラ?」
からかうように言いつつ、悪司が対面座位の姿勢で下から突き上げる。
「あっあっあっ!」
一瞬カレラの声の感覚が短くなる。
「はー……あー……あー……!」
そして、速度が戻ると再び声も戻る。
「おーい、聞こえてるかー?」
「あっあっあっあっあんっ!」
今度は回転を加えながら動く。
こくこくこく。
言葉にはならないが、首を上下させて悪司に応えるカレラ。
「おし、そんじゃ頼みがあるんだけどよ……実は、俺達はあのヴィルって野郎を倒すつもりだ」
言葉は聞こえる。でも意味は分からない。
「……協力してくれねえか?」
何を言っているのかは分からない。
でも、これを受け入れてしまうと『何となくマズい事』になりそうな気がする。
ふるふるふる。
左右に振られる首。
「そうかい」
悪司のあっさりした返事。そして、
「……………よっ!」
「ッ!」
カレラの奥にどすんと突き込まれる肉棒。
「駄目か?」
「あ……ケ……」
「ケルヴァンって大将が怖いのか?」
「あっあっあっ!」
怖いわけじゃない、ただ、下手に怒らせたらまずいかなーって、
そうなのかな?
違うのかな?
分からない、気持ちいい、わからない、きもちいい。
「………?」
ふと、悪司の動きが止んだ。
カレラの両肩を抱き締め、頭をぽんぽんと父親のように叩く。
「安心しな、そん時は俺が全部護ってやるからよ……」
ああ、駄目だ。
アタシ、安心している。
コイツへの『安心』はコイツへの『服従』だ。
奥にコツンコツン当るのが気持ちいい。駄目、魂、コイツの、
抱き締めてた指が背中をなぞりつつ降りてくる。
冷たい、熱い、熱いのはアタシなのかな。ああ、駄目、聞こえる、声が、声が。
「……お前は俺のもんだ、カレラ」
そんな、そんな事無い、アタシはアタシ。悪魔、誰のものでも、
「アウッ!」
いい、お尻、グリッってされるのが凄くいい。
汗と汁でヌルヌルだから奥まで入っちゃう。いい、お尻気持ちいい。
何を考えていたんだっけ? そう、お尻だけじゃなくて、前に前に、
「あー……あー……!」
凄い、まだどんどん激しくなる、いい、いい、どうでもいい。
駄目、何が? 何がだろう。わかんないや。凄くいい。
おまんこも、お尻も、おっぱいも、全身が凄くいい。
それ以外の事は、もう、どうでもいい。

「……いいな?」

―――こくり。
最後の絶頂を感じ、意識が失せる寸前。
カレラは自分の首が上下に動くのを感じていた。


【山本悪司 @大悪司 (アリスソフト) 招  △(腰痛) なし  
       行動目的:ランス(名前、顔は知らない)を追う・本拠の捜査】
【カレラ@VIPER-V6・GTR(ソニア) 鬼?招?(悪司に篭絡)
        状態○ 所持品:媚薬(残り1回分)】



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