突き動かされし慟哭
「そんなに動いたら楽に殺して上げれないよ?」
あっけらかんとした口調で、ななかは命へと凶悪な爪を繰り出していた。
「……ねぇ、ちょっと本気なの?」
説得を試みながら、命は爪を交わしつづける。
柳生の者として、鍛えてきた体術が彼女の役に立つ。
ななかのスピードはすさまじいが、避けるだけなら何とかなりそうだ。
だが、ざっくりと裂かれた背中が痛みを増していく。
このまま続ければ、間違いなく命は追い詰められ殺される。
(何とかこの大筒を放つ機会があれば……)
しかし目の前には、休むことなくななかの爪が幾度も振り下ろされる。
「あっ!?」
命が後ろへ下がろうとしたその瞬間、彼女の足が木の根につまずいた。
「よしよし、これで楽にしてあげるね!」
彼女が倒れると同時にななかの爪が振り上げられる。
(十兵衛様……双厳!!)
振り上げられた爪を見た命は死を意識した。
パァン!!
一発の銃声が森に響いた。
「あぐぅぅ……!?」
命の目に右肩を抑えるななかの姿が映る。
「大丈夫か!?」
ななかを挟んで命の対面の木々の間で蓉子が銃を構えていた。
「忘れてた、親切な仲間が他にもいたよね」
右肩を抑えながら、蓉子を睨みつけるななか。
(今なら!!)
蓉子の作ってくれた隙を利用して、命は大筒を構えた。
「!? させない!!」
気付いたななかが咄嗟に彼女へ向けて再び爪を振り上げる。
「こっちを忘れてもらっては困る!!」
ななかが命へと意識を戻すと同時に蓉子が再び銃を撃った。
「ぐっ……、この!!」
背中に銃弾を受け、一瞬ひるむななか。
「点火!!」
その一瞬の隙をついて、大筒から通常弾が放たれた。
「うあああぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!」
ななかの腹が拳大に大きく焼け爛れる。
肉の焦げた臭いが辺りに漂った。
常人よりも強力なボディだからこそ死なずに済んだのだ。
「あんただけでもォォォォォォ!!」
激痛に耐えながらななかが腕を振り上げる。
「くそ!!」
蓉子が続けて銃撃を2発背中に入れるも、ななかの動きは止まらなかった。
腹に受けた痛みが勝っていたのだ。
カーン!!
振り上げられたななかの腕が一本の刀によって押しとめられる。
「またせたな……」
命の後ろから双厳の手が伸びていた。
ななかは、手を引き後方へ下がり距離を取るも、後ろには蓉子が銃を構えており、
真正面には、大筒を持った命と双厳がいる。
「どういう状況下は解らんが……、敵であるなら容赦はしない」
刀を構えて双厳が前へ出る。
「ううう……」
3:1、しかも自分は大きくダメージを受けている。
「ん? なんだ?」
ふと双厳を含め、四人はここでやっと気付いた。
日が急速に落ちていた事を。
「なっ!?」
「覚えてなさい!! 絶対にあんた達は後で殺してやるから!!」
あっというまに目の前に広がる暗闇。
それに乗じて、ななかが走り去っていく。
「逃げたか……?」
闇に乗じて、襲われるかもしれない。
そう感じた三人は、再び日が戻るまで気を解く事はなかった。
【双厳@二重影(ケロQ)状態○ 装備品 日本刀(九字兼定) 狩】
【命@二重影(ケロQ)状態△(背中に裂き傷、疲労) 装備品 大筒 煙弾(2発) 通常弾(9発) 炸裂弾(3発) 狩】
【皇蓉子@ヤミと帽子と本の旅人(オービット)状態△(左腕骨折)
装備品 コルトガバメント(残弾16発)マガジン×2本 クナイ(本数不明) 招】
(行動目的 ヴィルヘルムを締め上げる)
【FM77/ななか@超昂天使エスカレイヤー(アリスソフト)狩 状態△(背中に銃痕、腹に火傷とダメージ) 所持品?】
(行動目的・全てに対して復讐)
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