招かれざる者たち






 自らが捜し求める、覇王足りうる力を持つ者を育て上げる――
 ケルヴァンの主な目的はそこにある。
 人間という者は不思議なもので、己の身の危険を感じると、通常ではありえない程の力を出すことができる。
 この島で必死に生き残ろうともがくその中で、眠れる獅子が目を覚ますことを、彼は大いに期待していた。
 招かれし者――魔力を認められ、この島に召喚された者――
 招かれざる者――魔力を持たないのにも関わらず、召喚された者――
 とりわけ、魔力を持たずして召喚された者に、彼の興味は注がれる。
 この島で魔力も持たない者が生き残るのはほぼ不可能であろう。
 ……島が創られた時、この島は魔獣という副産物によって薄く広く覆われた。
 それに加え、招かれし者を保護し、招かれざる者を駆除することを命令として与えられた者たちもおり、それらの戦闘能力は魔獣をも凌ぐ。
 ……この絶望的に、圧倒的に不利な状況で、死線をさまようことを強要された者たち――
 彼らがこの島で生きる力を身につけた時――それは覇王の卵の誕生の時とも言えよう。

 と、使い魔から意識を離し思案に耽っていたケルヴァンの元に、ヴィルヘルムからの連絡が届く。
『召喚された招かれし者の中に、幼い子供がいる。早急に保護せよ』
 とのことだ。
 その子供とやらは、よほど大きな潜在的魔力を持つのだろう。
 結界内でその魔力を引き出す訓練を施すものと見られる。
 ……子供に興味などないのだがな――
 ……直々に出向くのも、たまには悪くない。
 そう思うとケルヴァンは、立ち上がった。

【ケルヴァン、朝倉ゆうなの保護へ向かう】



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