Red Tint(外伝)






ここで奏子の気絶中の出来事をあえて書くこととさせていただく。

激しい嵐の中、校舎の屋上…全身を血に染め倒れ伏す初音、そして奏子はその相手、
銀髪の僧形の男の手に落ちてしまっていた。
「お願いよ、その娘にだけは手をださないで!!」
いつもの毅然とした態度とはまるで異なり、傷だらけの身体で這いつくばり、
なりふり構わず哀願する初音、それを見て僧はにやりと笑う。
「ほう…それほどまでにこの娘が愛しいか?、ならば態度で示してもらおうとするか」
初音はその言葉を聞き、まるで金縛りにあったかのように動けなかったが、
やがて姿勢を正すと、そのまま、跪き両手をついて頭を床につけたのだった。
「銀…お願い、かなこを放して」

「しろがね?しろがねだと…口の利き方がなっておらぬな」
銀と呼ばれた男は奏子の喉をギリギリと締め上げ、初音に無言の催促をする。
初音の唇が血が出るほど固く噛み締められるが、やがて、
「にいさま…お願い…いたします…どうかかなこを…」
「にいさま…くくくっ、兄様か、久々の響きよ、そうか、そこまで愛しておるとはな
 あの日、人間なぞ全て滅べばいいとまで言い放ったお主が! 未練にもこの百年で、
 人の心を思い出したか…くくく、ははっ、はっはっは」
銀はこれ以上愉快なことがあるかといわんばかりの笑いっぷりだった。
「よかろう、なればその命しばらく預けておいてやる、面白い座興がまた増えたわ、主はまだまだ強くなる
 失望させるでないぞ」
そう言い残し、銀は去っていった。
そしてそれから数日後、初音は旅に出ると言い残し、奏子の前から姿を消したのだった。

終了



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