彷徨
「くっ・・・。」
全身が何ともいえない脱力感に苛まれていた。
寝起きのような、ぼうっとした意識を渾身の力で集中させる。
「天音?悠姉さん?百合奈先輩?」
「大輔・・・ちゃん・・・。」
薄く立ち込めてる霧の中から悠姉さんの声がした。
「悠姉さん、大丈夫?」
「私は平気よ・・・でもあとの二人は・・・?」
姿を現した悠姉さんは、さっきの疲れはあったが怪我などはしていないようだった。
(そうだ、天音・・・。)
辺りを見回して初めて気付く。
「えっ?ここは・・・?」
鬱蒼とした木々が辺りを覆いつくし、まるで富士の樹海か何かのようだった。
「大輔ちゃん、これって、一体・・・?」
「やはり・・・これは呪いの・・・」
百合奈先輩が苔むした木の後ろからゆっくりとした動作でこちらに歩いてきた。
「どう考えても・・・俺たちの住んでる町じゃないよな・・・。」
これは一体どういうことだ?
俺たちに何が・・・。
「それより、橘さん・・・」
悠姉さんに言われて再び気付いた。
「天音!」
今だ小さな池のそばに倒れ付していた天音を抱き起こして声をかける。
すると、大きな瞳をゆっくりと開いて一言。
「おはよぉ・・・大輔ちゃん・・・。」
ガクンと一気に力が抜けた。
いつもの天音の反応に安心を覚える。
「良かった・・・。元に戻ってる・・・。」
「えっ?どうし――!?」
言いかけて天音もこの異常事態に気付いたらしい。
「大輔ちゃん!?ここどこっ!?」
「いや、俺に訊かれても俺も解らない・・・。」
俺たちは天音にこれまでの事の顛末を話した。
「そんな・・・・・・。」
自分が信じられない、そんな風に天音は自分を抱きしめる。
「とにかく、誰か人がいないか探してみよう。」
正直、誰かがいるとは思えない。
だが、こんなジャングルでただそこにいるのは精神的に耐えられなかった。
「行こう。」
【麻生大輔・橘天音・君影百合奈・篠宮悠:状態=良】
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