WAR HEAD
激しい剣戟の音が森の中で聞こえる。
一人はその小柄な身体に似合わぬ大斧を操る少女、ライセン、そしてもう一人はいわずと知れた鬼畜王ランスだ。
しかし、戦いは終息を迎えようとしている、ライセンの力量ではランスには及ばない。
それに自分たちが知る最強の剣士であるリックの敗北も、ライセンの精神に微妙な影を落としていた。
そしてついにランスの刃が、ライセンの手から得物を払い落とす、さらに間髪入れずその切っ先が
ライセンの喉元に付きつけられた。
「がははは!勝負ありだな」
豪快に笑うランス、だがランスはそれ以上は何もいわず、ただひたすら油断なく剣を構えて、
微動だにしなかった、まるで誰かを待っているかのように。
そして…。
「ライセン!間に合わなかったか」
ようやくランスの待ち人である、ミュラとリックがその場に到着したのであった。
緊急事態に手をこまねくミュラら2人の足元に矢が突き立つ、ランスの背後では五十六が油断無く弓を構えていた。
(ここまでか…ここで終わりか…ナナス)
無念の表情の2人だったが…。
「落ちつけ、ここで決着をつけるつもりは無い、ただ武器は収めるんだ、いいな?」
「何をいまさら…あなたの言うことなんて信じないわよ!」
「イニシアチブはこっちが握っていることを忘れるなよ…」
暫しの沈黙の後、やがてミュラは静かに武器を収め、リックと2人後ろ手に両手を組んだ。
「で、どうするんだ?…さっきみたいにムリヤリ犯すのか?」
観念したような口調でリックが嘯く、だがランスはにやりと笑って首を横に振った。
「いや、お前らにはこのまま暴れまわっていてもらう」
「それはどういう…」
「俺様だって使い捨てはごめんなんだよ・・・俺様にとってやりやすい状況になるにはお前らのような奴らが
必要だからな」
「全てが終わって、それでお互い生きてたら・・・」
ミュラとライセンは身構える・・・。
「その時こそやらせろ・・・3Pじゃ」
まぁ、半ば予想できていたことだが・・・2人は呆れ顔で顔を見合わせた。
五十六との出会い、そして間髪入れぬ戦闘が、ランスにいつもの落ち着きと計算高さを取り戻させていた。
ここでこの女を倒すのは簡単だ、しかしそうなれば残った2人は自分1人を確実に標的として、
死ぬまでつけ狙うようになるだろう・・・それは非常にやりにくい事態といえる。
ならば、因果を含めた上で泳がせる方が得策と判断したのだ。
ここには彼が頼みとする仲間もいなかったし、
それに…やはりリックと生き写しの男を無下に殺したくはなかったのだ。
「もちろん只とは言わないぜ…命以外にもくれてやるものがある」
そう言ってランスはライセンに1枚の紙を握らせた上で彼らの元に返してやる。
「これは…地図?」
紙の内容を見て、ミュラたちは目を丸くする…たしかにそれは島の詳細な地図だった。
「私たちに暴れさせておいて漁夫の利を得ようってこと?」
「ああ…それに豚は太らせてからの方が美味いんだぜ」
ミュラにはこの男の魂胆が少しだけ読めたような気がした…つまり自分たちを散々暴れまわらせておいて、
そして時が来れば、そのまま尻馬に乗って反旗を翻すもよし、逆に自分たちの首を手土産に、
上層部に取り入るもよし、というところなのだろう…、気に食わないが、
それでも今はこの男の掌で踊るしかないのだ。
「例えば私たちが裏切って、アンタに叛意があると密告したらどうするのよ?」
その時はその時だよな、とランスはにやりと笑う。
「でもな、俺様には分かるんだ…お前らのような奴らが、アイツと仲良くできるはずがない」
「なにもかもお見通しって所みたいね」
「さて、と、ゆっくり後ろに下がるんだ…いいか…」
ランスの号令に合わせて、3人はゆっくりと後退していく……そして距離が開いたところで
ミュラたちは一気に加速し、一目散にその場を離れた。
ランスはミュラ達が見えなくなるのを確認してから、ふーと溜息をついて崩れるようにへたりこむ。
瞳を閉じれば未だに赤い死神の残像が浮かんで消えない。
「次戦えば・・・確実に俺様は負けるな」
圧倒していたように思えたが、実際は綱渡りの勝利だった…赤い死神と真剣勝負など命がいくつあっても足りない、
模擬戦ですら5回に一度、一本とれればいいほうだ、つまり次に勝つには、4回死ななければならない。
「ツキはまだ俺様にあり…か、で、これでいいのか?」
ランスは背後の五十六に背中越しに問いかける。
五十六の弓がミュラとリックだけではなく、自分にも向けられていたことをランスは悟っていたのだ。
「私はシィル殿やマリア殿のように貴方の手綱をうまく操ることは出来ない、だからこうさせていただく」
「何より貴方は貴方だけの命ではない、王とはそういう者だ・・・したがって王として生きるのならば、
貴方と、そして私が生き残るための最善の方法を取ってもらう・・・それがいやならば」
五十六は改めて弓をランスに向けて引き絞る。
「玉座を捨て、今ここで一個人として私と戦っていただく…答えを聞かせていただこうか?」
選択の余地はなかったが、本来ここで引き下がるようなランスではない…。
しかしこの男、決してわからず屋ではない、受け入れるかはともかく、むしろきちんと人の話は聞く男だ、
度量も狭くない。
「わかった・・・あいつら俺様がいないと何も出来ないからな、このまま女獲が島の酋長ってのも悪くはないが
しがらみは無視できないよな」
この豪胆な男の唯一の弱点は孤独に耐えられないということくらいかもしれない。
ともかくランスはひとまずハーレムの野望は捨て、そして五十六も最初から答えがわかっていたかのように
平然と弓を収めたのであった。
そしてママトト武将たちは、
「あいつの言うことは信じられるか?」
リックの言葉に応じるライセン。
「あれは誰にも従わない、飢狼の目をしていたわ・・・思惑はともかくあのヴィル何とかに、
大人しく仕えるような男じゃない」
ライセンの分析に頷くミュラ。
「それに敵の敵は味方って言うわ・・・あいつらが一枚岩じゃないってことが分かっただけでも収穫よ」
次いでミュラはリックの顔を見る…自慢の愛剣を折られてしまったのだ…明るく振舞ってはいるが、
その心中は察して余りある。
「ミュラが気にする事は無い…だが、もし次があれば…俺は絶対に勝つ!それだけだ」
その静かな態度になみなみならぬ決意が見て取れる、これなら大丈夫だ。
「さて、それじゃ精々暴れ回るとするか!!」
「あくまでも私たちの目的はナナスとアーヴィを見つけることよ、それを忘れちゃだめよ」
【ランス@ランスシリーズ (鬼(但し下克上の野望あり)) 状態:○ 装備:リーザス聖剣】
【山本五十六@鬼畜王ランス (招) 状態:○ 装備:弓矢(弓残量16本)】
【ミュラ@ママトト (狩) 状態:○ 装備:長剣】
【ライセン@ママトト (狩) 状態:○ 装備:戦斧】
【リック@ママトト (狩) 状態:○ 装備:なし】
(ママトトチーム、地図を入手)
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