戦士として……
「……ここは?」
目を覚ました凛々子が鴉丸兄妹達の方を見て尋ねる。
「むっ!?」
何かを感じ取った羅喉が険しい表情で彼女の方を見つめる。
「あの、その、わ、私何か悪い事でもしましたか?」
羅喉の険しい表情に、思わず恐れをなしてしまう彼女だったが……。
「避けるんだ!!」
突然、凛々子の前に、羅喉が叫び飛び出す。
それと共に彼女の後ろの壁が突き破られ何かが飛び出してくる。
「はっ!!」
そのまま前方へ身を進め、羅喉は、飛び出して来た物体へと羅喉掌底を叩きつける。
「ギャン!!」
甲高い、犬の泣き声のような悲鳴をあげて、飛び出して来た生物は、吹き飛ばされて道に転がった。
「狼!? いや、人のような姿……、まさか人狼か!!」
見ると道に転がった生物は、羅喉の言う通りに狼の頭に鋭い爪と体毛、人に近い姿をした狼……人狼であった。
「こ、これは!?」
凛々子がその光景を見て驚きの声を上げる。
「お兄様、私も手伝います!!」
「この程度なら大丈夫だ。 雪、もしもの時に彼女を頼む!!」
雪に負担をかけたくまいという兄の気持ちである。
家の周りから漂う獣の殺気の数を羅喉は正確に把握する。
「1、2、3……、全部で三匹か!!」
先ほど打ちのめしたのを入れて全部で四匹。
「家の中にいるんだ!!」
横に座る凛々子へ向かって言うと、羅喉は家の外に飛び出た。
(私が囮になって引き付けねば!!)
そのまま空いた穴から家の外へ羅喉は飛び出る。
羅喉が家へ出た瞬間、屋根上から一匹の人狼が彼に向かって鋭い爪を掲げて飛び降りてきた。
「くっ!?」
身を捩じらせ、狼の爪を交わすと共に拳を振り上げ、一撃を浴びせる。
「ウギャウ!!」
突き上げを顎に食らった人狼は、そのまま上に打ち上げられ、鈍い音と共に地面に落ちた。
だが休む間もなく、今度は角の陰から二匹目が姿を現し、彼へ向かって飛び出してくる。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
羅喉は、両手に気を溜め、構えを取る。
「閃真流神応派奥義!! 飛 翔 天 極 波 !!!!」
両手に集まった気が波動となって放たれ、直撃した人狼の頭が消し飛ぶ。
身体のみとなった人狼は、血飛沫を上げて地面に横たわる。
「後一匹!!」
羅喉は、最後の殺気を放つ人狼の方へと振り向く。
「グゥゥゥゥ……」
三匹の仲間がやられた人狼は警戒するように構えを取った。
一方、家の中に残った雪と凛々子は……。
「これは一体……?」
突然の出来事の連続に凛々子の頭の中は混乱していた。
(私は、メッツァーと戦って破れて……、そして……、
捉えられ、戒められようと言う時、光に包まれて……)
そこからの記憶はなく、気づいたら彼女はここにいたのだ。
「多分、私達と同じだと思います」
混乱する凛々子を前にして、雪は、説明を始めた。
自分達が光に包まれて、この地へとワープした事。
そして、彷徨う内に光と共に上空から現われた凛々子を助け、今現在にいたる事を。
「私の名前は、鴉丸雪。
今私達のために戦ってくれている人は、私のお兄様です」
凛々子を落ち着かせるようにと、ニッコリと笑顔を向けて雪は、自己紹介をした。
「あ、はい。 私の名前は……」
そこで凛々子は詰ってしまった。
(私は、どっちなんだろう……。 私は、七瀬凛々子。
けど、今の私の姿は、力は、クイーングロリアの騎士、スイートリップ……)
「……どうしたんですか?」
言葉に詰ってしまった凛々子に、心配の言葉をかける雪。
(今の私はどっちなんだろう……)
一人の少女としての気持ちと、誇り高き戦士としての狭間に彼女は悩んだ。
「ふぅ」
最後の人狼を倒し終えた羅喉がため息をつく。
「さて、雪の所に戻るとするか……」
最後の一匹が、慎重に、粘ってきた為、元いた家から少し離れてしまっていた。
羅喉は、早足で家の方へと戻ろうとしたその時。
「きゃぁ!!」
雪のいる家の方から彼女の叫び声が聞こえた。
「まさか!?」
慌てて、羅喉は家へと駆ける。
雪が凛々子に言葉をかけた時、最初に倒された人狼が、
苦しみながらもゆっくりと立ち上がっていたのだ。
「しまった!! 仕留めきれてなかったのか!!」
羅喉の目にも立ち上がる人狼が見える。
「間に合うか!!」
持てる限りの力を振り絞って全力で駆ける羅喉。
だが、人狼は、穴の向こうに見える二人の少女を見つけると、
彼女達に向かって突進を繰り出した。
「雪ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
羅喉が叫んだ。
狼がまさに襲い掛かると言うその瞬間。
凛々子は、雪の傍に置かれてあったグスタフを咄嗟に掴んだ。
(戦わなければならない……、なら今の私は……、私は……!!)
「クレッセント・ハーケン!!」
リップの握るグスタフから、光の斬撃が放たれた。
斬撃は、そのまま人狼を真っ二つに切り裂く。
「凄い……」
それを見た雪が、驚きの声をあげる。
「これは……!?」
家の外から、羅喉の目にも人狼が真っ二つにされる姿が映った。
「大丈夫か!?」
家の中に入った羅喉は、即座に雪の無事を確認する。
「はい、この方が守ってくれました……」
「そうか……。 良かった二人とも無事で」
雪の頭を撫でると、羅喉はリップの方へと振り返る。
「ありがとう。 私の名は、鴉丸羅喉。
此方は、私の妹で雪と言う」
「お兄様、私はもう自己紹介しましたわ」
「む、そ、そうか……」
慎ましい二人を前にしてリップは口を開く。
「私の名前は……、クイーングロリアの騎士、スイート・リップです」
【鴉丸羅喉@OnlyYou-リ・クルス-(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:なし 行動目的:雪を護りぬく】
【鴉丸雪@OnlyYou-リ・クルス-(アリスソフト) 招 状態○ 所持品:なし 行動目的:兄についていく】
【七瀬凛々子(スイートリップ)@魔法戦士スイートナイツ(Triangle) 招 状態○(軽傷有り) 所持品:グレイブ】
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