偶然の見えざる手






と、いうわけで九郎を抱えて途中妨害も無く、中央に戻ったドライだったが、

「おい、ケルヴァンいるか?」
中央要塞内部、ドライはケルヴァンの居場所を尋ねてまわる、
本来こんなことは他の連中に任せておくべきなのだが…。
「ケルヴァン?しらねーなあ、おーいみんな知ってるかぁ」
だらしなく制服を着崩した闇魔法学会の男がヤニ臭い息を吐きながら同僚たちに呼びかける。
一様に知らない、知るか、姉ちゃんお酌とかいう言葉が次々と返ってくる。
万事につけてこんな感じなので、まるで任せることが出来ない。

数だけ多い闇魔法学会の連中のほとんどがろくでなしだということは薄々気がついていたが
まさかこれほどだとは…ドライは溜息をつかずにいられない。
医務室のメイドたちは男の傷を見るなり、目を回して倒れてしまうし、その上ベッドはサボりどもに占領されている。
力ずくで追い出せば、後でメイドたちがそいつらにいじめられる事になるのが目に見えるのでそれも出来ず。
結局、ドライ自ら手当てをする嵌めになったのだ。

このまま地下牢に放り込むのも手といえば手だが、重傷者にする仕打ちとも思えない。
とにかくあんな連中に預ければ、後で何かあったとき、こちらの責任問題になりかねない。
さて、どうするか?と頭を抱えるドライの目の前を、その時、一人の少女が横切っていく。
獣のような長い耳が特徴の少女だ。

「おい!アンタ見かけねェ顔だが一体誰だ!」
「私はアリアと申します…ケルヴァンさんの招きを受けこの地に参りました」
その答えを聞いて頷くドライ、長い耳…もしかしたらと思って声をかけたが、ビンゴだったようだ。
「そうかそうか、じゃあお仲間ってことだな、あたしの自己紹介は後でするとして、一つ早速頼まれてくんねぇか」
そう言うなりドライは凶アリアの両手の中に九郎の身体を放り渡す。
「そいつをケルヴァンの奴に渡してほしいんだ、それじゃあな」
それだけを言うと、ドライはもう用は無いといわんばかりに、その場から去っていった。

そして後に残された凶アリアだが…
「一体今のは…ともかく奏子さんのお部屋にまずはお運びしましょう」
困惑を隠せないまま、九郎の身体を抱えて奏子の部屋へと戻るのだった。

【凶アリア@デアボリカ(アリスソフト) ? 状態○ 所持品:トンファー 行動方針 奏子の護衛】
【大十字九郎@斬魔大聖デモンベイン(ニトロプラス) 状: △ (意識不明・1通りの手当ては終了)
回転式拳銃(リボルバー)『イタクァ』、自動式拳銃(フルオート)『クトゥグア』、残り弾数不明(それぞれ13発、15発以下】
【ドライ @ファントム・オブ・インフェルノ (ニトロプラス) 状 ○    所持品 ハードボーラx2 鬼、】



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