誓い新たに
放送を告げる音が、中央へ向かう僕達の前に鳴り響いた。
『HAHAHA!! グッモ〜ニング、エブリバ……』
間違えるはずもない、校長の声だ。
「ハタヤマさん……、これは……」
「うん……」
その一言で十分だった。
やがて、放送が鳴り終わり、告げられたメッセージがぼくらに残された。
「どう思います?」
「目的は、そのまんまだと思うよ。
でも幾つかおかしい部分はあるよね」
「私もそう思いました……。 とくにあの……」
「うん……」
『そこで余たちは、この危険性も考え、部外者を排除する事にしたのだ』
メッセージの一文がぼくの頭に浮かび上がる。
きっとアーヴィちゃんも同じなんだと思う。
「あの時、アイさんは、こういいました……
『従わないと言うのならば……』と」
「覚えてるよ。
でも、それだと放送の内容と食い違うよね」
「はい」
「でも、その後のも気になるんだ」
「『一部の行き過ぎたもの』ですか?」
流石、アーヴィちゃんだ。
ぼくが気になった部分を直ぐに指摘してくれる。
「あの後、校長は、僕達を助けてくれた。
アーヴィちゃんの傷まで治してくれてね……。
もし、彼が最初から排除する気だったんなら、そんな事はしないと思うんだ」
「つまり、ハタヤマさんは、アレは一部の行き過ぎたもののせいじゃないか、とも思ってるんですね」
「そうなるのかな……」
「……ハタヤマさん、あの人に会って何をするつもりなんです?」
アーヴィちゃんは、少し言い難そうな口調で切り出して、ぼくに聞いてきた。
「今回の事を、校長が何を考えてるのかを、全部を聞くつもりだよ。
その上で、ぼくが何をしたらいいのか、何ができるのかを決めたいと思うんだ」
(そして、校長を倒さなきゃいけないと解った時は、ぼくがやらなきゃいけないんだ)
そう心の中でぼくは、付け加えた。
「私もお手伝いさせてもらっていいですか?」
「え!?」
突然のアーヴィちゃんの一言に、ぼくは吃驚した。
てっきり、アーヴィちゃんは、元の世界に帰りたいんだと思ってたからだ。
それにぼくは、中央に行ったら、まずアーヴィちゃんを元の世界に返すのを最優先したいとも思っていた。
「元の世界へは?」
おそるおそるアーヴィちゃんに聞いてみる。
「元の世界には帰りたいです。
でも、私は、全てを見捨てて一人だけ元の世界に帰るなんてことはできません。
帰る時は、ハタヤマさんも、召還された人たちもみんな一緒に帰りましょう」
ニコッとぼくへ向かって微笑みかけるアーヴィちゃんの笑顔がまぶしかった。
「中央に行くって事は、今以上に危険な事になると思う。
ぼくのしようとしている事は、それよりも危険になるかもしれない。
それでも……」
「解ってます。
それに中央へ向かわなければ、どの道、敵とみなされるんです。
それなら、前へ向かって、歩いていきましょう。
それにハタヤマさんと一緒だから、ここまで来れたんだと思います。
だから、私はハタヤマさんの手助けをしたい。
それじゃ、いけませんか?」
強く、まっすぐな彼女の瞳。
今までぼくに足りてなかったものだ。
そうだ、この笑顔を、瞳を、ぼくが守り抜いていかないといけないんだ。
そう強く再認識させられる。
「ありがとう」
これだけ言い返すので精一杯だった。
本音を言うとアーヴィちゃんだけは、直ぐに元の世界に返してあげたい。
でも、彼女は、きっとそれを納得しようとはしないだろう。
だったら、早く帰れるようにできるようぼくが努力しなくちゃいけない。
「さぁ、行きましょう」
アーヴィちゃんが、手を差し伸べてくれる。
不釣合いながらも、ぼくは手を取って、
「うん!!」
強く返事を返した。
新しい決意と、もう一度彼女を守るという誓いを固めて、ぼくたちは中央へ向かう足を再び再開した。
【ハタヤマ・ヨシノリ@メタモルファンタジー(エスクード):所持品なし、状態○ 招 行動方針:中央へいって全てを見極める】
【アーヴィ:所持品:魔力増幅の杖、リンゴ3個 状態○ 招 行動方針:ハタヤマと共に】
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