井出商店・前
極秘裏のうちにF&Cへと移籍した夜開発チームは外部からの引抜とは思えないほどの待遇で迎えられた。
すなわち、旧夜開発チームはFC04として各部署のゲーム開発の助っ人としての遊撃手的な配置となり、
開発チームは事実上夜開発チームからFC04へ衣替えという形である。
F&C社屋内の応接室にてFC04を前にして笹岡は今後の業務の簡単な説明をしていた。
「とりあえずは現在マスターアップ寸前となってる時の森の物語…
これのゲームバランスの調整から入ってもらいたい。」
「なにぶんうちのRPGは、評判が悪いからね…
とにかくマスターアップぎりぎりまでゲームバランスの調整をして欲しい」
「それが終わったら、たぶんPIA3のゲームシステムと、CG作業に移ってもらうことになるとおもう」
「何か質問は?」
そこで、HIROは一歩前に出る。
「我々への制約などはいかなるものですか?」
「それについては心配無用、普通の正規社員とまったく同様の扱いとなる。ただし給与に関しては既に説明済みだが、通常の10%引きぐらいとなるが、我が社側の保険だと思ってくれ」
「他には何か無いですか…?」
旧夜開発チームは沈黙する。
「ではとりあえず本日のところはここまでですね…それではまた」
そして、笹岡が応接室を出る。
「これからが、始まり…か」
F&C社屋から出た夜チーム一行は電車に揺られ、ある所へと向かっていた。
「と…F&Cに来たのはいいんですけど、どんな行動方針でいきましょうか…」
かれんが吊り革につかまりながらとなりで同様に吊り革に掴まっているHIROにたずねた。
「F&C自体に不満をもつF&C社員も少なくは無いからなぁ…アリスとの待遇の違いってのをちらつかせるだけでも相当効果あるんじゃないかな」
「そですね、特にゲンガーの不満はよく聞きますし…」
ぷしゅう…
圧縮空気の音ともに電車のドアが開く。
「あ…つきましたね…」
一同電車を降り、歩きながら更に話を続けた。
「あー…あとは時森のゲームバランス調整でも一発かましてやってはどうかな…とか思うんですけど」
「夜が来るのエキスパート並ってどうかなっ?」
笑いながらむーみんが言う。
「…笑えませんって…」
HIROは言葉を続ける。
「でも、いいかもしれませんね」
「っと、このビルですね」
全員が全員にやけ顔となる。
そのビルこそPIAキャロットが入っているビルであった。
「制服もえ〜」
その後ある男はこう語った。
「俺らの後ろに座った数人組みの男たち…萌え萌えうるさすぎ」
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