町の外にて






海平とマスオの母はとりあえず空いていたビジネスホテルの部屋を取った。
一日中歩き回って、手に入った情報はほとんどない。
今家族たちの身に何が起きているのか、彼らが無事に生きているのかすらも、全くわからない。
「とにかく明日も続けましょう。もしかしたら、何かを知っている人に会えるかもしれません」
海平はマスオの母にそういい残すと、足取りも重く自分の部屋へと入っていった。
マスオの母の部屋は一階上である。
荷物を床に降ろし、着物の帯を緩めてベッドの上に腰を下ろす。
思うことは一つだけだった。

(マスオ……サザエさん……タラちゃん……どこにいてはるんや……今、何をしてはるんや……)

着替える気にも、風呂に入る気にもならない。
そう言えば、午後になってからは水しか飲んでいない。ルームサービスでも頼むべきだろうか。
そう思っていたちょうどその時、部屋のインターホンが鳴った。おそらく海平だろう。
マスオの母は急いで扉を開けた。
そして、来訪者の顔を確認するよりも先に気を失った。


「気がつきましたか!?」
目を覚ましたマスオの母の前には、彼女と同じく着物を着た女性が立っている。
マスオの母は手を後ろ手に縛られている。
だが闖入者は、強盗というにはどこか様子がおかしかった。
「あなた、マスオさんのお母様らしいですな」
「ど、どうしてそれを……」
「ある人に教えてもらいましてん」
どこか余裕のあるように見えるのは、その協力者の存在のせいだろうか。

「わ、私をどうする気ですん?」
「安心してください、あなたを殺すとか、どうこうする気はありません。
あなたは大事な人質です」
「人質? そ、そもそもあんたは……」
「申し送れました。私は波野というものです。お会いするのは初めてでしたな?」
「あ……」
言われてみれば、ノリスケに似ている部分がある気がする。
「あなたも息子さんを心配して上京したんでしょう? 私も同じです」
「せ、せやったらなんでこんなマネを?」
ノリスケの母は自信ありげに含み笑いをして言った。
「私はあなたたちとは違います。あくまでも、うちの息子だけ助けたいんですわ。
他の人たちなんかどうなってもいい。マスオさんたちだけやない、あんたも、海平さんも、みんなどうでもいい。
やから私は、あなたたちみたいな悠長な真似はしませんわ。悪の親玉と戦います」
悪と戦う? 一体何を言い出すのか、この女は。

しかし次の彼女のセリフは、それ以上の驚きをマスオの母に与えた。

「私はあんたを人質に取って、このホテルに立て篭もります。
そして、日本政府を相手に交渉します。ノリスケの生きてる町で何が起きてるのか明らかにして、
私の息子だけでも保護するように!!」

【五日目 午後3時】
【会場外】

【磯野海平】
状態:健康
装備:なし
武装:なし
思考:
1・波平たちの行方を捜す
※殺し合いに参加していません

【マスオの母】
状態:健康
装備:なし
武装:なし
思考:
1・波平たちの行方を捜す
※殺し合いに参加していません

【ノリスケの母】
状態:健康
装備:なし
武装:なし
思考:
1・マスオの母を人質にホテル立て篭もる
※殺し合いに参加していません



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