君の手を握りたかった






参った。
食料が底を尽いてしまった。
オヤジとオフクロが家に帰ってこなくなってから丸二日、いつかこうなることはわかっていたけどうちには
思ったよりも蓄えが無かったみたいだ。
今までは殺し合いにビビって家から一歩も出なかったんだけど、さすがにもうそんなことは言ってられない。
このままじゃ殺される前に飢え死にだ。

だけど、やっぱり外に出るのは怖い。
この四日間、学校にすら行かなかったくらいなのだ。
オヤジとオフクロももう殺されているのだろう。ましてや俺は最初に波平おじさんに集められたメンバーなのだ。
オヤジたちよりも殺される可能性は高いと言えるんじゃないだろうか。
けど、さっきから腹は鳴りっぱなしだし、もう限界だ……
駄菓子でもいいから食いたい、でも……

そうだ、変装すればいいんじゃないか!!

俺は家中をひっくり返して、使えそうなものを探した。
そして黒いビニール袋を頭から被り、目の部分に穴を開けて覆面を作った。
これでバッチリだ。少なくとも、これで誰も俺を見ても俺だとはわかるまい。
そこが一番重要なんだ。

俺はオフクロの財布からお金を失敬してポケットに入れると、急ぎ足で家を出た。
さっさと食いたいものだけを買って帰ろう。
俺は全速力で道を走り―――

すさまじい音と熱が俺の体を襲った。

(やったな……)
西原は爆弾で吹き飛ばした人間の元に駆け寄った。
子供のようだったが、見るからに怪しい奴だった。何しろ頭に覆面をつけていたのだから。
おまけにやけに焦ったように走っていた。人を殺して逃げるところだったのかもしれない。
(こんな奴が、磯野や中島や橋本を殺すんだ……俺は絶対に許さないぞ!!)
そして誰を殺したのかあらためようとした西原は、覆面の下に守ると決意した親友の顔を発見したのだった。

【四日目 午後五時】
【町の北部】

【橋本  死亡確認】
残り35人


【西原】
状態:健康
装備:支給品一式
武装:小型爆弾×4
思考:基本・カツオ、中島、橋本を生き残らせるために他の参加者を殺す
1:呆然



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