危険な天使と暴力教師
殺し合いの会場内、その東エリアにあるとある悪魔寄りのシスターの住む協会のある街を模した街エリアに、一人の参加者が支給されたバックを確認していた。
まるで戦争・軍隊物の映画に出てくるようなハートマン軍曹並のドスの利いた凶悪な顔、きているノースリブのシャツの上からもわかる厳つい筋肉質の肉体。
そして、この参加者が女性であるとわかるふくよかな胸。
彼女の名前は力丸亜砂美。全国の中・小学校に経歴や名を偽り体育教師として赴任し、運動のできない児童を訓練と称した体罰の荒らしで18人の児童を殺害した凶悪犯である。
「へぇ、のろめがねも来てんのかよ。」
力丸はバックに入っていた参加者名簿の中に記載されていた嘗ての教え子。沢本いずみの名を見つけ、しばし興味をもった。
力丸の最初の殺人は、のろめがねこと沢本いずみと一緒に力丸の気弱で運動が出来ないと訓練ターゲットにされていたのろみつあみと言われていた少女を訓練の指導に熱が入りすぎて、竹刀で撲殺してしまった。
沢本いずみは力丸に反抗したその少女を見捨てたのだ。
「あいつはこの殺し合いには絶対勝てないね。」
記憶にある自分に怯え、震えている小学生時代のいずみの姿を想像し、ほくそ笑む力丸。
彼女はタイニーによりこの殺し合いに参加されられる前は、闇のシンジゲート毒壺の会の主催する世界最強殺人鬼決定戦に参加する予定だったが、予期せず唐突に此処に拉致され、殺し合いを強要されている。
普通なら憤りを感じるだろうが。力丸に殺し合いに参加させられているという事に対する怒りはなかった。
殺し合いなど、ここにくる前からやろうとしてる。
己に支給された物を確認し、力丸は顔に凶悪な笑顔を浮かべた。
「…殺し合いねぇ。そんなの言われるまでもねぇ。殺し尽くしてやるよ、そして…」
この場にいるであろう元教え子の顔を想像する。
「のろめがね、貴様には数年分の訓練予定が貯まっているぞ。…首を洗ってまっていろ。」
クックックックッ。不気味に笑う力丸。彼女は確認した支給品の一つ、黄土色の液体の入った注射器についていた説明書を見る。
「…ほぉ、これはなかなか。」
己に支給された注射器の液体の説明をよみ、これはなかなか自分向きだと喜ぶ力丸、そのとき突然。
「すいませんが。そこの貴殿、いや、貴女ですか。」
突然力丸は背後から話かけられる。
驚いて背後を振り返ると、力丸から10m離れた所に一人の巨大な男がたっていた。
いつの間に接近したのか、少し肝を冷やした力丸は話しかけてきた男を観察する。
純白のローブをきて、体がどこもかしこも太く、それが男の体をごつく見せている。
特徴的な顔は、パーツが全て角張っており、かなり無機質な印象を感じる。
男は最初、力丸を男と勘違いしたようだ。その事には力丸自体慣れているので気にしない。
「なんだ、あんたは。」
男に問いかける力丸。
「…私は法王庁所属の異端審問官モズグスともうします。私はデズモンドと名乗る人物に殺し合いを要求されました。…その首輪を見るに貴女も同じですね。」
よく見ると男の首にも力丸と同じ様に首輪が填められていることから、男も参加者だと分かる。
「…だからどうした。」
この殺し合いという状況下、わざわざ話しかけてきたと言うことは何かあるのか、そう思い力丸は返事を返す。
「…そうですか……では!!殺し合おうではありませんか!!」
男が叫んだ瞬間、力丸は身の危険を感じ、鍛え込まれた体のスペックをフル稼働し左に素早く転がり込む。
次の瞬間、モズグスの口から放たれたオレンジ色の炎で力丸がたっていた場所を包む。
「ぐあぁ!!」
回避しても避けきれなかった炎の熱に叫びながら何とか体制を立て直す力丸。
「ほぅ、この浄化の炎を避けますか。貴女はなかなか素早いですね。」
見るとモズグスの姿は先ほどの姿から変化し、異形の物に変貌していた。
背中から生えている純白の翼。ローブから覗く手足や顔面に現れた生々しい灰色の鱗。
「化け物……」
力丸もモズグスの姿に驚きを隠せずにいた。
「馬鹿な!!化け物だと!!断じて否!!」
力丸の化け物発言に顔を歪め怒鳴るモズグス、心なしか鱗で覆われた顔が歪んでいる。
「これは我が信仰心の証!!神から授かりしこの肉体を!!化け物だと!!それでもこの試練に撰ばれた者か!!」
さっきまでの冷静な様子とは打って変わって怒鳴り散らすモズグス、その言葉にある懸念を感じ、力丸は訪ねた。
「試練ってのはなんだ。」
そうとう力丸にモズグスは怒りの感情からうって変わって誇らしげな表情で話し始めた。
「私はこの神の試練に参加する前に邪教の徒と戦っていましたが、私は神に力を授かりながら一度邪教の手によって天に召されました。しかし!!!慈悲深くも神は私を蘇らせてくれたのです!!一度神のお与えになった天命に失敗してしまったのに!!…神はなんと慈悲深いのでしょう!!この蘇った肉体は試練を果たせという神の意志!!すなわち!!殺し合えと!!」
「なっなに!!」
力丸はモズグスの言葉に混乱する。彼の話だとモズグスは一度死に、そして蘇ったという世迷い言をいい、この殺し合いが神の試練だと言っている。
「死者の蘇りという奇跡!!この見たこともない神秘的な町並み!!これらが神の奇跡です。
…あのデズモンドと名乗る男の殺し合い、この殺し合いは神の御心にて行われている試練なのです!!!この命は神に再度与えられたもの!!その神が殺し和えというならば!!我々はひたむきに!!ただ黙々と!!殺し合うべきなのです。」
モズグスはその鱗だらけの顔を歪め、心の底から感じているであろう神に対する信仰心に涙していた。
……狂ってやがる。
力丸はそう感じた。…この化け物はこの殺し合いを神の与えた試練だと信じ、盲目的に殺し合おうとしてる。確かに力丸も殺し合いにのるつもりだが、それは自分が生き残る為だ。…この男は、自分の命を、引いては自分のために殺しあうのではなく、自信の信じる神とやらの試練として殺し合いをしている。
先程の蘇り発言も気になるが、今は自分の命を守る事に集中しなきゃこの異能の化け物に殺されるだろう。
力丸がそう考えた時、モズグスは一際大きな声で怒鳴る。
「神の試練!!ひいては私の信仰の為!!死んでください。!!」
モズグスの声に呼応するように、背中の翼の色が白から灰色に、柔らかい羽から堅い鱗に代わる。
力丸が避ける間もなく、巨大な拳のように変化した翼の一撃を受ける。
「ゴッドパンチ!!」
チープな技名を叫びながら放たれた翼の拳の一撃に、力丸は避ける間もなく吹っ飛ばされる。
(がはぁぁ!)
多少はガードした力丸、しかし勢いは止められず、凶力な一撃で側にあった協会に吹き飛ぶ。
協会内に吹き飛ばされた力丸は、激痛の感じる腹部の痛みを我慢し、状況を確認する。
先程の強力な一撃を喰らい、何とか骨は折れていないがダメージは少なからず受け、協会内に吹き飛ばされた時についた無数のすり傷が痛む。
「…あの…やろう。…ごぼぉ。」
モズグスへの怒りの呟きをはくが、喉からせり上がってきた血によって最後まで言えなかった。
(あの野郎…かなり強い。見掛け倒しじゃねえな。……仕方ねぇ。これ使うか。)
力丸は何とか身につけついたバックから先程確認した注射器を取り出し、腕に迷うことなく注射した。………このままではどっちみちあの狂った化け物に殺される。
(鬼と出るか…蛇がでるか。)
一方協会の外に佇むモズグスは、力丸にとどめを刺そうとその巨体を揺らし協会に歩み寄っていた。
やろうと思えば浄化の炎で協会事燃やすことも出きるが、神の家である協会を燃やすことはモズグスの考えに反し、また、協会を破壊してしまった事を深く反省していた。
(あぁ!!神よ!!神の家である神聖なる協会に傷を!!…この罪はあがないます!!お許しください。)
厳密にはこの協会は悪魔よりの協会なのだが、心の中で神に対して懺悔しながら、モズグスは力丸が吹き飛んだ破損した協会の入口に手をかけ、薄暗い協会内に入ろうとした。そのとき!!
ガジャア!!
「ギォオオ!!」
協会内から巨大な斧のような物が切りかかり、モズグスの巨体を吹き飛ばした。
「ぐおぉわ!!」
吹き飛ばされたモズグスは体制を整え、何事かと協会の方をむき、一瞬愕然とした。
其処にいたのは、モズグスとは違うベクトルの異形と化した力丸だった。
元々筋肉質だった肉体が、上半身が異様に肥大化したオレンジ色の筋肉に覆われ、血走った目でモズグスを見ている。
その両手には、巨大なギロチン刃をくくりつけられた断頭斧が握られている。
「なっ!なんと!!」
変わり果てた姿の力丸に驚くモズグスに、再度巨大な断頭斧を振り上げ斬りつけようとする力丸。
「オオオオオオオ!!!」
雄叫びと共に振り下ろされた断頭斧が、モズグスの体に振り下ろされる。その一撃を翼の拳でガードするモズグス。その場に金属音が響き渡り、モズグスの足元のコンクリートがめり込む。
「ぬぐぐぐぐぐぐぐ!!」
「オオオオオオオ!!!」
モズグスは斧を受け止めた翼をふりほどき、拘束を逃れた。
「おお!!貴女にも神の加護が授けられたのですね!!」
先程殺そうとした相手に興奮気味に話しかけるモズグス。しかし力丸の異常は何ら神とは関係ない。
力丸に支給された注射器、中に入っている液体の名はドーピング・コンソメ・スープ。
とある成功を呼ぶ料理で有名なレストランのオーナーシェフが、数え切れないほどの違法薬物と食材を綿密なバランスで7日間煮込み、食の千年帝国を作るための料理として制作された究極のドーピング料理だ。
その効果は通常の薬物の数倍。さらに血液から注射し食べる事で更に10数倍、強力な筋肉増強効果があるスープだった。
力丸はさらに自身に支給された巨大な断頭斧を片手に、もはや人間と言うには些か蝶々するほどの筋肉お化けになっていた。
「…今の貴女には些か手惑いそうですね。ならば!!!」
モズグスは自身の支給バックから何かを取り出し、指につけた。
青い幻想的な石のはまった。天使の羽がつけられた指輪。とあるマフィアに伝わる海の名を持つリング。雷のマーレリングを装着。その指輪が、モズグスの属性である雷の死ぬ気の炎を放ち、モズグスの体に電気を纏わせる。
「神から授かりし神器!!マーレリングセット!!…かかってきなさい!!」
全身に雷を纏い、力丸を挑発するモズグス。それに断頭斧を振りかぶり突っ込む力丸。
今ここで、超暴力体育教師と狂信的神父のバトルロワイアルの火蓋が切って落とされた。
[1日日/深夜1〜2/東協会エリヤ]
[力丸亜砂美@サタニスター]
[状況]ドーピング・コンソメ・スープによりマッチョ状態。
モズグスを殺す。
[所持品]基本的支給品 ドーピングコンソメスープ@魔人探偵脳神ネウロ注射器5=4本
断頭斧@バイオハザード5
[備考]世界最強殺人鬼決定戦参加直前から参戦。沢本いずみに若干興味がある。
[殺人・犯罪記録]
最初にいずみの知り合いである《のろみつあみ》を撲殺。その後逃走し、全国の小・中学校に経歴・名前を偽って赴任、児童を殺害し、合計18人の子供を殺した。
ドーピングコンソメスープ@魔人探偵脳神ネウロ
本ロワに参加している志郎田正影の作った血液や尿からはけして検出されず、血液に注射して食べることで薬物の10数倍の筋肉増強効果が得られるマッスルなコンソメスープ。材料は違法ドラックやドーピングのオンパレード。副作用については不明。
断頭斧@バイオハザード5
処刑マジニが使用していたギロチン刃をくくりつけたでかい斧。少なくとも50キロ以上ある。
[1日日/深夜1〜2/東協会エリヤ]
[モズグス@ベルセルク]
[状況]この神の試練をはたす!!
神の御心に従うのです!!
[所持品]基本的支給品 ランダム支給品1〜3
雷のマーレリング@家庭教師ヒットマンリボーン
[備考]原作で死亡した後からの参戦。ガッツを知っていますが、名前は知りません。
[殺人・犯罪記録]
法王庁所属の異端審問官、別名血の教典と呼ばれ、五百人以上を火炙り、車輪引きの刑に処し、更にその倍の数の人間が彼の異端審問の拷問で命を落としており、さながら戦争並の死者を出し恐れられている。
かなりの信仰心をもっており、彼の所属する法王庁以外が神の権威を使用することを何よりの罪と感じており、彼に恨みを持つ人間が襲撃をかけ、天誅という言葉を喋っただけで怒り狂い、分厚い教典で撲殺した。
雷のマーレリング@家庭教師ヒットマンリボーン
古い歴史を持つ巨大マフィア、ジャリネッロファミリーに受け継がれる七つのリングの内の一つ。
ボンゴレファミリーに受け継がれているボンゴレリングと対をなし、強い覚悟を持つ物に装着されると属性の死ぬ気の炎を生成する。
このリングは雷属性で、電気に似通った死ぬ気の炎を生産する。モズグスは雷の波動をもう用だ。
※東エリアにあるサタニスターの協会が大破しています。
道路にも多数破壊あり。
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