処刑人の最後
殺し合いの会場内の森林エリア、その中程で、二人の人物が対峙していた。
一人は体格が大きく、身長が3mはする黒い頭巾を被った大男
対するは黄金の肘までを覆うナックルをつけたセーラー服を着た若い女の子
先程の黒頭巾の大男の襲来後、容赦は無しと決めたセーラー服の女ナグルシファーは、闘志を滲ませた雄叫びを勇ましく上げ、巨漢の男の懐に入り込み、胴に渾身のストレートパンチを浴びせた。
大男は鈍い音を腹からならし、その巨体が吹き飛び、男の背後にある木々が吹き飛ぶ男に当たりなぎ倒され、そのまま100mはぶっ飛んでいく。
これにはナグルシファーも自身のパンチ力に驚く。彼女は目を点にして自らの拳を見つめる。
彼女は気づいていないが、彼女が身につけているナックルは使用者の戦闘能力を底上げし、そのナックル自体が凄まじい殺傷力をもっているのだ。
元々高い身体能力をもつナグルシファーは、ナックルの恩恵によりかなり強化されている。
普通ならいくら彼女の身体能力が郡を抜いて高いと言っても、3mもある大男をパンチ一発で100mもぶっ飛ばせる筈がない。
(…よくわかんねえけど、とりあえずなんか体がかるい。それになんか攻撃力上がってる気がする。…もしかしてこのナックルのせいか?だとしたらラッキーだな。…もしかしてこれで倒しちゃったりは……)
「…でかいだけあってタフだな。」
吹き飛んだ大男を眺め呟く。
大男は、ゆっくりと体を動かし、どっしりとその丸太のような両足で地面を踏み締めた。
首を1〜2回揺らしている。ぱっと見では余り聞いていないように見えるが、それは違うとナグルシファーは先の拳の感覚で理解していた。
喧嘩百戦錬磨の彼女の強化された先程の拳であばら2、3本所か内臓がおかしくなっている筈だ。確かに先程の一撃はそれぐらい協力だった。
事実、男がつけていた黒いチョッキのような物も余りの威力に拳が当たった部分が砕けてけ、その部分から絶え間なくどす黒い血があふれ出ている。
が、男は、それがどうした?…と言うように悠々とナグルシファーの方に歩いていく。
ナグルシファーは知る由もないが、大男こと処刑マジニは真正社会性生物である寄生生命体プラーガが体内に寄生しており、寄生される前の彼が適合率が高かったのもあるが、そのプラーガにより強靭な肉体を与えられていた。その肉体たるや、腹にショットガンの散弾やマグナムの銃弾を食らっても怯みもしない程である。
事実、彼の胴体の傷は体内のプラーガが再生を行い、既に血が止まりつつあった。
その事にナグルシファーも気づいていた。
(こりゃあネロの残党とは違うね。奴らよりもこっちの方がゾンビらしい。)
悠々と歩いてくる大男に向かい、構える。
大男はナグルシファーに向かいスピードをあげ突っ込んで来た。
ナグルシファーは突っ込んでくる大男こと処刑マジニに再度ストレートを浴びせようと構え、タイミングを見計らいパンチを放った。
が、今度は処刑マジニも学習していた。
先程のストレートがくるとモーションから判断したのか、彼女がストレートを放つ瞬間に足を止め、タイミングをずらした。
いかに強力なパンチでも、当たらなければ意味はない。放たれた拳は処刑マジニに届かず、ナグルシファーの体が一瞬固まる。
(しまった。!)
その隙を逃す筈はなく、処刑マジニはまるでグローブのような拳で、ナグルシファーの頭を殴り飛ばす。
その一撃をナグルシファーはとっさに右腕で防御したが、威力は殺しきれず吹き飛ばされる。
ゴロゴロと転がる彼女に、今が好機と見たのかとどめを刺そうと駆け出す処刑マジニ。
ナグルシファーは、素早く体制を整えたが、右腕が先程の一撃でひびがはいったのか、鈍い痛みを感じる。この状態では処刑マジニに致命傷を与えるような攻撃は出せないだろう。
彼女は立ち上がり、正面から迫り来る処刑マジニに左手で全力の一撃を放とうと構える。
恐らく利き腕ではない方のストレートは先ほどよりも攻撃力は落ちるだろう。あの大男の治りが早い肉体にダメージを与えるには………
其処までナグルシファーが考えたとき、目の前に自身の頭を叩き潰そうと拳を振り上げる処刑マジニの姿。
彼女の行動は早かった。
彼女が放った左手のストレートは、的確に処刑マジニの顔面を捉えた。
元々腹部の怪我を再生するためと彼女にとどめを刺そうと前屈みになっていることと、ナグルシファーの身長が平均より比較的に高めだったことが幸いし。
処刑マジニ自身の走るスピードがプラスされ、たとえ利き手じゃない方のストレートも、ナックルの強化により充分に強力な一撃だった。
処刑マジニの黒頭巾を被った頭は、ナックルの一撃ですっかり砕け、消滅した。
頭部がなくなった巨体が後ろに2、3歩よろける。彼の体内のプラーガがなんとか宿主を生き長らえ差せようとするが、流石に頭部を丸ごと失ってはどうしようもない。
プラーガの抵抗むなしく、処刑マジニの巨体が背後に派手な音をたてて倒れ込み、その心臓の鼓動を止めた。
[処刑マジニ@バイオハザード5死亡]
【残り67人】
いきなりのピンチになんとか処刑マジニを返り討ちにしたナグルシファーは、ほっと一息をついた。
しかし目に見える脅威はなくなったとはいえ、彼女の状況は決して明るくない。利き手の右腕は処刑マジニの一撃により骨にヒビが入ったのか、ナックルを外してみると青黒くはれていた。これではこれからの活動に支障がでるだろう。
「参ったね、こりゃあ。」
少し喋っただけでも響いて痛むが、ここにいても仕方ないし、何より先程の騒ぎで殺し合いに乗った参加者がよってくるかもしれない。ここから離れておくべきだろう。
ナグルシファーはそこら辺に吹き飛んでいた処刑マジニのバックをもち、腕を手当するため少々危険だがその場を離れた。
[一日日/深夜0〜2/森林エリア]
[ナグルシファー@血まみれスケバンチェーンソー]
[状況]
全身に細かい擦り傷、右腕負傷。
1ギーコと合流したい。
2腕を手当したい。
※右腕の骨にヒビがはいっています。
※処刑マジニを殺害しました。
[所持品]基本支給品 ランダム支給品1〜2個 処刑マジニのバック ランダム支給品1〜3個
[備考]処刑マジニのバックをもっています。森林エリア内のどこかに頭部の無い処刑マジニの死体があります。
[殺人・犯罪記録]
今までのネロの残党狩りに加え、処刑マジニの殺害。
ナグルシファーは気づかなかったが、彼女の支給品であるナックルにある小さな異変が起こっていた。
もし彼女が少しでも霊感のある人間なら、自身の異様な状況がわかっただろう。
市街地に向かうため、歩き出している彼女の周りには、数え切れない歴代のサタニスターに狩られた殺人鬼達の怨霊がついていた。もしナグルシファーに霊感があったら、最初にナックルをつけた時点で怨霊の群を見てとんでもない事になるはずだが、幸か不幸か、彼女に霊感はなく、怨霊には一切気づいていなかった。
その殺人鬼達の怨霊の中に、また一人新しい霊が増えていた。
黒い頭巾に3mはある巨体。ナグルシファーの左手ストレートにより死亡した処刑マジニの霊が怨霊し、ナックルに宿ったのだ。
ナックルで殺された者は、ナックルに怨霊として宿る。
この結果が、これからどうなるかは誰にもわからない。
[処刑マジニ@バイオハザード5怨霊化]
※処刑マジニが怨霊としてナックルに宿りました。
前話
目次
次話