とある処刑人と戦うナックルガール






 様々な人間が集められたこの殺し合いの会場内に森林エリアがある。
 中央のラクーンシティ内にある街灯もなく、灯りと言えば空の月光だけの、およそ視界の暗く見通しも悪いこの場所に、一人の女性がいた。
 ボーイッシュな短めの金髪に、その女性がまだ学生である証のセーラー服をつけ、タイニーによりこの森の中に飛ばされた場所に置かれていたバックを背負い、彼女は歩いていた。

「…ふざけやがって…」

 怒りの感情を含んだ口調で呟く彼女、ナグルシファは、その心にマグマのようなタイニーに対する怒りをもっていた。
 ナグルシファは基本、並ではない凄まじい正義感をもっている。
 その正義感の凄さたるや、彼女の家がしている学習塾に通っている少女に性的なイタズラをした変質者を、彼女の後々の友達的な関係になる鋸村ギーコと独自にイタズラを行った変質者を張り込みであぶり出し、その幼児趣味の変質者をダルマにし、性器を切り落とし半殺しにしたくらい正義感が強い。

 因みに変質者は命は助かったが、余りの恐怖と苦痛で精神が破壊され、精神病院にぶち込まれたが、男がやってきた犯罪が犯罪だからか、世間の誰も男に同情しなかった。

 この場合、正義は(やり方はアレだが、)彼女達にあったのだ。

 それほど強い正義感をもつ彼女は、この殺し合いに乗る気は無かった。デズモンド・タイニーと名乗るあの男は、難の罪もない(厳密には大ありだが)男を一人殺し、さらに個々で最後の一人になるまで殺し合えと言う。

「…あの爺には、少しばかり筋ってもんをわからしてやらないとね。」

 あの場で首輪を爆破されて死んだ見ず知らずの男に少しの間黙祷を捧げ、ナグルシファーは、支給された参加者名簿をそこらの木にもたれかかり見ていた。

「…ギーコもいるのは心強いけど……なんであいつの名前が載ってるんだ。」

 呼んでみた名簿の中に、あの爺の目論見には簡単には乗らないであろう腐れ縁の級友の女の名前を見つけた事には驚かない。そもそもギーコは簡単にくたばるような奴じゃ無いことはナグルシファー自身付き合いが長い為わかっていた。それよりも気掛かりなのは…………

「蒼井ネロ…」

 そのギーコが始末したはずの女、蒼井ネロの名が乗っていた事だ。

 ネロは、ギーコの学校のクラスメートであり、ギーコ以外の生徒をさらい、様々な方法で生きた屍。ゾンビにし、ゆくゆくはゾンビの力を使い自身の帝国を作ろうとしたヒトラーとフランケンシュタインを足したような異常者だ。ネロがそんな暴挙にでたのはギーコのクラスメート達にはぶられたからだが、それも工作の宿題に「死んだのに動いてる猫」を持ってきたかららしい。

どう考えてもネロ自身が悪いが、今はおいておくとして、この名簿にネロの名が乗っていることはあり得ない。ギーコがけじめとして殺したと言っていた。実際、ナグルシファーはネロの残党を子供達に危険が及ぶ可能性があるため狩って回ったが、その事を考えるとネロは死んだはずである。

「…なんかややこしい事になってるね。…」

 ネロの事も気がかりだが、今はとにかくギーコと合流すること。そう結論づけたナグルシファーは、灯りがある市街地に向かおうとした。その時


 ドゴッ!!

「うおわ!!」

 さっきまでナグルシファーがいた木が、突然の襲撃者が放った拳ではぜた。
 ナグルシファーは類い希なる身体能力の反射神経で自信の顔に向けられたら拳を裂け、狙いを外れた拳が後ろの木に激突したのだ。

「てめぇ……」

 ナグルシファーは突然の襲撃者を睨みつける。
 襲ってきた人間は、身長が2mを軽く超えている大男だった。顔には黒頭巾をかぶり、ジャラジャラと体にチェーンを巻いている。

   その姿はまるで、中世の死刑執行人のような姿だった。

 黒頭巾の巨人は、攻撃を避けたナグルシファーの方に顔を向け、低くうなり飛びかかった。
 巨体に似合わぬ俊敏さで放たれた第2の拳を、ナグルシファーは、バックステップで避ける。

 ドゴン!!

 拳の当たった地面が軽く抉れる。当たったら致命傷には行かないが、骨の2〜3本は確実に折れるだろう。

    「仕方ないね…」

 ナグルシファーは自身に支給された黄金の肘までを覆うナックルをつけ、男を睨みつける。

「…いきなり襲ってきて、覚悟は出来てんだろうな。」

「……………」

 巨人はそれに応えず、再度ナグルシファーに殴り掛かろうとする。
それを感じ取ったナグルシファーは、もうこの男に蝶々する必要はないと判断し、

全力で殴りかかった。

「おらああああ!!」

 今ここに、一人の処刑人と正義感を胸に宿した戦う女子中学生の死闘がはじまる。

[一日日/深夜0〜2/森林エリア]
[ナグルシファー@血まみれスケバンチェーンソー]
[状況]目の前の大男を殺す。
[所持品]基本支給品 黄金のナックル@サタニスター ランダム支給品1〜2個
[備考]ネロの残党狩りの時期から参戦。制限はありません。
※名簿にネロの名前を見つけ、困惑しています。
※森林エリアにてナグルシファーの雄叫びが響きわたりました。誰か聴いた可能性があります。
[殺人・犯罪記録]
 ネロの残党である改造された元中学生をゾンビとはいえ問答無用で狩っている。彼女自身かなりの身体能力をもち、自身の正義に従って行動し、悪には容赦しない。



 彼は強い感情を感じていた。いや、そもそも彼に今も感情があるかどうかなど分からないが、彼は何か強い衝動を心に抱いていた。
 彼は、自分が何者が覚えていなかった。記憶はおぼろげで、はっきりとは思い出せない………が、そんな事は今の彼にはどうでもいい事だった。
 彼を突き動かす、一つの意志が、その事を考えさせない。
 殺せ……多種族を皆殺しにしろ…
 彼は処刑人…とある教団が使役していた寄生生命体プラーガをある企業が研究し、改良した物を投与された元人間だが、彼の体に巣くう虫が囁く…殺せと。
 彼はその殺戮衝動に従い、目の前の少女を殺そうととびかかる。

[一日日/深夜0〜2/森林エリア]
[処刑マジニ@バイオハザード5]
[状況]プラーガによる強い殺戮衝動。目の前の女を殺す。 
…断頭斧を探したい。
[所持品]基本支給品 ランダム支給品1〜3個
[備考]制限なし。処刑マジニはバックの荷物を調べていません。
[殺人・犯罪記録]
 バイオハザード5での初期ボス。身長が3m近い巨漢、ゲームの初っ端から愛用のギロチン刃をくくりつけた断頭斧でかなりインパクトのある断頭ショーをひろうした。背中に釘が刺さっており、そこが弱点である。

黄金のナックル@サタニスター
 悪魔寄りのシスター、サタニスターの所持するナックル。先祖代々伝わる物で、先代のサタニスター達が狩ってきた殺人鬼の怨霊が宿っている。また、このナックルで殺害した人間は怨霊としてナックルにやどる。
装着すると使用者の戦闘能力を底上げするが、使いこなせなければ怨霊にとり殺されるか気が触れてしまう。このロワでは誰でも着ければ強化の恩恵が与えられるが、精神が消耗していたり体力的に消耗していたら使用は危険かもしれません。



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