英雄とサイボーグ






 会場内東エリアにあるモールから少し離れた場所に、とあるアウトレットモールが存在する。
 日本各地に突然現れた、ゾンビににた奇病が発生し、感染していない非感染者を襲う感染者、通称zqnが溢れかえった世界で、非感染者が屋根の上にてコミニティーを作っていた場所と作りが全て丸々一緒のこのアウトレットモールにて、フードコートの調理場の戸棚の中に、一人の男性が体を丸めて入り込んでいた。何やらブツブツ呟いている。
 彼の名前は鈴木英雄、zqnが溢れたライフラインが停止し、混沌と化した日本を愛用の免許を取った散弾銃で生き残った35歳の元漫画家アシスタントだ。
 アウトレットモールの屋上に避難していた生存者達に恐怖政治をしく暴徒とした生存者達…
《サンゴ》と《伊浦》達グループに散弾銃を奪われ、プラスチックのトンカチ一つ持たされ、食料確保のため屋内のzqnが居るフードコートにサンゴ、伊浦含む6人で強制的に連れて行かれ、zqnによりほぼ食料確保組が壊滅し、エアガンを持った英雄に協力的な生存者、ブライとサンゴから取り返した散弾銃で百匹近くいるzqn相手に戦い(ブライは自殺した)藪と呼ばれていた女性生存者と、途中で出会い、感染したのに知性を残している女子高生とともにブライの残したベーコンを持ち、生前走り幅跳び選手だったzqnの屋上侵入によりほぼ壊滅したアウトレットモールコミニティーを脱出した…が、気がついたら何故か外国人らしき仮装した男に爆弾入りの首輪をはめられ、殺し合いをお願いとして強制され、壊滅した筈のアウトレットモールと同じ建物に飛ばされ、元々気弱な男だった英雄は前回も隠れたフードコート調理場の戸棚に支給品の確認もせず、引きこもっていた。

「先生、どーすればいいですか?」

 自分の手を人の顔のように組み、自問自答する英雄。これが彼なりの精神統一方法だった。

「とりあえず殺し合いに乗るべきか…先生、アドバイスを。」

少し声を渋めにして自分の質問に答える英雄。

「とりあえずお前どうしたい?」

 「えっと…死にたくない?」

「…じゃあ、生きたいんだね?」

 端から見たらとんだ奇行だが、本人が大真面目だから笑えない。

「じゃあこの状況じゃあ殺し合いに乗るしかないんじゃないの?」

「いやいや〜、人殺しはちょっと……」

「…じゃあ殺し合いには乗らないの?」

「う〜ん。」

 よくもまあ、一人でこんなに多才な顔を出来るものだ。そう言いたくなるほど独り言をする英雄。

「戦えば、とりあえず。」

「いや、無理ですって。」

「…zqnはめちゃくちゃ殺したのに?」

 自分で言った言葉で一瞬固まる英雄。彼は、アウトレットモールにて少なくとも50人以上の感染者を散弾銃で撃ち殺している。感染者を人間とカウントすれば、英雄は充分大量殺人者だ。

「…あれは…正当防衛で、やらなきゃ食われてたし。」

「でも殺したじゃん?」

「……………」

 英雄は考える。
彼の最初のzqn殺しは、英雄の恋人の《てっこ》…zqnになり、以前とは比べものにならない怪物になった恋人を、英雄は首を切って殺した。
 彼はその後置き手紙を残して自首使用としたが、てっこに起きた異変はそこら中で起こっていたわけだ。

「…英雄に、なりたかったんだろ。」

 鈴木英雄は、昔から影が薄く、自分の人生の主人公にすらなれていなかった。そのため、いつからかヒーロー英雄に憧れるようになった。
 英雄は自分自身に存在感をつけるため、柄にもなくブランド者の服を付けたり、苦労して銃所有免許をとってみたりしたが、彼を主人公にするには至らなかった。
 最も、zqn発生後は変わりつつあるが…

「…英雄か………自分には向いてないかも…まじでど〜しよう。」

「…じゃあ、このままでいいんじゃね?」

 其処まで言ったところで、英雄は自分の腕時計を確認するが、生憎タイニーに募集されていて時間がわからなかったが、実際には一分もたっていなかった。

 コンコン

 ビクッ!!

その時、英雄の隠れている戸棚が何者かにノックされた。

「誰かいんのか?」

戸棚から聞こえてきた声は、まるでボーカロイドのような機械声だった。

「はっ…入ってます。」

 英雄は取り敢えず返事を返したが、緊張で何かと声が高い。

「…あんた、変な親父に殺し合えって言っわれた参加者か?」

 機械声で聞いてくる外の人物。

「…はっはい。………」

 ばれているなら、返事をするしかない英雄。すると

「あけるぞ。」

 そう言って外の人物が戸棚を開けた。

 其処にいたのは、アニメに出てきそうなサイボーグの顔だった。

 「…え………」
声を掛けてきた相手の予想の斜め上な姿に驚く英雄。

「お前、なにやってんだ?」
本物かどうかはわからないが、サイボーグ男が戸棚に隠れていた英雄に質問する。

「えっと…どうすればいいか此処で考えていました。」
律儀に返す英雄。
「…調理室の戸棚の中にか?」

「はい…」
サイボーグ男は些か呆れた用だが、そんな雰囲気が伝わってきた。かなり感情豊かなサイボーグだ。

「まあ、こんな状況じゃ普通か…頭のいい方だな。…まあいいや、おっさん、俺の質問に静かに答えろ。」

 そう言って首を捻るサイボーグ男、その首には英雄と同じ鉄製の首輪が付いている。

「あんた、この殺し合いに乗っているか?」

  この場には至極当然の質問だ。それに対して英雄は。

「…のっ乗ってません」
正直に答えた。実際英雄は、zqnはともかく人間を殺す度胸は全くなかった。

「…まあ、こんなとこに丸まって隠れてるから当然か。」
 サイボーグ男は隠れていた英雄が殺し合いに積極的な参加者とは考えられず、可能性は低いと考えていた。

「おっさん、あんたの名は?」

「…えっと、鈴木、鈴木英雄です。」
名を聞かれた英雄は正直にサイボーグ男に答える。

「…俺は墓井田鉄郎。」
(ハカイダー?…)英雄が内心そう考えていたら、墓井田は最初から思っていたことを言った。

「鈴木さん、あんた、ここからとりあえず出たらどうだい?」

 「鈴木さんの知り合いは、早狩比呂美、それと伊浦とサンゴね。」
 英雄の知っている参加者名簿に乗っている名前を確認する墓井田。

「はい…サンゴや伊浦は、本名かどうかは怪しいけど、自分の知っている人かも知れません。…あと、鈴木じゃなくて名前で呼んでくれても大丈夫ですよ。」

「…英雄さん、じゃあ、こっちの知り合いは、サタニスターと、沢本いずみ、バルキリー…そしてバリーだな。」

 墓井田の一言で、取り敢えず戸棚からでてレストランの椅子に座り、墓井田と英雄は情報交換を行った。結果、色々な情報が両者に手に入った。
 まず、この殺し合いには墓井田と英雄の知り合いが結構来ていることと、お互いにどういう状況だったかを話した。
 墓井田は最初、フードコートのレストランに飛ばされたらしいのだが、厨房から英雄の独り言が聞こえ、様子を見にきたら隠れていた英雄と出会ったのだ。

  「…しかし、zqnねぇ。…眉唾物だな。」
 墓井田の言葉に英雄は、
「それこそ世界最強殺人鬼決定戦の方が僕からしたら眉唾ですよ。」

 英雄は自分のすむ日本各地に起こった災害?…人災かどうか微妙だが、zqn発生の事を墓井田に話したが、墓井田のすむ日本は平和で、zqnのzの字もないという。逆に英雄は、墓井田の参戦していた世界最強殺人鬼決定戦の話を聞いて驚いていた。(墓井田を殺人鬼と思い逃げ出しかけた英雄を止めるために墓井田は多大なる体力を使ったが。)スナップビデオの延長みたいな殺し合いが行われているなど、善良で目立たない英雄からしてみたらまるで現実感がなかった。

「まあ、それはおいておいて、とりあえず知ってる奴と合流って方針でいいよな?英雄さん。」

「はい、墓井田…くん?さん?」

「…鉄郎でいいよ」

「はい、鉄郎くん」
その言葉に墓井田は
「…なんか気が抜けるな。…取り敢えずお互いの支給品を確認しないか?」

 「おお!かなりの当たりじゃないですか!」

「…そうか?」

「はい!」

 その後、方針を決めた後お互いの支給品の確認を行った結果、タイニーが言っていた筆記具とコンパス、あとそれぞれ様々な物が出てきた。墓井田に支給されたのは、沢山の弾が納められている弾倉のついた巨大なガトリングと、スマートフォン一つ、そして投げナイフが一本はいっていた。
 バランスをとるためか他の二つが武器として微妙だが、それでもガトリングガンはかなりの当たりだろう。

「英雄さん、あんたのは?」
墓井田は英雄の支給品を確認する。
「僕のは…」
英雄に支給されたのは、粉のような物が入った小瓶が二つ、そして、何やら怪物のような装飾がされた古めかしい銃だった。
「よかったじゃん、あんた、銃の免許もってんだろ?」
 元々銃器の免許を持っている英雄には当たりだろうと思う墓井田。
「僕の専門は上下式の散弾銃ですし…まあ、使えるならラッキーですね。…これが銃の説明書かな?」
 バックに入っていた説明書を読む英雄。
「《怪物銃》三種類の怪物を弾として込められている魔界の銃。攻撃用、回復用、トラップ用の順で打ったら出てくる。なお、出てくる怪物は撃った者を襲わない。」
 読み終わる英雄。

「…何というか…すごいオカルト的な銃だな。」
 そういう墓井田に渋い顔をする英雄、…彼らは知らないが、実はこの銃、かなりの当たり武器だった。
「この小瓶は?…これが小瓶の説明書か?…どれどれ。」
 今度は墓井田が小瓶の説明書を読み始める。

「ある薬剤師が調合した薬。青い蓋の小瓶は回復用で、傷の治りを促すバクテリアが入っている。赤い方は、空気中に散乱する強烈な麻薬で、すった者は意識を失い二度と覚めない夢を見る。………英雄さん、これめっちゃ当たりじゃん。」
 墓井田はそう言うが、英雄は麻薬の入っている小瓶を危なっかしそうにバックに戻す。
「…まあ、お互いには結構心強い品々でよかったじゃないか。」
 そう言うと墓井田は、支給されたガトリングの弾倉を背負い、立ち上がる。
「此処にいてもしょうがねぇ。とりあえず方針通り知っている奴と合流しようぜ。」
 墓井田、英雄両方、バルキリー、サンゴ、伊浦しかり余り会いたくない奴も多いが、合流する事をこれからの行動方針として固めた。

「はい。」
英雄は、今まで行動を共にしていた女子高生、早狩比呂美の事を思う、…早く合流しよう。そう固く英雄は思うのだった。

 果たして彼は、英雄になれるのか?

[1日日/深夜/アウトレットモールフードコート内]
[鈴木英雄@アイアムアヒーロー]
[状態]早狩比呂美と合流したい。
墓井田と行動する。
[所持品]怪物銃@サタニスター
薬の入った小瓶[赤]@サタニスター
薬の入った小瓶[青]@サタニスター
基本的支給品
[備考]アウトレットモール脱出後からの参戦。
※サンゴの名が名簿にあり混乱しています。制限なし。
※サタニスターの世界観を聞きました。
[殺人・犯罪記録]
 アウトレットモールにて、50人以上の感染者を殺害、最初に感染者になった恋人てっこを包丁で首を切り殺した。

怪物銃@サタニスター
毒壺幽害が《壺》をつかい魔界と取り引きして得た三体の怪物が宿っている銃、中の怪物弾は、攻撃用、回復用、トラップ用がある。

薬の入った小瓶×2@サタニスター
無免許の薬剤師伊看崎研が調合した回復用のバクテリアと、攻撃用の強力な麻薬が入った小瓶。
麻薬は一息すった人間を昏睡させ、二度と覚めない都合のいい夢を見させる。回復用の小瓶は傷の再生を促すバクテリアが入っている。

英雄と行動を共にする事になった墓井田は、名簿に乗っていた自分が殺した筈の親友の敵、バリーの名を見つけ困惑していた。
(奴は俺がけじめを付けた。…確かに殺したはずだ。なのに名がある。)
 墓井田は考える。…この事態は、自分が考えているより深刻な事態だと…目の前で荷物を纏める英雄を見る。
(…この名前負けのおっさん、だいじょうぶかな?)

[1日日/深夜/アウトレットモールフードコート内]
[墓井田鉄郎@サタニスター]
[状態]知っている参加者と合流したい。
英雄と行動を共にする。
[所持品]ガトリングガン@バイオハザード5
スマートフォン@現実
投げナイフ@ベルセルク
基本的支給品
[備考]原作にてバリーを殺した直後からの参戦。
※ガトリングガンを装備しています。
※アイアムアヒーローの世界観を聞きました。
※バリーの名が名簿にあり困惑しています。
[殺人・犯罪記録]
友人の敵としてバリーを世界最強殺人鬼決定戦に参加し、いずみとの協力でけじめをつけ、バリーを殺した。

ガトリングガン@バイオハザード5
ガトリングマジニが装備していたガトリング。弾は50000発入っている。
投げナイフ@ベルセルク
ガッツが所持していた投げナイフ
スマホ@現実
ただのスマートフォン。



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