妄想四国ロワ






ようやく電車が動き出した。俺は傷ついた右腕を押さえながら安堵のため息を漏らす。
あの男たちからはこれで当面は逃げることができるだろう。走っている電車に追いつける人間などいない。
電車の窓の外を見ると、朱塗りのはりまや橋やからくり時計が目の前を過ぎ去っていった。
みやげ物やの前にはあの男によく似た銅像が立てられている。ここでは高名な人間なのだろうか。

さて、しかしいつまでもこの電車に乗っているわけにはいかない。
買い物帰りらしい乗客たちが、腕から血を流している俺のことを奇異の目で見ているのだ。
次の駅で降りるのが得策だろう。
正岡子規や馬路村の柚子とは「イオン高知」という店で落ち合う手はずになっている。
どうやってそこへいこうかと思案しているうちに、早くも電車は減速を始めた。
どうやら思いのほか早く次の駅に着いたらしい。俺は運転手に小銭を渡して電車を降りた。
そこで俺が見たものは……

「なっ―――」

見まごうはずも無い。駅で俺を待っていたのは、まさに先ほど帯屋町アーケード街で俺に襲い掛かり傷を負わせた和服姿の男と大きな魚の二人組みだった。
「待ちよったぜよ」
男のほうが俺に手を振る。
「馬鹿な!! どうやってあそこからこの駅まで来たんだ!!」
「わかっちょらんのう」
男は呆れたように言った。
「この高知県が誇る伝統ある『路面電車』、これは安い移動手段としては最適やけどのう、その速度と駅の間の間隔が普通の電車とぜんぜん違うんじゃ!!
路面電車のスピードには、自転車はおろか徒歩でさえ十分追いつけるちゅうんは高知県民の常識じゃき!!
やからここらのもんは一駅程度の移動では路面電車なんぞ使わんがちや」
「なっ……」
俺は驚愕する。それと同時に魚のほうが口を開いた。
「さあ、いごっそうの意地をみせちゃるきや。ダイエーもそごうも撤退して繁華街は閑古鳥、
JR線しか走ってない上に『駅ビル』という概念が無い……そんな高知にもなあ、意地くらいあるがやきに!!」


【一日目・昼/高知県高知市繁華街の少し東】
【坊ちゃん@坊ちゃん(愛媛県)】
【所持品】長宗我部元親の刀@歴史(高知県)
【思考】竜馬とカツオから逃げ、集合場所のイオン高知に向かう

【坂本竜馬@歴史(高知県)】
【所持品】愛媛のみかん@現実(愛媛県)、うどんの延べ棒@現実(香川県)
【思考】世直しのため、ほかの参加者を皆殺しにする

【カツオ@現実(高知県)】
【所持品】明徳義塾高校の金属バッド@現実(高知県)
【思考】高知を過疎から救うために優勝する



前話   目次   次話