ゾンビ作品バトルロワイアル
広くもなく、狭くない凡そ平均的といえる何かの建物の空間、天井につけられている照明が、薄暗くその部屋を照らしている。その灯りで見える範囲では、この部屋に存在するのは集められている者達と、丁度向かいの位置の壁に設置されている存在感を放つ大型画面だけである。
その場には、様々な者達が様々な場所から連れてこられていた。
男もいれば、女もいる、……中には明らかに、どう見ても凡そまともな人間にはみえない怪物のような異形の怪物までが、一堂に集められている。
困惑、不安、怒り、……集められている人間には見えない何かに怯え、恐怖するもの。
中には図太いのか、かなりの修羅場を潜ったとでも言うのか、あまり動じていないような者も居はする。
その場は何ともいえない奇妙な硬直状態になっていた。
『初めまして、諸君。』
突然、何の前触れもなく、設置されている大型画面に丸めがねをかけた老人が映し出され、スピーカーから声が発せられる。
その状況の変化に、その場の殆どの人物?……が画面に集中する。
丸めがねをかけた老人は、その皆の反応を満足げに画面越しに確認したのか、頷く。
『突然でよくわからない状態だろうが、私の名はジョージだ。……此処に君達を集めたのは私なのだが、君達にはある事をしてもらいたくてね。まあ、老人のちょっとした遊び心だと思ってくれて構わない。』
其処まで老人、もといジョージ・A・ロメオは、その場の面々を画面越しに見渡し、まるで新しい玩具を貰った子供のような無邪気な笑顔でこの場に様々なメンバーを集めた目的を話す。
『君達には、最後の一人になるまで殺し合い、生き残った者を一人、一人だけ帰還させる。』
その場の殆どの面子が凍り付いたのは言うまでもない。
「ふざけるな!!」
ロメオの言葉で固まる面々の中、唯一声をあらげた一人の男、レオン・S・ケネディは、そのまだ若い顔をロメオに対する怒りで染め、怒鳴る。
「いきなりこんな所に連れてこられて、言うに事欠いて殺し合いをしろだと!!頭がおかしいのか!!」
そのレオンの声に勇気づけられたのか、所々騒ぎ出す面々も出始めた。
ロメオはその様子に焦りを感じるどころか、逆に楽しそうに見つめている。
『レオン君、若い者が生きが良いのは良いことだが、少し落ち着いた方が良いぞ、諸君、自分の首を確認してみたまえ。』
ロメオの言葉に、レオンを含むその場の殆どが首を確認し、驚く。
なぜ今まで気にもとめなかったのか、この場の全員の首に継ぎ目のない、恐らく金属製であろう圧倒的な存在感を放つ首輪がつけられていた。
『諸君、首輪を確認したら、この映像をみてくれ。』
ほぼ全員が画面を見ると、映像がロメオではなく、別の映像を映し出していた。
不自然なほど肌がダメージをうけ、目が濁り、周りが白く塗られているコンクリートの部屋の中に突っ立っている男の映像、その男には、全員がはめられている首輪と同じ首輪が填められていた。
『これからその首輪の効果を見せよう。』
ドバァァァン!!
画面のスピーカーからロメオの声が聞こえた直後だった。
画面の男、もといゾンビの首輪が爆発し、哀れなゾンビの首から上を吹き飛ばし、周りの白く塗られている床や壁を鮮血で赤く染める。
その映像を見て、言葉を失う面々、中にはその様子を見て、口を押さえて吐き気を押さえ込んでいる者も少なくない。
『君達に填められている首輪にも、たった今見て貰ったように爆薬を仕込んである。……此方は何時でも君達を殺せる立場にあるのだよ。レオン君。……静かに私の話を聞いていたまえ。』
またロメオの映像に切り替わった画面を憎らしげに睨みつけるレオンだが、先ほどの首輪の爆発映像を見たためか、大人しく引き下がった。
『宜しい、では説明を行う。一度しか言わないから漏らさないように聞くように。』
『まず、君達の殺し合いの舞台となるのは、知ってる者も中には何名かいるかもしれないが、フォーチュンシティという町だ。』
フォーチュンシティという単語に、メンバーの何人かがざわめく。
『会場として用意したフォーチュンシティ内には、様々な施設や設備がそっくりそのまま置かれている。勿論物資、食料や武装などもたっぷりとあるので、殺し合いには便利だろう。……ゾンビ対策にもなるぞ。』
「ゾンビ?」
ロメオのあっさりと喋った不穏な単語に、一人の参加者がオウム返しで聞き返す。
その言葉に、画面のロメオはにやりと笑う。
『そう、ゾンビだ。よく聞きたまえ、殺し合いの場のフォーチュンシティには、ほぼ無限と言っていい数のゾンビを放ってある。うじゃうじゃ居るぞ。』
画面の映像が、恐らくフォーチュンシティであろう街の映像を写しだす。
「ひ!……」
映像を見た面々の内、誰かが小さく悲鳴を上げる。
ゾンビ、ゾンビ、ゾンビ、ゾンビ、ゾンビ、ゾンビ!!見渡す限りのゾンビが、映像中の街中を埋め尽くしている。
『会場に放たれているゾンビの映像だ。……街に放たれているゾンビは、6時間事にどこかの場所に特別製のガスをまいて、ちょこっと凶暴化するようにしてあるので、気をつけるように。因みに、噛まれたらゾンビになるぞ。』
映像を見ながら、ほぼ全てのメンバーがロメオの話を真剣に聞いている。
『ゾンビに噛まれたらゾンビになるが、君達にはゾンビ化を約24時間食い止める薬品、ゾンビレックスを一人一つ支給する。それぞれ殺し合い開始時にデイバックを置いておくから、それには目を通しておくように。支給品に小型トランシーバーラジオを入れておく。それから6時間事にガス放出の報告と、その時点での使者の名前公開、それと軽い臨時報告を行うので、聞き逃さないように。……それと、各参加者同士のやりとりには基本的な反則は無いが、殺し合いに反逆するような悲しい行いをすれば、容赦なく首輪を爆発するので気をつけるように。』
そこまで言い終えたロメオは、その顔に笑顔を浮かべながら最大級の爆弾発言をした。
『それと、君達が殺し合いを行わなかず、何時間か経過した場合、無論首輪は爆発させるが、それ以前に、3日間たっても決着がつかない場合、開始に仕掛けた【核弾頭】が爆発して、全部吹き飛ばすので、どっちみち同じことだから。』
画面の映像が、ロメオから巨大なキノコ雲の白黒映像を映し出す。
「は……?」
誰もがその言葉を理解できずにいた。
『核弾頭はフォーチュンシティの地下にあるが、3日間たたなければ気して起爆はしないから安心したまえ。起爆までのタイムリミットは支給される腕時計から確認できるから、時間も考えて行動するように。……さて、時間も押しているし、これにて説明は殆ど終わったものとする。』
まだ混乱から立ち直っていない殆どの面々を放っておき、ロメオはそのまま説明の終了を宣言した。
すると、部屋のどこかから何かのガスが蔓延する。
『諸君を会場に運ぶために、少し眠っていて貰う必要があるからな、ちょっとした睡眠を誘うガスだ。大丈夫、害はない。それでは諸君等の健闘を祈る。』
それが、その場にいた面々が急激に薄れていく意識の中で聞いた最後の言葉だった。
【ゾンビ作品バトルロワイアル開幕。】
【主催者】
現実@ジョージ・A・ロメオ
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