サバイバルキャラバトルロワイアル「プロローグ」
[プロローグ]
そこは、異質な空間だった。
360度周りが暗く、ただただ暗い空間、そこは俗に言う生命の活動と言ったような物が見られない、まるで誰かの夢や妄想が具現化したような空間だ。
その場所には、何人かの人間が集められていた。
彼らは最初、自分達に何が起こったのかわかっていなかった。
一部は、現代の日本に住む高校生や日本人、さらに、金髪の若い男や、全身が黒ずくめの甲冑をきた大男。……何ら共通性のない人間達だ。
たが、彼らは普通ではない。
烙印に引き寄せられる凶悪な悪霊の群をかわし、しぶとく生き残っている剣士
とある企業が研究しているDウイルスという危険なウイルスに感染し、理性を失った元人間達や、企業が作り出した生物兵器が溢れる街から生還した警官や特殊部隊の生き残り
突如現れた大量の異形の怪物達から逃げ、見事に生還した日本の高校生や元体育教師
遥か未来で、人間が変異した化け物、ネクロモーフ達を退け、二度も宇宙のコロニーなどから生還した最強のエンジニアとその同行者。
それぞれ、並ではない死地を切り抜けて見せた猛者だ。
…観察の対象になりえる存在だ。
「…皆さん、よくぞこの場に集まってもらいました。」
観察対象の人間達に語ったのは、困惑している対象者達の前に突如現れた一人の女性だった。
短いショートヘアに、変わった服装をした若い女性…彼女は人間ではなく、ある対象者の記憶から移した姿をまねた虚像だ。
「ニコル!!」
集められていた対象者の一人の、猫背の白人男性、アイザック・クラークが声を上げた。
当然だ、わけのわからない場所に突然連れてこられて、目の前に死んだ恋人が現れたらどんな人間でもこうするだろう。
「…アイザック、残念ながら私はニコルではない、人間は愚かだが学習する物だと思っているが、この姿で顔を会わせるのは初めてでは無いでしょう。」
そう対象者アイザックに語ると、彼は一瞬表情を失い、途端に凄まじい怒りの表情を浮かべた。
「…マーカー…」
怒りを込めて目の前の虚像に喋る。
「…厳密には、私は君が破壊した物とは別個体だ。…最も、我々に個体という概念は薄いがね。…さて、君一人と喋る事は無い、私は君を含めた君達全員に用が有るのだ。
「何だと!お前が俺をつれてきたのか!!」
アイザックが虚像を通して伝えた観察者の言葉を聞き、騒いだ。それに便乗して他の観察対象も騒ぎ始める素振りを見せる。…ここで騒がれるのは面倒だ。少し立場をわかって貰おうか。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぎゃぁぁああ!!」
「あぐヴうううう!!」
観察対象の脳に刺激を与え、少し苦しんで貰った。…凄まじい痛みだろうが、死なない程の刺激だ。
死なれたら困る。
何十秒か脳刺激を与え、観察対象全員が地面に倒れた頃に刺激を解いた。
「…これでわかってくれたかね?アイザック君…私は君達の脳に刺激を与え、何時でも君達の脳を破壊し、処分したり精神を破壊させたり出きるんだよ。君達の立場は理解出来ただろ。」
怒りの表情を浮かべる者、恐怖の表情を浮かべる者、反応は主にこの二つに分かれた。
「…時間を押したので、手っ取り早く説明を行う。…私の言う事をクリアできたら、君達の元いた世界に帰してやろう」
この言葉で殆どの観察対象の顔に希望の光が浮かんだ。しかし、続けた言葉ではその表情は大きく変わった。
「……これから君達には、君達それぞれの世界の異形がはなたれた場所に赴き、生き残りをかけた殺し合いをしてもらう。」
「殺し合いだと!!どう言うことだ!」
「ふ、ふざけんなよ!!」
私の殺し合い宣言で、アイザックを含む2〜3人の観察対象が声を荒げた。
「…勘違いしているようだが、殺し合いと言うのは君達が帰還するための手段に過ぎない、そこを勘違いしないでくれたまえ。」
「…どう言うことだ。」
アイザックが聴いてくる。…やはり彼は他の対象よりも適応力が高い、…私という存在の知識があるからか、冷静に対応している。
「…私の発言に問題があったか、…いいか、単純に言えば、これから三日間、これから君達を飛ばす場所で生存できたら帰れる手段を与えよう。」
この発言には、対象全員が微妙な表情で応答してる
困惑、恐怖、怒り、…好奇心も少しか。
「…どう言うことだ。」
今回はアイザックではなく、黒付くめの大男が聞いてきた。この男もなかなかの観察対象だ。…人間にしてはレア物だな。
「……簡単だ、三日、三日生き残るだけで帰れるということだよ。もがく者。」
対象のあだ名を呼べば微妙な感情を感じる。…彼と関わりが深い者からのあだ名で呼ばれ、戸惑いと疑惑が沸いているようだ。
「…君達を飛ばす場所は、それぞれに関わりの深い場所と場所を空間的にリンクさせた場所で、ベースはタチカワになっている。」
立川といったら、その世界出身の対象からどよめきがあがったが、騒ぐ者はいなかった。
立場を理解しているようだ。実に喜ばしい。
「…ここからが大切だが、会場内には最初話したが、それぞれの世界の異形達…怪物を放してある。…どんなのがいるのかはそれぞれ自分の眼でみてくれたまえ。」
アイザックやその他の対象がざわめくが、詳しくは自分でみて確かめるようにしてもらう。
「…君達には、向こうに飛ばしたら全員に荷物…デイバックを渡す。中には…「地図」「筆記用具」…それと、「ランダム支給品」「参加者カウンター」が入っている。」
そこまで説明したとき、一人の額が広い日本人青年が手を挙げた、恐らく質問したいのだろう。
「なんだね。」
「…ランダム支給品と、参加者カウンターって何かな。」
つけている眼鏡に人差し指をあて、腕を組むポーズをしながら聞いてきた。……この対象もなかなかの逸材だ。
「ランダム支給品は、君達の出身世界の物や、それぞれの装備していた物がその名の通りランダムにデイバックに入っている。…ピンからキリまであるが、運が良ければなかなか強力なアイテムがはいっているかもな。……それと、参加者カウンターというのは、これから送る会場にて生存している参加者の生存人数を数だけカウントしている腕時計のような物だ。…このサバイバルにて生存者、つまり会場内で生きている者が一人だけになれば、その対象はもれなく帰れるぞ。」
そこまで話し終えると、青年は納得したような顔で言った。
「…なるほど、殺し合い…なんて言ってたのはそのためか。」
…キレがあり、物事を冷静に受け止めている。面白い。
「…その通り、君が考えてる通り、手っ取り早く帰りたいなら他の参加者を殺せばいい。」
対象たちが息をのむ…こういう対策を口で伝えたら、大抵の者は縋るだろうが。
……そういう者もおもしろい。
「ふざけるな!殺すなんて!」
アイザックが叫ぶ…対象としてはいいが、流石に五月蠅い。
「…落ち着きたまえ。アイザック…殺し合いという方法は、あくまで君達が選ぶんだ。…私は強要しないが、これが一番確率的に帰れるぞ。…この中の何割かは放たれている怪物の餌食になるだろうからな。…それは君達の行動次第だし。…さて、そろそろ時間もおしてる、君達を会場に送ろう。健闘を祈るぞ。」
対象を会場に空間移動させる、対象者達の体が真ん中から消えていき、悲鳴を上げている。
「…最後に一つ聞くよ。」
先ほどの青年が訪ねてくる。…自分の体に奇妙な変化が起きていると言うのに、随分神経の太い奴だ。
「…何かな、村内君。」
「……君は一体何なんだ。」
…名前を呼ばれたことはスルーし、私の正体を聞いてくるとは。…これまた観察対象としては良いな。
「…私かい…私は…………
………わからんよ。」
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