妄想国ロワ






「ははは、中国4千年の格闘技を喰らえ!」
中国は自慢の己の肉体を駆使してイタリアに攻撃する。
歴史ある中国拳法の舞うような攻撃に、イタリアはなかなか隙を見出せなかった。
いかなマフィアとはいえ、近接戦では中国に分があり、徐々に圧し負けていく。
「貰った!」
止めとばかりに、中国の指先がイタリアの急所を狙う。
「甘い!」
その瞬間を狙っていたのか、イタリアは真実の口を取り出した。
「しまっ―――!」
誘われていた事に気付かずに突きを放ってしまった中国は、途中で拳を止められない。
吸い込むように真実の口に入っていく中国の手。
必死に腕を引き抜こうとするが―――抜けない。
図られた。そう思ったときには既に遅く、イタリアの拳銃が中国の頭部を狙っていた。
もはやもう片方の腕で攻撃する事もできない。
「武にばっかり力を入れてないで、もっと芸術にも手を出しな、頭が柔らかくなるぜ。
 と言ってもここでお前はお終いだがな。それじゃ、アリーヴェデルチ」
拳銃から放たれる弾丸。中国はそれを避ける事すらできなかった。
鮮血がイタリアに降りかかる。
「イタリアンギャングに手を出すからこうなる」
イタリアは中国が倒れるのを見届けると、その場を去っていく。

だが、戦いは終わっていなかった。
ヒュッっという軽い飛来音が聞こえた途端、イタリアの顔に苦悶の表情が広がる。
「ま……まさか…………!」
イタリアが腕を首の後ろに廻すと、細い針が首筋に刺さっている事に気がつく。
徐々に顔の色が悪くなるイタリア。
「毒……か!」
「中国拳法は暗器も使うのだよ」
イタリアが背後に振り返ると、そこに立っていたのはやはり中国。
「なぜ……生きているッ!」
急所を狙ったはずだ。
イタリアの顔がそう物語っていた。
「私が世界一体力があるのを忘れたのか?」
「くそっ……ここまでとは……」
急所を撃っても死なない程の体力とは思わなかった。
イタリアは生死の確認をしなかった事を悔やみながら永遠に意識を失った。

【イタリア 死亡確認】



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