即席リレー企画
★条件★
即席リレー企画!!
なんか鬱展
しゅうかん場
カレーソード
班長のザック
拡声器
ファウード本体
黄金のハリセン
★条件ここまで★
「……もう嫌だ」
何時間経っただろうか、ファウード本体? とかなんかの内部を彷徨い続けて何時間かが経った。
エリアの一部を埋め尽くしたコイツは幾人もの参加者を飲み込んできた。
呼んだのは私が拡声器を使ったからなのでもあるのだが。
「……マジ?」
ああ、もうどうでもいい。と思った矢先のことである。
ひとりの男の姿が目の前を横切ったのだ。ただの男ならば私はどうでもよかった。
ただの男じゃない、それだから私の足が止まった。
グウェイン。
「……目の前で二回も死なれるのはゴメンだな」
気が付けば私の足は駆け出していた。
背後のカレーのにおいになんて、その時は気が付くことは無かった。
■
「ちょっと! グウェイン!」
私は名を呼びながら彼を追いかける。
また悲劇を繰り返してはいけない。もう二度と、あんな気持ちにはなりたくない。
「グウェイン! 聞いてるの!?」
だが彼は私の呼び掛けに答えず、早足で歩みを進めていた。
何故。一体何故だろう。
私の声が聞こえないのだろうか。
まさか、しかし、何故。
こうなったら拡声器を――
あ。
気付けば私は倒れていた。
走ることに夢中になり、足を縺れさせ、無様に地べたへと這い蹲っている。
その拍子で班長のザックから零れ落ちたのか、黄金のハリセンも同じように地面へと横たわっている。
「何やってんだろ、私……」
届かなかった声、謎のダンジョンのようなこの場所。
不思議は深まり、湧き上がっていった。
そもそも、このファワードとやらの体内には理解の難い環境が余りにも多すぎた。
体内というだけあって有機的な内壁が広がっているのだが、しかし一方で無機的な構造も混在している。
そこには人の手が加わっているのが明らかなのだが、一体誰が、どうやって……?
私がその答えを知るには、如何せん情報が少なすぎる。
そして、不可思議なことはもう1つある。
グウェイン。
この異常な環境下にあって、当座の間の同行を許した、一応の仲間である。
だが、彼は少々感情的な部分が強い。
悪く言えば単純な熱血バカの範疇に入る。
今までに遭遇してきた人の死が、彼の心を追い立て焦燥させていることは明らかである。
彼の心境も理解できるとはいえ、その行動はお世辞にも理論的とは言えない。
この未知の迷宮の中で無謀に前進することは余りにも危険すぎる。
まあ、今までにもそういった経験はあったし、その彼にブレーキをかけるのも自分の役割だと理解はしている。
だが、である。
理解できない。
グウェインは、走り出したまま、徐々に減速している。
そして、止まった。
だが、その姿は余りにも不自然だ。
歩きを止めたというよりも、なんと言うか、
ビデオがスローになり、そして止まったかのように
走った姿勢のまま、その動きを止めたのである。
なにかが、おかしい。
「ガ……」
彼に呼びかけようとして、更なる異常に気付く。
声が、出ない。
そして、立ち上がろうとする私の体も、動かない。
意識だけが、はっきりと鮮明に、1つの答えを提示する。
おかしいのは、私の体だ。
「ゴールド・エクスぺリエンス!」
■
黄金色の影を背に従えた一人の男が床に転がっている女を見下ろしていた。
彫像の様に微動だにせず、しかしその肌の色は彼女が生きていることを確かに証明している。
有り得ないが、その人間の時を止めたとし、それを外から見ればそんな風に見えるかもしれない。
凍りついた瞳の先には人一人分程の赤黒い肉塊が床に広がっている。
ただの肉塊。
これまでずっと、そしてこれからも変わることの無い肉塊だ。
女の腕には一本の剣。赤褐色の血塗れ、幾重もの古い血を重ねた死臭を漂わす剣。
男は己の女――仇から冷めた目を離すと、その場から現れた時と同じ様に静かに姿を消した。
女――愛する男を誤って殺してしまった女。
亡くした彼を求めて、狂い、取り戻すために、その時を繰り返していた、可哀想な女。
彼女は、その止まった時の中で終わらない夢を、彼の夢を――……。
【終わり】
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