妄想主催ロワ






「けしからん!」
先程の出来事を振り返り、老人―――磯野波平は声を荒げる。
何しろ許しがたい罪を犯した者達に罰を与えている最中にこんな下らない事に巻き込まれたのだ。
愚かな者達の死に溜飲を下げつつあったが、これには波平の怒りも再燃した。
「この間に奴らが逃げ出したらどうしてくれる!」
幾ら首輪をつけているといえ、自身がいなくなっている間にも何事もないなどと楽観できるほど能天気ではない。
そしてそうやって逃げた者が盆栽を壊した者でないなどとは言い切れないのだ。
殺し合いを早く終わらせるには脱出するか優勝するかしかない。
とは言え、殺し合いを開催していた身からすると、脱出がそう簡単な事ではないなど容易に予想できる。
「こうなればワシが優勝していち早く戻るしかないな」
奴らに従わなくてはいけない事実に顔をしかめつつ、波平はそう決断を下した。

〜〜〜〜〜

波平がしばらく敵を探して歩いていると、向こうから山吹色の胴着を着た男が歩いてくるのが見えた。
その男は自分の力に自信があるのだろう。
波平の姿を見てもなんら慌てる様子も見せずに声をかけてきた。
「爺さん、俺はヤムチャ。殺し合いには乗っていない」
「そうかヤムチャ。だがワシは乗っている、恨みは無いが死んでもらおう」
波平がそう宣言するが、ヤムチャはやはり自分の力に自信があるのか、波平を馬鹿にするように笑った。
「ふっ、愚かな。アンタみたいな爺さんが俺に勝てると思っているのか?」
ヤムチャはそう言って独特の構えをとる。
「殺し合いに乗るって言うのなら黙って見逃すわけにはいかないな。くらえ、狼牙風風拳!」
そう叫ぶと一息に波平へと飛び込み、狼の牙を模しているのだろう両拳で連打を放つ。
「はい!はい!は―――何!?」
「足元がお留守じゃぞ」
だがその連打は、突如ヤムチャの目前から波平が消えた為に当たる事はなく、
そのまま背後に現れた波平により、ヤムチャは足払いをされ転んでしまう。
ヤムチャは屈辱を感じ起き上がろうとするが、後頭部に銃口を突きつけられ動きを止める。
「お、俺をどうするつもりだ……」
「ワシに歯向かった君にはこのまま死んでもらってもいいのだが、君にはワシの為に他の人間を殺してもらう」
「ふざけるな、だれがそんな―――っぐあああああああぁぁぁぁっ!」
ヤムチャは波平の言葉を否定するが、即座に腕を撃ちぬかれて転げまわる。
「さて、ワシが本気な事は分かっただろう。君に拒否権は無い」
波平は転げまわるヤムチャを押さえつけ、デイパックから首輪を取り出してヤムチャへと装着する。
「これはプレミアム会員専用首輪というものだ。禁止エリアへ入れるようになる代わりに、
 放送ごとに一人殺さなければ首輪が爆発する」
「なっ……!?」
「拒否権はないと言っただろう。これで君は嫌でも殺しあわなくてはいけないわけだ。
 せいぜいワシと盆栽の為に頑張って人数を減らしてくれたまえ」
波平はそう言うと、倒れたヤムチャをそのままに去って行った。

【一日目/開始直後/鎌石村】
【磯野波平@波平さんがバトルロワイヤルを主催するスレ】
状態:健康
装備:魔銃クリムゾン
道具:支給品一式、不明×1
思考:優勝する

【ヤムチャ@カマセ犬バトルロワイヤル】
状態:片腕負傷
装備:プレミアム会員専用首輪
道具:支給品一式、不明×3
思考:波平に従い人を殺す?



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